転生幼女の怠惰なため息

(◉ɷ◉ )〈ぬこ〉

文字の大きさ
上 下
143 / 166
第四章

王都1日目⑤

しおりを挟む

村人視点


「えいっ!えいっ!」


僕の名前はポッコ。狼人族だ。僕は立派な戦士になるために、今日もこうしてトレーニングをしている


「うん。いい太刀筋だ」


そして彼女の名前はルルルゥ。族長の娘で先祖返りをした白い毛並みと強い体を持つ。僕の1歳年上のやさしい彼女は、こうして毎日のように僕に訓練をつけてくれていた


僕は密かにルルルゥに恋心をいだいており、彼女との訓練の時間をいつも楽しみにしている。いつか僕は最強の戦士になりルルルゥに告白したい。そんなことを妄想していた


「ポッコはこれから強くなれるよ」


「ありがとうございます!」


そしてこの村には一人、旅人が滞在している。彼の名前はユーリさん。彼も僕の1つ年上で、すっごく強い


村の大人たちでも手を焼いていたドギャンボアをなんと、ルルルゥとパーティーを組みたった二人で倒してしまったのだ


これには村人みんなが大歓迎だった。近頃、ドギャンボアには作物を荒らされており、みんな困っていたからだ


いつか僕もユーリさんやルルルゥみたいに強くなりたい。そしてルルルゥと結ばれるんだ。僕はそれを目標にして、今日も訓練を頑張る


……。


……。


……。


「えいっ!えいっ!」


今日も僕はこうしてトレーニングをしている。いつものように、ルルルゥも僕の訓練を見てくれていた


でもいつもと違うのは、今日のルルルゥは何だか熱っぽい感じだ。彼女は瞳を少しだけトロンとさせていて、頬も心なしか火照っている


そして、彼女の体からは発情したメスの臭いがしていた。僕は他の狼人族より鼻が強く、匂いに敏感なのだ


でも僕はそんなことを彼女に指摘しない。さすがにデリカシーがなさすぎる。でも、発情しちゃったルルルゥとエッチな関係になっちゃうってのも男の夢かもしれないな。いや。だめだ、僕!しっかりしろ!


「ルルルゥ。体調が悪そうだけど大丈夫?」


「ああ、すまない。なんだか今日は熱っぽくてな。ユーリが回復魔法を使えるらしいから、彼に頼んでみるよ」


そう言うとルルルゥはポーっとした顔のまま、村の外れにあるユーリが滞在している空き家へと向かっていく


僕は一瞬不安に襲われたが、さすがにルルルゥがほぼ見ず知らずの旅の人に肌を許すなんてあり得ない。彼女は多くの狼人族のアタックを断ってきた鉄壁の女性なのだ


そういえばもうすぐ村の祭りがある。祭りの日に結ばれた恋人は幸せになれる。そんな言い伝えが古くからあり、祭りの日には数多くのカップルが誕生していた


「今年は思い切って、ルルルゥをデートに誘ってみようかな。なんてね」


僕は淡い恋心を抱きながら、今日も訓練を続けていく


……。


……。


……。


「えいっ!えいっ!」


今日はルルルゥが訓練に来なかった。まあ彼女にも用事があるのだろう。今日の僕は一人で寂しく訓練をすることにする


「ふー。」


一通り訓練を終えて家に帰る途中、ポーっとした顔で歩くルルルゥを見かける。彼女に出会って嬉しくなった僕がルルルゥに話しかけると、今日も彼女は発情した体臭をまとわせながら、頬を赤く火照らせていた


