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第三章

夜更けの密談①

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〈父:フリッツィSide〉



執務室から寝室に続く扉を静かに開け、音を立てないように中に入る。
寝室のベッドに掛けられている天蓋をそっと開け、すやすやと眠るエルを見つめ、目を細める。

「あなた、王宮に今から行かれるのですか?」

エルの隣で眠っていた筈の妻から声をかけられる。

「すまない。起こしてしまったか?」

「わたくしは大丈夫ですわ」

妻は寝ていた体を起こし、優しくエルの頭を撫でる。

「あなた、エルが一緒に眠れないのを寂しがっていたわ。なくべく早く帰ってきてくださいまし」

「あぁ。私もエルと一緒に眠れないのが寂しいからね。早く帰るとしよう」

妻に抱きつく様に眠るエルの頭を撫でる。
エルの頭を撫でながら、どう話を切り出し、早く帰れるかの算段を考える。

「今から王宮にゆくのか?」

エルの枕元にペルル殿と一緒に丸まって寝ていたシロガネ殿が、顔を起こし聞いてくる。

「はい。これから王宮に向かい、明後日のお披露目の儀式で、魔力属性やスキルを公開しないように話をするつもりです」

「そうか」

「シロガネ殿、私と共に陛下へ話をしてくださいますか?」

「うむ。全てはエルシーアを護るため。其方らの話に付き合おう」

「ありがとうございます。では、私が抱いて連れて行くということでよろしいですか?」

「構わん」

「では、失礼します」

シロガネ殿の許可をもらい、そっと体を抱き上げる。

「ペルル殿、どうかエルの護りをよろしくお願いします」

エルの枕元で、私とシロガネ殿の会話を聞いていたペルル殿に、エルの護りをお願いする。

〔エルの護りは任せておけ。それよりも、エルが起きる前に帰って来い〕

「お気づかい、ありがとうございます。では、よろしくお願いします。
ハリー、君は眠っていてくれ。直ぐ帰ってくるから」

ペルル殿に頭を下げ、妻に頬におやすみのキスを贈る。

「シロガネ殿、参りましょう」

「あなた、どうか気をつけて」

「行ってくる」

寝室の扉を出て、地下の転移陣へと向う。
地下までの道すがら、シロガネ殿といろんな話をする。

「陛下は私の話を無視する様な人柄ではありません。しかし、お恥ずかしいながら、この王国に住まう貴族は一枚岩ではないのです。
陛下が納得しても不満を表す貴族は居るでしょう。
そこで申し訳ないのですが、シロガネ殿の白虎としてのお名前とお力をお借りしたいのです」

「我の名前と力を貸すことは厭わん。しかし、この国と子を護るためと言うのに、納得できん愚かな人間がいるとはな」

「7歳のお披露目の儀式は、より優れた魔力、スキルを持つものを取り込むのに絶好の機会ですからね」

「ふむ。全く理解できんな」

「ふふっ、シロガネ殿にしてみればそうなんでしょうね。
さて、地下の転移陣へと着きました。この転移陣へを潜れば、陛下の執務室へと繋がります。
まずは私が陛下と話をしますので、シロガネ殿の良きタイミングで会話に混じってください」

「あい、わかった」

「では、転移します。
『王宮、陛下の執務室へと転移』」

私は転移陣へと魔力を流し、陛下の待つ執務室へとシロガネ殿と共に転移した。


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