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第四章
対面
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コンコンコンッ
わたしとペルル、シロガネを抱っこして、両手が塞がっているおとしゃまの代わりに、ベアティが応接室の扉をノックする。
すると応接室でおとしゃまの弟さん家族の対応をしていたミラが扉を開け、わたし達が揃って応接室に来たことを弟さん家族に告げる。
「ヴァイマル家の皆さま並びにご友人のエミリー様がおいでになりました」
おとしゃまに抱っこされ、応接室に入っていくと、それまでソファーに座っていた弟さん家族が立ち上がり、礼の姿勢を整えるのが見える。
「久しいな、アーデルハード」
「えぇ。本当にお久しぶりです、兄上、義姉上、ウィルフリードくん。
今日はバルドリックくんにルイーザちゃん、そして末娘のエルシーアちゃんに会えるのをとても楽しみにしていたんだ。
改めて、はじめまして、こんにちは。僕は君達のお父さんの弟で、アーデルハード・フォーグル。
なかなか挨拶に来られなくてごめんね。でも、これからはよろしくね」
そうふんわりと微笑んだ、おとしゃまの弟さんもとい、アーデルハードおじ様は、腰まであるアイスブルーの髪を後ろで束ね、同じくアイスブルーの長いまつ毛で縁取られたその目は、ブルー・ジルコンの様な透き通った柔らかい青。
おとしゃまと違って体の線が細く、まるで儚げ美人という言葉がピッタリな人。
「それと、僕の家族を紹介するね。妻のハンナと娘のカーラだよ。
ハンナ、カーラ、皆さんにご挨拶──」
「ウィル様、お久しぶりですわっ!!カーラは再びウィル様にお会いできる日を指折り数えておりました…っ!!
あぁっ!!ウィル様っ!!!!」
「「カーラっ!?!?」」
アーデルハードおじ様の話をぶった切り、いきなりウィルにぃに話し掛け、抱きつこうとするカーラ。
ウィルにぃはそんなカーラからサッと身を避ける。
「私は貴女に名前、まして愛称で呼ぶ事を許した覚えはありませんが?
私の事はヴァイマル伯爵家子息とお呼びください。フォーゲル子爵令嬢。
それと、叔父上の話に割り込み、あまつさえ婚約者でも無い異性に抱きつこうなどと、どの様な教育を受ければその様な行いができるのですか?」
ウィルにぃが冷え冷えとした目でカーラを睨みつける。
あのカーラとかいう、アーデルハードおじ様の娘、わたし達がこの部屋に入って来たときからずっとウィルにぃの事しか見ていなかった。
それにこの人、7歳なのにけばけばしい化粧だし、何より香水がきつ過ぎる…。
そりゃぁ、バルにぃ、ルーねぇ、エミリーちゃんが「うげっ…」「ないわね…」「あらぁ…」ってボソッと言うはずだよ。
「ウィルフリードくんの言う通りだ!!控えなさい、カーラっ!!」
アーデルハードおじ様がカーラを窘め止めようとする。
「そんなっ!!やっとお会いできたのに、どうしてそんな酷い事を言うの!?
それにわたくし、ウィル様に喜んでいただこうと、焼き菓子を作って参りましたのっ!!ひと口だけでも食べていただければ、きっとわたくしの事を好きになりますわっ!!」
しかし、窘めようとしたアーデルハードおじ様を押しのけ、応接室のソファーに置いてあったポーチから焼き菓子の包を取り出すカーラ。
ってか、この人ウィルにぃに名前を呼ぶなって釘を刺されたはずなのに、まだ愛称で呼んてるし。神経が図太いな…。
「どうかひと口でいいので食べてくださいませっ!!」
カーラは品を作りながらウィルにぃに近づき、取り出した焼き菓子包のリボンを解く。
すると、焼き菓子のいい香りではなく、形容のしがたい、なんとも嫌な臭いが漂う。
「うっ…ぅおぇっ…」
その嫌な臭いに、思わず嘔吐いてしまう。
何この臭い…!?!?目も鼻も喉も痛い…っ!!
「ふっ…ふぇぇぇ…っ」
少しでも嫌な臭いから逃げようと、自分の顔をペルルとシロガネに埋める。
「あぁぁっ!?!?誰だぁっ!!わたくしが作った焼き菓子を見て吐きそうになったヤツわぁぁぁぁっ!!!!」
いきなりカーラが黒茶色の髪を振り乱し、テラコッタ色の目を血走らせ、周りの人に睨みを効かす。
「「止めなさいっ!!カーラ」」
アーデルハードおじ様とハンナおば様がカーラを止めようとするも、子どものものとは思えない力で暴れ回り、なかなか押さえられない様子。
その逸脱した姿は、7歳という幼い令嬢ではまずありえない。
まるで何に取り憑かれている様だ。
それに、カーラの体から立ちのぼって視える黒いモヤ見たいな物は何っ!?!?
そんな様子が恐ろしくなり、思わず「ひぃ…っ!!」と短い悲鳴を上げてしまった。
その瞬間、カーラとわたしの目が合い、
「お前かぁぁぁ~~っ!!!!」
とアーデルハードおじ様とハンナおば様の制止を振り切り、わたしに跳びかかってきた…!!