「ルルルゥ、大丈夫?」


「あ、ああ……。昨日はユーリに回復魔法を掛けてもらったらだいぶ体調が良くなったから、今からまた彼にお願いをしに行くところなんだ」


発情期というものは獣人の女性にとっては大変なものらしい。そう聞いたことがある。僕は男だから分からないけど、そういうものなんだと自分を納得させる


「ルルルゥにはいつもお世話になってるから、何かあったらいつでも僕に頼ってよ」


「ありがとう。ポッコは頼もしいな」


ルルルゥに頼もしいとお世辞を言われた僕は舞い上がりながら家に帰る。やっぱり、今年の祭りはルルルゥをデートに誘おう。勇気を出すんだ。僕に一つ目標が出来た


「こうしちゃいられないな!トレーニングを増やそう!」


さらに強くなるために僕は走り込みをすることにする。家に帰った僕はまたすぐに部屋を飛び出すと、トレーニングを再開した


長い時間村の中の走り回りへとへとになった頃、僕は村の外れにあるユーリさんが滞在している空き家の近くへとたどり着く


「ユーリさんいるかな?」


僕は彼に挨拶をしようと家の扉をノックする。するとユーリさんが家の中から出てきた


「やあポッコ。どうしたの?」


「いや、ちょっと近くを通ったから挨拶でもと……」


「そうなんだ。ありがとう!」


ユーリさんと話をしていると、彼が滞在している家の中からルルルゥの強い体臭が風にのって流れてくる。先程までルルルゥがこの家に滞在をしていた証だ


僕の部屋にも、いつかルルルゥの臭いが染み付く関係になれればいいなぁ。そんなことを考えながら、僕はユーリさんとの会話を終え、家路についた


……。


……。


……。


もう三日も連続でルルルゥが訓練に来ていない。彼女の体調は思わしくないようだ。心配になった僕はルルルゥの家にお見舞いに行くことにする


訓練を終えた僕がルルルゥの家を尋ねると、彼女は出かけた後のようだった。体調が悪いわけではないらしい


三日後には村の祭りが控えているから、ルルルゥは色々と準備で忙しいのかもしれない。そういえば、僕も親に今日は早く帰ってこいと言われてたっけ


急いで家に帰る途中、ルルルゥとすれ違う。今日も彼女は頬を火照らせていた。最近の彼女はいつもボッーっとしている。ルルルゥに話を聞くと、やはり彼女は祭りの準備で忙しいらしい


最近ルルルゥとはすれ違いが増えていることを寂しく思いながらも、僕も祭りの準備を手伝うために家に帰る。早く祭りの日が来ないかな。そしてルルルゥをデートに誘うんだ。僕は決意を新たにした


……。


……。


……。


「えいっ!えいっ!」


村の祭りを翌日に控えた日に、今日も僕は剣のトレーニングをしていた。今日もルルルゥは訓練に来ていない。でもいいんだ。明日僕はルルルゥをデートに誘う。彼女に会えない日々が、僕に勇気を出させてくれた


「明日、絶対にルルルゥをデートに誘うぞ!」


僕の剣を握る力が強くなる。僕は彼女に似合う男になるために、今日も剣を振るった


……。


……。


……。


そして祭りの日が来た。僕は浮足立つ村の中でキョロキョロとしながらルルルゥを探した。祭りの日に乗じて彼女をデートに誘おうとしている何人もの村の男達が、ルルルゥを探しているのが分かる


しかし僕がどれだけ村の中を探しても、ルルルゥは見つからなかった。彼女を探しているうちに日が暮れて、ついには夜になる。それでもルルルゥは見つからない


もしかしてルルルゥは他の男と……。そんな不安に押しつぶされながらも、彼女を探すことを諦めた僕はトボトボと家に帰ることにした。もうすぐ深夜になってしまう。流石にタイムリミットだ


明日になったらまた、いつものように彼女は僕の訓練を見に来てくれる。そうしたらまた元通りの関係だ。そう信じて


……。


……。


……。


「さようなら。ポッコ」


翌日、ルルルゥはユーリとともに村から旅立っていった。昨夜、彼女に何があったのか。僕には分からない


いつものように訓練をしている僕に旅立ちの挨拶をしにきてくれたルルルゥの股間からは、ユーリさんの体臭が漂っていた

しおりを挟む
感想 220

あなたにおすすめの小説

(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅

あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり? 異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました! 完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。

裏の林にダンジョンが出来ました。~異世界からの転生幼女、もふもふペットと共に~

あかる
ファンタジー
私、異世界から転生してきたみたい? とある田舎町にダンジョンが出来、そこに入った美優は、かつて魔法学校で教師をしていた自分を思い出した。 犬と猫、それと鶏のペットと一緒にダンジョンと、世界の謎に挑みます!

