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第三章

サロンにて④

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〈父:フリッツィSide〉



「エルはまだまだ幼子だ。だからこそ、今は私達に甘え、護らせておくれ。
まぁ、エルが大きくなっても護るけどね」

裏庭から帰ってきたエルに、私達に甘えて欲しいと本当の気持ちを伝える。
するとエルは私の言葉を聞き、そっと甘えるように、すりっと頭をわたしの胸に寄せてきた。
その様子を見て私は思う。
あぁ、この愛しい末娘は精神的に年齢が高く、無意識に私達に迷惑をかけないように、甘えない様にしてきたのかもしれない。
そして、そんなエルの態度に私達が“この子なら大丈夫”と無意識に甘えていたのだと。

「フリッツィ、裏庭での件は事後報告になってすまんな。
其方達は話し合いをしていた故、我とペルルが許したのだ」

私達とエルとの話が済むまで、エミリーの膝の上で撫でられていたシロガネ殿が起き上がり、頭を下げる。

「頭をお上げください。シロガネ殿。
シロガネ殿のおかけでエルの正直な気持ちを聞くことができました。
シロガネ殿が居なかったら、私達は間違ったまま、想いがすれ違ったまま進んでいたかもしれません。
その事に気がつかせてくださったシロガネ殿に感謝をすれど、頭を下げられる謂れはありませんよ」

そうだ。シロガネ殿が居なかったら、私達はエルが早熟だからと、エルの本当の年齢を勘違いをし、エルの本当の気持ちを知らないまま、ずっと過ごしていたかもしれない。

「うむ。そう言ってもらえるとありがたい。
ただ、先程戻ってくる時の転移は、エルにも其方達にもビックリさせてしまったな。
裏庭での用事も済んだ事だし、早く報告しに戻ろうと促したら、エルがもうちょっとゆっくりしてから戻ろうと言い出したのでな。急いでしまったのだ」

「ちろきゃね ひみちゅ めっ!!」

「ふふっ。シロガネ殿、大丈夫ですよ。
エルも私達もビックリしましたが、それはエルを私達に早く会わせようと思って、してくださった事でしょう。
もう済んだ事ですし、本当に大丈夫ですよ」

裏庭での、もう少しゆっくりしてから帰るという、エルの報告を先延ばしにしたいという気持ちは私達には秘密だったんだろう。
シロガネ殿に対して『めっ!!』と慌てながらも怒るエルの姿が可愛らしい。
エルは、シロガネ殿とペルル殿には素直に甘えられて居る様だ。
本当にシロガネ殿とペルル殿がエルの側に居てくださってよかった。
おふたりが居なかったら、私達はエルに随分寂しい思いをさせていたかもしれない。

「シロガネ殿、ペルル殿。おふたりがエルの側に居てくださる事に心から感謝を」

[ぼくはエルを護るために遣わされた守護獣だからね。気にしないでいいよ]

「うむ。我もエルを護るために来たのだ。気にすることはない」

ペルル殿はちょっと照れくさそうに、シロガネ殿はうんうんと頷きながら返事を返してくださった。


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