転生幼女の怠惰なため息

(◉ɷ◉ )〈ぬこ〉

文字の大きさ
上 下
141 / 166
第四章

王都1日目③

しおりを挟む
おとしゃまに抱っこされて、地下へと続く階段を下る。
おとしゃまの後ろには、家族のみんなにエミリーちゃん、そしてセバスにベアティ、デルミーラ、ペルルとシロガネをそれぞれ抱っこしたアメリアにアンネリース、バメイが続く。



「エル、これが転移陣へと繋がる扉だよ」

アカンサス模様が施された木の扉の上には、二本のクロスした剣とオオカミの顔が彫られた美しいレリーフがはめ込まれている。
そのオオカミの瞳の部分にはアンバー色の魔石が輝いている。
まるで本物のオオカミがこちらをジッと見ているようだ。

「この扉はね、ヴァイマル家の直系の者にしか開くことができないんだよ。エル、扉に触れてごらん」

おとしゃまに言われたとおり、転移陣へと続く扉にソッと触れる。
するとオオカミの瞳が輝き出し、ひとりでに扉が開いた。

「おぉぉぉ~っ!!!!」

思わず感嘆の声を上げてしまう。
そこにはギリシャ神殿の様なコリント式の支柱が12本、円形に並んでいた。

「さぁ、中に入ろうか」

おとしゃまは、わたしを抱っこしたまま支柱の中心へと進んて行く。
バルにぃが言っていたとおり、その支柱は太く大きかった。
支柱の高さは2階建てぐらいなので、6m程だろうか。

支柱の天辺には、透明な珠を抱えた動物の彫刻が置かれている。
ネズミ、牛、虎、ウサギ、辰…って、おぉぉぉ~~いっ!!!!
辰はまんま龍やないかいっ!!
龍が珠持っとるやないかいっ!!
何っ!?!?なんなのっ!?!?
支柱の上の動物は十二支がモチーフなの??
わたしは全ての動物の彫刻を確認する。
うん…十二支でした…。
この転移陣を最初に創って伝えたのって、絶対にエアネスト様だよね…。

しかし何だろう??この十二支は方角でも示してるのかな??

「にぇえにぇえ、とーしゃ、とーしゃ」

わたしはおとしゃまの腕をタップする。

「うん?どうしたんだい?」

[おとしゃま、この支柱の上の動物って方角を示してる??]

「方角??その様な話は初めて聞いたな。
エルはあの支柱の上の動物の意味がわかるのかい?
それに、残念だけど、お父様には何の動物なのかわからないのもあるんだ」

あ~っ…。確かに。
全部前世の、日本で見る干支そのもので形が造られてるからね。
特に龍なんて見たこと無いよね。

[おとしゃま、この家から王宮に転移する時に、動物が持ってる珠が光ったりする??]

「よくわかったね。いつも全ての珠が光ってるよ」

[ふむ…。じゃあ、王宮から家に帰って来るときは全部光る??]

「いいや。そういえば家に帰る時は、いつもあそことあそこの2つの動物の珠が光ってるね」

[ふむふむ…]

おとしゃまが指を差したのは羊と猿。
仮説でしか無いけど、我が家から王宮に転移する時に、十二支全部が光るのは、多分王都を中心としてるから。
そして王宮から家に帰って来る時に、羊と猿の珠が光るのは、我が家は王都から見て南西にあるってことかな??
まぁ、検証したわけじゃ無いし、正確にはわからないけど。

「エル、何かわかったのかい?」

[ん~っ…。検証した訳じゃないから、ハッキリとは言えないけど…。
王都を中心とした時に、あのネズミを北として、時計回りに方角を示してるんじゃないかなって。
そうすると北がネズミ、東がウサギ、南が馬、西がニワトリって当てはまるの。
だから、おとしゃまが王宮に行く時は全部の珠が光って、王宮から帰って来る時は、羊と猿の珠が光る。
そうやって当てはめると、我が家は王都から見て南西になるんじゃないかな?って思ったの]

「なるほど…。古くからこの転移陣について、魔塔が研究していたが、何故この動物で、何故この並びでないと転移できないのかばかりを研究していてね。
しかしなるほど。方角か…。
一度エルの考えを、エルの名前を伏せて魔塔に伝えてみようか。きっと研究が進むはずだよ」

[えっ!?!?でも、確信も何も無いよ??そんな事を話しちゃっても大丈夫なの??]

「あぁ。あの研究バカ共にはいい刺激になるだろう」

研究バカっておとしゃま…。
まぁ、おとしゃまが大丈夫って言うならいいのかな??

「あらあら、まぁまぁ。それにしてもエルちゃんは、よくそんな難しい事を考えついたわね」

かぁしゃまが、抱っこされているわたしに近づき、頭をなでなでしてくれる。
えへへっ。かぁしゃまに褒められちゃった。
まぁ、前世の記憶なんだけどね。
でも、かぁしゃまに褒められるのは凄く嬉しい。

「うん。流石は僕のエルだね。エルは天才だっ」

ウィルにぃも近づいてきて、頭をなでなでしてくれる。
そしてなでなでの最後に、わたしの右手を取り、指先にちゅっとキスをした。

「あらぁ~っ。まぁまぁ。ウィルは本当にエルちゃんが大好きなのねぇ~っ」

「はい。世界で一番、他の何よりもエルの事を愛しています」

かぁしゃまの、のほほんとした言葉に対して、キリッとキメ顔を作り答えるウィルにぃ。
ちょっ…まっ…、えぇ~っ…。
愛って言い切っちゃってるしぃ~っ!!!!

