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第三章

サロンにて⑧

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「そう…。ウィルは精霊契約ができるのね」

こんにちは。今日は心臓の休まる時の無い、エルシーアです。
かぁしゃまが、セバスとの打ち合わせからサロンに戻って来たタイミングで、ウィルにぃが精霊契約の事を報告したのです。

「はい。いつも僕の側にいる氷と水の精霊が、エルに僕と契約したいと話していた様です」

「そう。それでウィルは精霊と契約したい?」

かぁしゃまがウィルにぃの目をジッと見つめて尋ねる。

「そうですね。ですが、今ではありません。僕にはまだ、精霊の真の姿を見る事も、声を聞く事もできていませんから」

ウィルにぃは気負わずに、かぁしゃまに返事をする。
ウィルにぃ本当にすごいや。

「ウィルちゃん、あなたがいずれ精霊契約をするのであれば、伝えておく事があるわん。
精霊契約をすれば、契約した精霊はあなたの意志に従い、力を貸してくれるわん。だけど、その力を私利私欲の為に使う事は許されないのん。
もし、あなたが私利私欲の為に精霊の力を使えば、精霊の魂は穢れ、よくて消滅、最悪の場合、闇堕ちするわん。
闇堕ちした精霊はやがて厄災になる。
精霊はね、自然そのものなのよん。自然を己の物にしようなんてできないのよん。それだけは忘れないでねん」

「厄災…」

「ええ、そうよ。地震や津波、噴火などの天変地異よん。自然の脅威の中で、人は抗うことができない、ちっぽけな存在なのよん…」

ウィルにぃの呟きに、エミリーちゃんが答える。
エミリーちゃんの話を聞いて、前世の世界を思い出す。災害をある程度予測できた前世の世界においても、人は自然の脅威になす術も無かった。

「貴重な話をありがとう。僕は精霊契約をしたら、その力を私利私欲に使わないと誓うよ」

ウィルにぃが胸に手を当て誓いを立てる。その誓いを見て、いつもウィルにぃの側にいる、氷と水の精霊は嬉しそうだ。
うんうん。良かったね。

ウィルにぃはその後、夕食の時間に王宮から戻って来たおとしゃまにも精霊契約の話をし、これまた気負わずに返事をしていた。



夕食も食べ終え、お風呂に入り、日課のエアネスト様と、いつきちゃんにみつきちゃん、天照ちゃんへの報告も済んで、後は寝るだけだ。
みんなの神像はもちろん王都のタウンハウスにも持っていくよ。なので早速インベントリの中に収納、ないないなのです。

明日からいよいよ王都かぁ…。
王都…。どんな所だろう。

今も心の奥に燻っている、この不安な気持ちは何だろう。
王都に何かがある??それとも王都で何かが起きる??
いずれにせよ、わたしはタウンハウスから一歩も出ないし、ペルルにシロガネ、エミリーちゃんだって居るから大丈夫だよね。
そんな事を考えながら、おとしゃまとかぁしゃまの寝室のベッドの上をコロコロ転がる。
ペルルとシロガネは枕元で寝る前の毛づくろいをしている。

カチャ
「あら、エルちゃん。日課のお祈りはもう終わったの?」

「うん。おわっちゃ なのよ」

ベッドの上をコロコロ転がっていたら、湯上がりのかぁしゃまが寝室に入って来た。
湯上がり美人パネェ~っ!!!!

「明日からは王都での生活よ。さぁ、今日はもう寝ましょうか」

「かーしゃ、とーしゃは?」

寝室のおとしゃま側の扉が開かない。

「お父様はまだ仕事があって、今日は一緒にお布団に入れないの。ごめんなさいね。
でも安心して。エルちゃんが朝起きたら、お父様は必ず隣で寝ているわ。
さぁ、エルちゃん。おやすみなさい。いい夢を」

どうやら、おとしゃままだ仕事がある様だ。一緒にお布団に入れないのは残念だけど、ぜひとも頑張ってお仕事を終わらせて欲しい。一秒でも長く一緒に寝たいのです。

かぁしゃまに、おやすみのキスをおでこに贈られ、わたしは眠りについた。


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