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第三章

裏庭で⑥

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「お嬢、お待たせしました」

バメイがコルクの栓と、欠けたり割れたりしたグラス類を持って来てくれた。

[ありがとう、バメイ]

「しかし、怪我だけはしないように気をつけてくだせぇよ。お嬢に怪我させちまったら、あっしが旦那様に怒られちまう」

[うん。ちゃんと気をつけるね。バメイがおとしゃまに怒られたら嫌だもん]

「じゃあ、あっしは調理場に戻りますんで。空になったバケツは調理場の裏口の扉の前にでも置いておいてくだせぇ」

[バメイ、忙しいのにありがとう。夕食楽しみにしてるね]

「任せてくだせぇ」

バメイは拳で自分の胸をドンッと叩き、自信に満ち溢れた姿で調理場へ戻っていった。



[よしっ!!早速、サクッとやっていこうっ!!]

よいしょっと精霊樹の根元に座り込む。
左手はコルクの栓に、右手は欠けちゃったりしたグラスにかざして目を閉じ、魔力と共に試験管になる様にイメージを流していく。
すると、手元がパァァァ~ッと光り輝き、
カラン コロロンッ カラン コロンッ

〔エル、ストップっきゅ〕

ペルルのストップをかける声が聞こえる。
ゆっくりと目を開けると、わたしの手元には30本程のコルクの栓がついた試験管が転がっていた。
出来上がった試験管を1本手に取り確認してみる。うん。なかなかの出来栄えじゃない?
後はドラちゃん達の種と涙を頂くだけだね。

「エルよ。種はドラ達本人からもらうとして、涙はどうするのだ?先程、其方はいい考えがあると言っていたが」

[ふっふっふっ。任せてシロガネ。まぁ、見ててよ。
はぁ~いっ!!注目っ!!マンドラゴラちゃん達、集合ぉ~っ!!]

わたしがマンドラゴラちゃん達に号令をかけると、各々好きに遊んでいたマンドラゴラちゃん達がわたしの元へ集合する。

《エルぅ、どうしたのぉ~?》
《なになにぃ~?》
《あそぶ?あそぶ?》

[今からドラちゃん達には、ふたりで1組のペアを作ってもらいます。そしてその後にジャンケンをして、勝った子は左のシロガネの方へ、負けた子は右手のペルルの方へ移動してね。
それじゃあ、用意、スタートっ!!]

ドラちゃん達、マンドラゴラちゃんは丁度30人(匹?)居るからね。15組のペアができる。

《最初はグー、ジャンケン、ポンっ!!》
《勝ったぁ~っ!!》
《負けたぁ~っ…》

マンドラゴラちゃん達が次々にペアを作り、ジャンケンをはじめる。

《負けたぁぁ~っ!!》

ペアの子に負けたドラちゃんがよよよっ…とよろける。

[勝ったグループ子はこの試験管に1個ずつ種を入れてね。負けたグループ子は涙だよ]

《はぁ~いっ!!》
《はぁ~いっ…》

ジャンケンに勝ったマンドラゴラちゃん達は元気に、負けたマンドラゴラちゃん達は渋々といった感じで返事をした。
勝ったマンドラゴラちゃん達は早速、試験管に種を入れてくれる。

[ジャンケンに負けたマンドラゴラちゃん達は、あ~んしてね?]

《あ~っ》✕15

[そして、インベントリから取り出したるは──]

──ぽい ぽい ぽい ぽぽいっ

《んっ!?!?ンんん~~~っ!!!!酸っぱぁ~いっ!!!!》

ぽろぽろぽろ…ドラちゃん含む、マンドラゴラちゃん達の目から涙が溢れる。
その涙をすかさず風魔法でササッと回収し、試験管に詰める。

[ふっふっふぅ~っ!!マンドラゴラちゃん達の涙、ゲットだぜっ!!!!]

〔うわぁ…〕
「なんと…」

試験管に入ったマンドラゴラちゃん達の涙を掲げ喜ぶわたしに対して、ドン引きするペルルとシロガネ。

《うぅぅぅ~~っ!!!!この酸っぱいの嫌ぁ~っ!!》

《嫌ぁ~~っ!!》

「エルよ…、ドラ達に何を食べさせた?」

口をすぼめてぷるぷる震えるドラちゃん達を不憫に思ったのか、何を食べさたのか?と聞いてくるシロガネ。

[えっ?梅干しだよ?]

「梅干し…」

[やだなぁ~っ。わたしがドラ達に変なのを食べさせる訳ないじゃん。何でそんな事聞くの?]

コテンっと首を傾げて聞くと、

「いや…、なんでもない…」
〔哀れなドラ達…〕

とやっぱりドン引きするシロガネとペルルだった。


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