転生幼女の怠惰なため息

(◉ɷ◉ )〈ぬこ〉

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第三章

エルの異変②

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〈父:フリッツィSide〉


シロガネ殿がエルとペルル殿を連れて、転移で裏庭へと消えた。
アメリアとアンネリースが“追いかけた方がいいのでは?”と戸惑いを見せていたので、

「エルを追わなくてもよい。今はシロガネ殿とペルル殿に任せよう」

と声をかける。

「あなた…」

妻が不安がっているため、肩を引き寄せ抱きしめる。

「エルシーアは大丈夫だ。何せシロガネ殿は白虎様で、ペルル殿だって幻獣のカーバンクルだ。お二方を信じて任せよう」

そうだ。今はお二方を信じて任せよう。
私達は考えなければならない。
何故なら私達…、いや、私はエルの異変をずっと見過ごしていたのだから。
サロンに重苦しい雰囲気が漂う。

「やっぱりエルちゃんは精霊の愛し子、精霊姫だったのねん…」

その重苦しい雰囲気を破ったのはエミリーの言葉だった。

「精霊姫?どういう事だ?」

エルシーアは私達の大切な愛娘であって、決して精霊の姫ではない。

「どうもこうも、さっきエルちゃんが泣いた時、精霊が反応したでしょん?カップやカーテンが揺れたり、急に室温が下がったり。
あれはエルちゃんを傷つけられたと思った、精霊達の怒りの行動よん」

「何故そんな事がわかる?」

サロンに居た、私達誰もがあれが精霊の行動だとは思わなかった。
それなのに、何故エミリーは知っている?

「あらん?もう忘れちゃったのかしらん?
あたくし、こう見えても精霊の血が流れているのよん?」

クスクスと笑いながらエミリーが答える。

「それにん…」

そう言いながら、エミリーが腰まである髪をふわりと上げる。
すると、その髪の毛の中からフワッと黒く光り輝く精霊が出てきた。
普段、エルの周りには精霊がたくさん居る事は知っている。その精霊達は光り輝く球体にしか見えず、姿型はハッキリとは見えない。
しかし、エミリーの髪の毛から出てきた精霊は違う。しっかりとその姿型が見えるのだ。
蝶の様な羽を持ち、墨色の髪と目を持つ女の子の精霊の体長は約10cm程だろうか。
今はエミリーの肩に留まって、エミリーの人差し指で頭を優しく撫でられニコニコと笑っている。

「この子はあたくしの契約精霊、シュワーツよん。この子がね、エルちゃんは精霊女王と精霊に愛されし精霊姫だと言うのよん。その証拠に、エルちゃんの周りには常に精霊がたくさんいるわん。
さっきの現象もね、シュワーツがエルちゃんの周りにいる精霊の仕業だって教えてくれたのん。エルちゃんを泣かせたのが許せなかったんですってん」

エミリーの契約精霊のシュワーツが、エミリーの言葉に合わせて泣く仕草や怒る仕草をする。
その様子を微笑ましく見ながら話していたエミリーが真剣な表情をする。

「フリッツィ、一つだけ忠告しておくわん。
精霊はね、とても単純なのよん。自分の愛しい存在が傷つけられた、じゃあその原因を排除してやろうって感じにねん。
今回はシロガネちゃんが抑えてくれたから良かったもののん、今後はどうなるかわからないわん。
エルちゃんの周りの存在にはよくよく気をつけなさいなん」

「忠告、感謝する」

「あらん、いいのよん。気にしないでん」

エミリーは暗くなってしまった雰囲気を和ませようと、ヒラヒラと手を振り明るく振る舞ってくれた。


    
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