転生幼女の怠惰なため息

(◉ɷ◉ )〈ぬこ〉

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第四章

終息➀

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「カーラ…っ!!カーラっ!!」

わたしがお兄ちゃんズとお姉ちゃんとお互いの無事を喜び合っていると、膝を付きお腹に両手を添え、具合悪そうにして俯くハンナおば様を、ずっと抱きしめ守っていたアーデルハードおじ様が、気絶して床に倒れているカーラに駆け寄ろうとする。

[カーラに触っちゃダメぇーーーっ!!!!]

わたしは慌ててアーデルハードおじ様を制止する。
カーラの体からは、弱々しいけど、まだ黒いモヤが滲み出てる。
大丈夫かもしれないけど、万が一、体に触れたことによって、あの黒いモヤが感染する可能性もある。

「「「「「エルっ!?!?」」」」」

「なっ!?!?エルシーアちゃん!?!?」

アーデルハードおじ様は、わたしからの突然の念話に驚いて固まる。
何も事情を知らせないままの念話だから、驚いてとうぜんだよね。
後から説明するのが大変そう…。
って、そんな事より!!

[ペルル、シロガネ、あの黒いモヤは一体何なの??]

〔あの黒いモヤは瘴気っきゅ〕

【あぁ。恐らくだか、あの娘は何者かに精神操作を受けていた様だ。
それに、エルもあの焼き菓子からおぞましい臭いを感じたであろう?臭いから察するに、あの焼き菓子には堕落の雫が練り込まれている】

[堕落の雫??]

【人間を享楽や欲望のままに行動させる禁薬だ。あの娘は焼き菓子の味見で口にしたのであろうな】

「あぁ…っ!!なんて事…っ!!!!」

「ハンナ…」

アーデルハードおじ様の腕の中で、ハンナおば様が泣き崩れる。

[ねぇ、ペルル、シロガネ。カーラを元に戻す方法はないの??]

〔まぁ…、あるっきゅけど…。
エルはあんな風に襲われそうになって、酷い言葉を言われ、傷つけられたのに、それでも助けるっきゅか??相手は子どもとはいえ、加害者っきゅよ??〕

ペルルがわたしの目をじっと見つめながら問いかけてくる。
応接室に居る全ての者が、わたしとペルル、シロガネのやり取りの行方を静かに見守っている。

[それでも…。それでもだよ、ペルル。
確かに襲われそうになった時は怖かったし、酷い言葉を言われた時は傷ついたよ。
でもね、カーラはウィルにぃが好きっていう気持ちを精神操作と禁薬で捻じ曲げられた被害者なんだ。
まだ7歳の女の子が淡い初恋を踏み躙られたんだよ?そんなの許せないよ…。
だからね、わたしはカーラを助けたい。
お願い、ペルル、わたしに力を貸してっ!!]

〔はぁ~っ…。わかったっきゅよ。シロガネもそれでいいきゅね〕

【あぁ、エルがそれを望むなら】

[ありがとうっ!!ペルル、大好きっ!!]

わたしは嬉しさのあまり、ペルルをぎゅっと抱きしめる。

〔はいはい。知ってるっきゅよ。
じゃあ、さっさと浄化と治癒を施すっきゅよ。
フリッツィ、ボクとエルをあの女の側に連れて行け〕

「わかりました。エル、絶対に無理をしてはいけないよ。ダメだと思ったら私やハリー、エミリーを頼りなさい。特にハリーは治癒魔法が使えるからね」

おとしゃまはわたしをぎゅっと強く抱きしめた後、カーラの側まで行き、そっとわたしとペルルを床に下ろす。

〔エル、いいっきゅか?浄化と治癒は祈りの魔法。発動させる詠唱は何でもいい。強く祈り願うっきゅ。
まずは浄化で瘴気を祓い、その後で治癒魔法で癒すっきゅ〕

[わかった。詠唱は何でもいいんだね]

わたしは前世で大婆様から教わった、勢至菩薩せいしぼさつ様のご真言を唱える。

[オン サン ザン ザン サン ソワカ
オン サン ザン ザン サン ソワカ──]

勢至菩薩様は、仏の知恵の光を使って、命あるものを救済する菩薩様。
ご真言を唱えれば、悪霊、罪、苦しみを取り除き、様々な救済を受けられると教えてもらった。
そのご真言の効果は確か、滅罪・悪霊退散・
・延命・不老長寿・家内安全・開運招福だったはず。
今のカーラにはぴったりだと思うから。
ねぇ、カーラ。カーラはただウィルにぃに恋しちゃっただけなんだよね?
本来なら淡い初恋で終るはずだった。
歪められてしまったカーラのその気持ち、わたしは正く取り戻してみせる!!

[──オン サン ザン ザン サン ソワカっ!!!!]

パァァァァーーーーーーーーッ!!!!

ご真言を唱えていると、わたしが胸の前で合わせていた手のひらから七色の光が溢れ出し、カーラの体に降り注ぐ。

〔エル、浄化は完了っきゅ!!そのまま治癒に移るっきゅ〕

[わかったっ!!]

って、わたし治癒魔法の詠唱なんて知らないしっ!!
えぇ~いっ!!女は度胸だっ!!
唸れわたしの厨ニ病ぉぉぉ~っ!!!!

[慈愛に満ちる天の光よ それは天使の息吹なり その息吹をもって この者を癒やし給え 天光治癒エンジェル・ブレス!!!!]

パァァァァーーーーーーーーッ!!!!

わたしが治癒魔法の詠唱を唱え終わると、再び七色の光がカーラを包み込む。

「……っう……、うぅ…ん…っ」

しばらくしてカーラを包み込んだ光が消えると、カーラは意識を取り戻した。



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