異世界母さん〜母は最強(つよし)!肝っ玉母さんの異世界で世直し無双する〜

トンコツマンビックボディ
ファンタジー
馬場香澄49歳 専業主婦 ある日、香澄は買い物をしようと町まで出向いたんだが 突然現れた暴走トラック(高齢者ドライバー)から子供を助けようとして 子供の身代わりに車にはねられてしまう

女神の代わりに異世界漫遊  ~ほのぼの・まったり。時々、ざまぁ?~

大福にゃここ
ファンタジー
目の前に、女神を名乗る女性が立っていた。 麗しい彼女の願いは「自分の代わりに世界を見て欲しい」それだけ。 使命も何もなく、ただ、その世界で楽しく生きていくだけでいいらしい。 厳しい異世界で生き抜く為のスキルも色々と貰い、食いしん坊だけど優しくて可愛い従魔も一緒! 忙しくて自由のない女神の代わりに、異世界を楽しんでこよう♪ 13話目くらいから話が動きますので、気長にお付き合いください! 最初はとっつきにくいかもしれませんが、どうか続きを読んでみてくださいね^^ ※お気に入り登録や感想がとても励みになっています。 ありがとうございます!  (なかなかお返事書けなくてごめんなさい) ※小説家になろう様にも投稿しています

滅びる異世界に転生したけど、幼女は楽しく旅をする!

白夢
ファンタジー
 何もしないでいいから、世界の終わりを見届けてほしい。  そう言われて、異世界に転生することになった。  でも、どうせ転生したなら、この異世界が滅びる前に観光しよう。  どうせ滅びる世界なら、思いっきり楽しもう。  だからわたしは旅に出た。  これは一人の幼女と小さな幻獣の、  世界なんて救わないつもりの放浪記。 〜〜〜  ご訪問ありがとうございます。    可愛い女の子が頼れる相棒と美しい世界で旅をする、幸せなファンタジーを目指しました。    ファンタジー小説大賞エントリー作品です。気に入っていただけましたら、ぜひご投票をお願いします。  お気に入り、ご感想、応援などいただければ、とても喜びます。よろしくお願いします! 23/01/08 表紙画像を変更しました

転生テイマー、異世界生活を楽しむ

さっちさん
ファンタジー
題名変更しました。 内容がどんどんかけ離れていくので… ↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓ ありきたりな転生ものの予定です。 主人公は30代後半で病死した、天涯孤独の女性が幼女になって冒険する。 一応、転生特典でスキルは貰ったけど、大丈夫か。私。 まっ、なんとかなるっしょ。

乙女ゲームの世界に転生したと思ったらモブですらないちみっこですが、何故か攻略対象や悪役令嬢、更にヒロインにまで溺愛されています

真理亜
ファンタジー
乙女ゲームの世界に転生したと思ったら...モブですらないちみっこでした。 なのに何故か攻略対象者達や悪役令嬢、更にヒロインにまで溺愛されています。 更に更に変態銀髪美女メイドや変態数学女教師まで現れてもう大変!  変態が大変だ! いや大変な変態だ! お前ら全員ロ○か!? ロ○なんか!? ロ○やろぉ~! しかも精霊の愛し子なんて言われちゃって精霊が沢山飛んでる~! 身長130cmにも満たないちみっこヒロイン? が巻き込まれる騒動をお楽しみ下さい。 操作ミスで間違って消してしまった為、再掲しております。ブックマークをして下さっていた方々、大変申し訳ございません。

野草から始まる異世界スローライフ

深月カナメ
ファンタジー
花、植物に癒されたキャンプ場からの帰り、事故にあい異世界に転生。気付けば子供の姿で、名前はエルバという。 私ーーエルバはスクスク育ち。 ある日、ふれた薬草の名前、効能が頭の中に聞こえた。 (このスキル使える)   エルバはみたこともない植物をもとめ、魔法のある世界で優しい両親も恵まれ、私の第二の人生はいま異世界ではじまった。 エブリスタ様にて掲載中です。 表紙は表紙メーカー様をお借りいたしました。 プロローグ〜78話までを第一章として、誤字脱字を直したものに変えました。 物語は変わっておりません。 一応、誤字脱字、文章などを直したはずですが、まだまだあると思います。見直しながら第二章を進めたいと思っております。 よろしくお願いします。

処理中です...