転生幼女の怠惰なため息

(◉ɷ◉ )〈ぬこ〉

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第三章

裏庭で④

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わたしに対して、胡散臭そうな目で見つめるペルル。
何だろう?シロガネが来てから半日も経ってないけど、ペルルは完全にツッコミ役になった気がする。

おっと、ドラちゃん達の種や涙を回収する前にやる事があるんだった。
インベントリは時間経過が無いから、精霊樹とドラちゃんの達の葉っぱそのまま入れても劣化はしないし、問題無い。
劣化をしないといっても、種と特に涙をそのままインベントリに入れるのはちょっと…。涙は溢れちゃいそうだし。

よしっ!!まずは種と涙を入れる容器を作らなくっちゃ。
イメージとしては、コルクの蓋付きの試験管かな?
そのコルクの蓋付き試験管を錬金術で造るためにはまず材料がいる。
コルクはワインの栓で代用して、問題は試験管のガラスだよね。
調理場のバメイに、欠けちゃったり、割れちゃったりしたグラスとかが無いか聞いてみよう。
あと、今日のおやつを食べられなかった事についてもちゃんと謝ろう。せっかく用意してくれてのに申し訳ない事をしてしまった。

[よしっ!!バメイのところに行ってくる]

〔ちょっと待つっきゅ〕

気合を入れて、バメイのところへ行こうとすると、ペルルから待ったがかかった。

[ペルル、どうしたの?]

〔何でバメイのところへ行くっきゅか?〕

[何でって…、おやつを準備してくれてのに食べられなかった事に対しての謝罪と、試験管を造る材料をもらいに行くんだよ?]

〔その試験管とやらは何に使うっきゅか?〕

[何にって、ドラちゃん達の種と涙を保存するのに使うに決まってるじゃん]

〔エル…、ちょっとそこに座るっきゅ〕

[えっ?何で?]

〔いいから座るっきゅ!!!!〕

「エルよ、我に持たれて座るがよい」

ペルルの本気の怒りを感じたシロガネはエルに座る様に促す。

[むぅ…。わかったよ…]

わたしがシロガネのお腹にもたれて座ると、ペルルがそれはそれは深い深いため息をついた。

〔エル。エルは全然反省もしていないし、理解もしていないっきゅね〕

[なに?なんのこと??]

〔報連相っきゅよ。アメリとアンネ、ハリエットにも言われた事をもう忘れたっきゅか?
エルは何かしようとする前に、ちゃんと他の人、特にハリエットに相談する必要があるっきゅ。
ハリエットにも言われたきゅよね?エルが何をしようとしているか知っていないと、何かあった時に庇えないって。
エルはあの時、“わかった”と返事をしたのに、もう忘れて同じ事を繰り返すっきゅか??〕

ペルルに報連相について、こんこんと諭される。
確かにそうだ。かぁしゃまと約束したんだ。なのに何でわたしは忘れちゃってたんだろう…。

「う…っ、ふぇぇ…っ」

自分の情けなさに泣けてくる。

〔泣いてもダメっきゅよ。本当にわかってるっきゅか!?〕

「うぇぇ~ん…っ、ひくっ…ひっく…」

どうしよう…。自分が悪いのに、あとから後から涙が出てきて止まらない…。

「エルよ、泣くでない。ペルル、其方も少し落ち着け。エルだってちゃんと理解はしておる。
だが、エルはまだ2歳にも満たない幼子なのだぞ?いくら元の精神年齢が高くとも、心が体の年齢に引っ張られておるのだ。これぐらいの年齢の幼子は直ぐに気になった事に夢中になり、他の事は忘れてしまうものだ。
それに、エルが何かやらかして暴走しない様に我らがおるのであろう?」

「えっ…??」

えっ??何で会って半日も経っていないシロガネも、やらかして暴走する前提で話をしてるの??
ビックリし過ぎて、涙が止まったんですけど…。

〔まぁ、そうきゅけど…。けど、何かあった時に一番傷つくのはエル自身っきゅ。その事はちゃんと理解させないとっきゅっ!!〕

「わかっておる。エル…、エルシーア。
よく聞くのだ。其方の好奇心旺盛な性格は悪いものではない。ただ、エルの魔力は無限にあり、事が大きくなりやすいのだ。
そうすると、フォローする人間が必ず必要になる。それはエルの母親であるハリエット然り、双子のメイド然り。エルを大切に思ってくれている周りの全ての人間がそうだ。
エルがしたい事を何も知らないと、周りの人間が困り、傷つく事があるやもしれぬ。そうすると後悔し、悲しむのはエルシーア、其方自身だ。
ペルルはその事を心配しておるのだよ。
エルは賢いし、敏い子だ。ペルルや周りの人間の気持ちを理解してくれるな?」

シロガネが尻尾でわたしのお腹をぽんぽんと優しく叩きながら、ペルルの言葉をより深く説明してくれる。
ペルルは出会ってから今日までずっと、わたしの側に居て、見守り、フォローしてくれていた。それは全部わたしの為だったんだよね…。

[ペルル、ごめんなさい…。今度からはちゃんと気をつけるから、許してくれる?]

〔……本当に本当に理解したっきゅか?〕

[うん]

〔また報連相を怠ったら、さっきより強い飛び蹴りをお見舞するっきゅよ?〕

[うっ…、わかった]

ペルルの飛び蹴りは嫌だけど、わたしが気をつけなくちゃいけないんだもんね。

〔はぁぁ…っ、仕方ないっきゅね〕

[ペルル、ありがとうっ!!大好きっ!!!!]

盛大なため息を漏らしながらも許してくれたペルル。
そんなペルルをぎゅうっと抱きしめて、鼻の頭にチュッとキスを贈る。

〔ちょっ…な…っ!!恥ずかしいから止めるっきゅ!!〕

[もうっ、ペルルったらぁ~っ。照れなくてもいいのにぃ~っ!!]

腕の中でジタバタ暴れるペルルを、より一層強く抱きしめ、もふもふ撫で撫でするのです。


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