「あらぁ~んっ♡エルちゃんは本当に愛されているのねぇ~んっ♪
うらやましいわぁんっ♡」

エミリーちゃんがくねくねしながら、わたしのほっぺをツンツンしてくる。

そんな様子をウィルにぃ以外の家族はやれやれと見守り、セバス達使用人はクスクス笑っていた。



しおりを挟む
感想 220

あなたにおすすめの小説

(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅

あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり? 異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました! 完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。

裏の林にダンジョンが出来ました。~異世界からの転生幼女、もふもふペットと共に~

あかる
ファンタジー
私、異世界から転生してきたみたい? とある田舎町にダンジョンが出来、そこに入った美優は、かつて魔法学校で教師をしていた自分を思い出した。 犬と猫、それと鶏のペットと一緒にダンジョンと、世界の謎に挑みます!

異世界母さん〜母は最強(つよし)!肝っ玉母さんの異世界で世直し無双する〜

トンコツマンビックボディ
ファンタジー
馬場香澄49歳 専業主婦 ある日、香澄は買い物をしようと町まで出向いたんだが 突然現れた暴走トラック(高齢者ドライバー)から子供を助けようとして 子供の身代わりに車にはねられてしまう

女神の代わりに異世界漫遊  ~ほのぼの・まったり。時々、ざまぁ?~

大福にゃここ
ファンタジー
目の前に、女神を名乗る女性が立っていた。 麗しい彼女の願いは「自分の代わりに世界を見て欲しい」それだけ。 使命も何もなく、ただ、その世界で楽しく生きていくだけでいいらしい。 厳しい異世界で生き抜く為のスキルも色々と貰い、食いしん坊だけど優しくて可愛い従魔も一緒! 忙しくて自由のない女神の代わりに、異世界を楽しんでこよう♪ 13話目くらいから話が動きますので、気長にお付き合いください! 最初はとっつきにくいかもしれませんが、どうか続きを読んでみてくださいね^^ ※お気に入り登録や感想がとても励みになっています。 ありがとうございます!  (なかなかお返事書けなくてごめんなさい) ※小説家になろう様にも投稿しています

【完結】転生したらもふもふだった。クマ獣人の王子は前世の婚約者を見つけだし今度こそ幸せになりたい。

金峯蓮華
ファンタジー
デーニッツ王国の王太子リオネルは魅了の魔法にかけられ、婚約者カナリアを断罪し処刑した。 デーニッツ王国はジンメル王国に攻め込まれ滅ぼされ、リオネルも亡くなってしまう。 天に上る前に神様と出会い、魅了が解けたリオネルは神様のお情けで転生することになった。 そして転生した先はクマ獣人の国、アウラー王国の王子。どこから見ても立派なもふもふの黒いクマだった。 リオネルはリオンハルトとして仲間達と魔獣退治をしながら婚約者のカナリアを探す。 しかし、仲間のツェツィーの姉、アマーリアがカナリアかもしれないと気になっている。 さて、カナリアは見つかるのか? アマーリアはカナリアなのか? 緩い世界の緩いお話です。 独自の異世界の話です。 初めて次世代ファンタジーカップにエントリーします。 応援してもらえると嬉しいです。 よろしくお願いします。

滅びる異世界に転生したけど、幼女は楽しく旅をする!

白夢
ファンタジー
 何もしないでいいから、世界の終わりを見届けてほしい。  そう言われて、異世界に転生することになった。  でも、どうせ転生したなら、この異世界が滅びる前に観光しよう。  どうせ滅びる世界なら、思いっきり楽しもう。  だからわたしは旅に出た。  これは一人の幼女と小さな幻獣の、  世界なんて救わないつもりの放浪記。 〜〜〜  ご訪問ありがとうございます。    可愛い女の子が頼れる相棒と美しい世界で旅をする、幸せなファンタジーを目指しました。    ファンタジー小説大賞エントリー作品です。気に入っていただけましたら、ぜひご投票をお願いします。  お気に入り、ご感想、応援などいただければ、とても喜びます。よろしくお願いします! 23/01/08 表紙画像を変更しました

転生テイマー、異世界生活を楽しむ

さっちさん
ファンタジー
題名変更しました。 内容がどんどんかけ離れていくので… ↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓ ありきたりな転生ものの予定です。 主人公は30代後半で病死した、天涯孤独の女性が幼女になって冒険する。 一応、転生特典でスキルは貰ったけど、大丈夫か。私。 まっ、なんとかなるっしょ。

転生少女の異世界のんびり生活 ~飯屋の娘は、おいしいごはんを食べてほしい~

明里 和樹
ファンタジー
日本人として生きた記憶を持つ、とあるご飯屋さんの娘デリシャ。この中世ヨーロッパ風ファンタジーな異世界で、なんとかおいしいごはんを作ろうとがんばる、そんな彼女のほのぼのとした日常のお話。

処理中です...