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第三章

サロンにて③

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シロガネに裏庭での事を、正直に話す様に言われたわたし。
しかし、どこから話せばいいのやら…。
やっぱり錬金術で試験管を造ったところからかな?
バメイに試験管の素材を貰いに行った時点で、なんやかんやでバレそうな気がする…。黙っていて、後からバレた時の方が恐ろしいもんね…。特にかぁしゃまが。
ここは全部素直に話すしかないね。

[あのね、まずこの試験管は、ワインのコルクの栓とか、欠けちゃったりしたグラスをバメイにお願いして貰って造ったの]

おとしゃまの膝の上から、隣に座るかぁしゃまの様子をチラリと伺う。

「まぁ、そうだったの。エルちゃん、バメイにちゃんとお礼を言ったかしら?」

[うん。もちろん。ちゃんとお礼は言ったよ]

「そう。それならよかったわ。それにしても、よく出来ているわ」

えへへ。かぁしゃまに褒められた。 

「うん。本当によく出来ているね。流石は僕のエルだ」

ウィルにぃがテーブルの上に置かれた、種入り試験管を摘み上げ、しげしげと眺めている。
しかし、最後の褒めゼリフ、ウィルにぃはブレないな…。

「兄貴のエルじゃなくて、俺達のエルだけど。しかしエルはすげーなっ!!でも、どうしてこんな物を集めようと思ったんだ?」
「そうね、流石はわたくしの妹のエルちゃんね。
エルちゃん、どうしてかわたくしも知りたいわ。教えてくれるかしら?」

バルにぃは涙入り試験管を摘み上げ、ちゃぷちゃぷ振りながら不思議そうに聞いてくる。
それをルーねぇがバルにぃから受け取り、観察しながら聞いてくる。
ところで、ふたりも何でウィルにぃに対抗してるんだろう?

しかし、“どうして”か…。
わたしの、『王都行きに対して、まだ不安』って言う気持ちを正直に話してもいいのだろうか?
チラリとエミリーちゃんの隣に座っているペルルを見る。
ペルルは目が合うと、まるで『大丈夫だ』と言わんばかりにコクンと頷いてくれた。

うん。ペルルが大丈夫って言うんだもん。正直に話してみよう。

[あのね、王都に行く事を決めた気持ちは本物なの。だけど、王都行きに対して、正直まだ不安があって…。
だったらその不安に対抗できるように、対策をしっかり考えなくちゃっ!!って、ポーション作りの勉強をしようと思ったの。ポーションさえあれば、怪我や病気も治せるかなって。そしたら、わたしの身の回りの人も助けられると思って…]

わたしは話しながら段々俯いてしまう。王都行きを決めたのは自分なのに、未だ不安な気持ちが消えないのが恥ずかしくなってしまったのだ。

「エル。エルは王都に行くのは初めてなんだから、不安でいいんだよ。
それに、エルの正直な気持ちを話してくれて、お父様は嬉しかったよ。
でも、ポーションの材料に精霊樹の葉っぱとかを選んだのは何でだい?」

おとしゃまは、俯いてしまったわたしの頭を優しく優しく撫でてくれる。
そしてわたしの正直な気持ちを受け止めてくれた。その事が嬉しくて仕方ない。
ペルルやシロガネが言う通り、家族に甘えていいんだ…。

[あのね、本当はHPもMPも回復する精霊樹の実を持って行きたかったの。だけど、それは危険だから止めなさいってシロガネに言われて。精霊樹の実はダメだけど、精霊樹の葉っぱにも何か効果があるんじゃないかって思って持って来たの。ドラちゃんの葉っぱも同じ理由。
種は弱いけど麻痺の効果があるから、誰かに襲われたりした時に使えないかなって思ったの。
涙の効果はまだわからないけど、これから研究してみようかなって。
ただ、精霊樹とドラちゃんのの葉っぱは、ペルルとシロガネが居る時のみ使用するって制限がついてるけど…]

「そうか…。エルは自分だけじゃなくて、自分の周りに居る人を護るために色々考えていたんだね。ありがとう…。
エルはまだまだ幼いのにいっぱいいっぱい悩んで考えて、本当にえらいね。
ただ、エルはまだまだ幼子だ。だからこそ、今は私達に甘え、護らせておくれ。
まぁ、エルが大きくなっても護るけどね」

おとしゃまが優しく頭を撫でながら、甘えていいんだと教えてくれる。
あぁ…。わたしはこの家の子に生まれ変わってなんて幸せなんだろう。


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