わたしとペルル、シロガネを抱っこして、両手が塞がっているおとしゃまの代わりに、ベアティが応接室の扉をノックする。
すると応接室でおとしゃまの弟さん家族の対応をしていたミラが扉を開け、わたし達が揃って応接室に来たことを弟さん家族に告げる。
「ヴァイマル家の皆さま並びにご友人のエミリー様がおいでになりました」
おとしゃまに抱っこされ、応接室に入っていくと、それまでソファーに座っていた弟さん家族が立ち上がり、礼の姿勢を整えるのが見える。
「久しいな、アーデルハード」
「えぇ。本当にお久しぶりです、兄上、義姉上、ウィルフリードくん。
今日はバルドリックくんにルイーザちゃん、そして末娘のエルシーアちゃんに会えるのをとても楽しみにしていたんだ。
改めて、はじめまして、こんにちは。僕は君達のお父さんの弟で、アーデルハード・フォーグル。
なかなか挨拶に来られなくてごめんね。でも、これからはよろしくね」
そうふんわりと微笑んだ、おとしゃまの弟さんもとい、アーデルハードおじ様は、腰まであるアイスブルーの髪を後ろで束ね、同じくアイスブルーの長いまつ毛で縁取られたその目は、ブルー・ジルコンの様な透き通った柔らかい青。
おとしゃまと違って体の線が細く、まるで儚げ美人という言葉がピッタリな人。
「それと、僕の家族を紹介するね。妻のハンナと娘のカーラだよ。
ハンナ、カーラ、皆さんにご挨拶──」
「ウィル様、お久しぶりですわっ!!カーラは再びウィル様にお会いできる日を指折り数えておりました…っ!!
あぁっ!!ウィル様っ!!!!」
「「カーラっ!?!?」」
アーデルハードおじ様の話をぶった切り、いきなりウィルにぃに話し掛け、抱きつこうとするカーラ。
ウィルにぃはそんなカーラからサッと身を避ける。
「私は貴女に名前、まして愛称で呼ぶ事を許した覚えはありませんが?
私の事はヴァイマル伯爵家子息とお呼びください。フォーゲル子爵令嬢。
それと、叔父上の話に割り込み、あまつさえ婚約者でも無い異性に抱きつこうなどと、どの様な教育を受ければその様な行いができるのですか?」
ウィルにぃが冷え冷えとした目でカーラを睨みつける。
あのカーラとかいう、アーデルハードおじ様の娘、わたし達がこの部屋に入って来たときからずっとウィルにぃの事しか見ていなかった。
それにこの人、7歳なのにけばけばしい化粧だし、何より香水がきつ過ぎる…。
そりゃぁ、バルにぃ、ルーねぇ、エミリーちゃんが「うげっ…」「ないわね…」「あらぁ…」ってボソッと言うはずだよ。
「ウィルフリードくんの言う通りだ!!控えなさい、カーラっ!!」
アーデルハードおじ様がカーラを窘め止めようとする。
「そんなっ!!やっとお会いできたのに、どうしてそんな酷い事を言うの!?
それにわたくし、ウィル様に喜んでいただこうと、焼き菓子を作って参りましたのっ!!ひと口だけでも食べていただければ、きっとわたくしの事を好きになりますわっ!!」
しかし、窘めようとしたアーデルハードおじ様を押しのけ、応接室のソファーに置いてあったポーチから焼き菓子の包を取り出すカーラ。
ってか、この人ウィルにぃに名前を呼ぶなって釘を刺されたはずなのに、まだ愛称で呼んてるし。神経が図太いな…。
「どうかひと口でいいので食べてくださいませっ!!」
カーラは品を作りながらウィルにぃに近づき、取り出した焼き菓子包のリボンを解く。
すると、焼き菓子のいい香りではなく、形容のしがたい、なんとも嫌な臭いが漂う。
「うっ…ぅおぇっ…」
その嫌な臭いに、思わず嘔吐いてしまう。
何この臭い…!?!?目も鼻も喉も痛い…っ!!
「ふっ…ふぇぇぇ…っ」
少しでも嫌な臭いから逃げようと、自分の顔をペルルとシロガネに埋める。
「あぁぁっ!?!?誰だぁっ!!わたくしが作った焼き菓子を見て吐きそうになったヤツわぁぁぁぁっ!!!!」
いきなりカーラが黒茶色の髪を振り乱し、テラコッタ色の目を血走らせ、周りの人に睨みを効かす。
「「止めなさいっ!!カーラ」」
アーデルハードおじ様とハンナおば様がカーラを止めようとするも、子どものものとは思えない力で暴れ回り、なかなか押さえられない様子。
その逸脱した姿は、7歳という幼い令嬢ではまずありえない。
まるで何に取り憑かれている様だ。
それに、カーラの体から立ちのぼって視える黒いモヤ見たいな物は何っ!?!?
そんな様子が恐ろしくなり、思わず「ひぃ…っ!!」と短い悲鳴を上げてしまった。
その瞬間、カーラとわたしの目が合い、
「お前かぁぁぁ~~っ!!!!」
とアーデルハードおじ様とハンナおば様の制止を振り切り、わたしに跳びかかってきた…!!
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