112 / 166
第三章
裏庭で①
しおりを挟む
「着いたぞ」
おとしゃまにシロガネの背中に乗せられたと思ったら、裏庭に居た。
ペルルと一緒にシロガネの背中から降りる。
「さぁ、エル。まずは腹ごしらえからだ。
目覚めてから殆ど何も口にしていない状態であろう?精霊樹の実を食べるがよい」
そう言うと、シロガネは尻尾を振り風を起こす。すると風が精霊樹の実のへたに当たり、落ちてくる。それを器用に風で受け止め、わたしに渡してくる。
「さぁ、食べるがよい」
「あーと…」
シロガネが精霊樹の根本に寝転がったので、ペルルと一緒にお腹をソファー代わりにして、もたれかかる様に座る。
しゃくり。
ひと口かじれば、ギュッと蜜が詰まっており、爽やかな甘みと酸味、瑞々しい果汁が口いっぱいに広がる。
「おいちぃ…」
しゃくっ、しゃくっ。
瑞々しい精霊樹の実を夢中で食べる。
「あっ… ないない なの…」
「安心するがよい。精霊樹の実はまだいくらでもある」
大樹となり、たくさんの実を付ける精霊樹を見上げる。
いつの間にこんなにも大きくなったんだろ?
シロガネがまた尻尾で風を起こし、精霊樹の実を渡してくれる。
今度は味わって食べよう。
しゃくり、しゃくり…。
「エルシーアよ、今日は何がそんなに悲しかった?」
しゃく…っ。
精霊樹の実を食べていた手が止まる。
わたしと一緒に精霊樹の実を食べていたペルルも、手を止めてわたしを見つめてくる。
「わきゃりゃにゃい…」
「エルシーアよ。ここには我とペルル、そしてマンドラゴラ達しかおらん。
念話でよい、思ったこと、感じたことをそのまま話してみよ」
しゃくっ…。
[本当は…本当は王都になんか行きたくない…っ!!
だけど、わたしはまだまだ小さな子どもだし、一人じゃ生きていけないのもわかってるの…。
でも理屈じゃないの、何かイヤなの…っ!!
王都に行くのも、そのせいでわたしの周りが、生活がどんどん変わっていくのも…。
今日だって本当はお昼寝の時、かぁしゃまが起こしに来るはずだったっ!!だけど、かぁしゃまは王都行きの事で話し込んで、起こしに来なかった…っ!!]
精霊樹の実を見つめながら、思ったこと、感じたことをありのまま吐き出す。
[何で?何でみんな変わっていくの…?
わたしに王都行きは関係ないっ!!王都に行きたい何てひと言も言ってないっ!!
ヤダよ…、行きたくないよ…。
だって王都は何だか嫌な予感がする。怖い事が起きる気がするもん…]
「そうか…。
そうだな。確かに自分が望まぬ変化はなかなか受け入れられぬものよな」
涙を流しながら、ありのままの感情を全て吐き出すと、シロガネが静かに同意してくれる。
「エルよ、では家族は誰も残らぬが、我とペルルと共に屋敷に残るか?」
《エルぅ、ぼく達もいるよぉ~》
[ドラちゃん?]
いつの間にかシロガネの周りに集まっていた、ドラちゃんとマンドラゴラちゃん達が自分達の存在をアピールする。
「そうだな。お主たちもおったわ。
して、どうする?屋敷に残るか?」
[………行く]
「ふっ。そうか。ならば良いのだ。
エルシーアよ、其方は決してひとりではない。其方の家族然り、其方に仕えるメイド達然り。それにな我とペルル、マンドラゴラ達も居る。
今回の変化はエルシーアにとっては望まぬ変化だったかもしれぬ。
だが、それは全て“エルシーアのため”なのだ。フリッツィが厳しく言うのも、ハリエットが其方の為にエミリーと話し込んだのも全て、エルシーア、其方を愛し、慈しみ、護りたいと心から願うが故の言動じゃ。
それにの、ウィルフリードにバルドリック、ルイーザも其方を護らんと必死に勉強や稽古に打ち込んでおる。
決してその事を忘れてはならぬぞ?」
[うん…、うん…。
本当はね、ずっとわかってたんだよ。だけど、家族と過ごす時間がどんどん減って寂しかったんだ…。
それに王都行きの不安が重なって、自分でもどうしたらいいかわからなくなってたんだと思う…]
「エルシーアよ。其方も忘れておるようだから言うがな、其方はまだ2歳にも満たない幼子なのだぞ?
寂しい時は“寂しい”と、不安な時は“抱きしめてくれ”と言えばよいのだ。
そうすればあ奴等は喜んで相手をしてくれるであろうよ」
うん。そうだね。ウチの家族はわたしに甘々だもんね。特にウィルにぃは逆に涙を流して喜びそうな気がする。
[ありがとう、シロガネ。思いっきり自分の気持ちを吐き出したら、何だかスッキリしたよ]
「ふっ。これぐらいは何でもない。気にするな」
シロガネが優しい気持ち笑顔で笑う。
《エルぅ~っ、歌おぉ~っ!!》
ドラちゃんの掛け声でマンドラゴラちゃん達が一斉に歌い出す。
それはわたしが生前大好きだったアイドルグループが歌っていた曲だ。
『怯えて立ち竦み、逃げ出しそうな時は
この曲を信じて愛し、歌って欲しい』
『そしてどんなどん底の時だって、周りの仲間を信じ、何度でも立ち上がり、強く“生きろっ!!”』というメッセージが込められている。
そんな歌をドラちゃん達が歌ってくれている。
わたしはポロポロ涙を流しながら、ドラちゃん達と歌った。
おとしゃまにシロガネの背中に乗せられたと思ったら、裏庭に居た。
ペルルと一緒にシロガネの背中から降りる。
「さぁ、エル。まずは腹ごしらえからだ。
目覚めてから殆ど何も口にしていない状態であろう?精霊樹の実を食べるがよい」
そう言うと、シロガネは尻尾を振り風を起こす。すると風が精霊樹の実のへたに当たり、落ちてくる。それを器用に風で受け止め、わたしに渡してくる。
「さぁ、食べるがよい」
「あーと…」
シロガネが精霊樹の根本に寝転がったので、ペルルと一緒にお腹をソファー代わりにして、もたれかかる様に座る。
しゃくり。
ひと口かじれば、ギュッと蜜が詰まっており、爽やかな甘みと酸味、瑞々しい果汁が口いっぱいに広がる。
「おいちぃ…」
しゃくっ、しゃくっ。
瑞々しい精霊樹の実を夢中で食べる。
「あっ… ないない なの…」
「安心するがよい。精霊樹の実はまだいくらでもある」
大樹となり、たくさんの実を付ける精霊樹を見上げる。
いつの間にこんなにも大きくなったんだろ?
シロガネがまた尻尾で風を起こし、精霊樹の実を渡してくれる。
今度は味わって食べよう。
しゃくり、しゃくり…。
「エルシーアよ、今日は何がそんなに悲しかった?」
しゃく…っ。
精霊樹の実を食べていた手が止まる。
わたしと一緒に精霊樹の実を食べていたペルルも、手を止めてわたしを見つめてくる。
「わきゃりゃにゃい…」
「エルシーアよ。ここには我とペルル、そしてマンドラゴラ達しかおらん。
念話でよい、思ったこと、感じたことをそのまま話してみよ」
しゃくっ…。
[本当は…本当は王都になんか行きたくない…っ!!
だけど、わたしはまだまだ小さな子どもだし、一人じゃ生きていけないのもわかってるの…。
でも理屈じゃないの、何かイヤなの…っ!!
王都に行くのも、そのせいでわたしの周りが、生活がどんどん変わっていくのも…。
今日だって本当はお昼寝の時、かぁしゃまが起こしに来るはずだったっ!!だけど、かぁしゃまは王都行きの事で話し込んで、起こしに来なかった…っ!!]
精霊樹の実を見つめながら、思ったこと、感じたことをありのまま吐き出す。
[何で?何でみんな変わっていくの…?
わたしに王都行きは関係ないっ!!王都に行きたい何てひと言も言ってないっ!!
ヤダよ…、行きたくないよ…。
だって王都は何だか嫌な予感がする。怖い事が起きる気がするもん…]
「そうか…。
そうだな。確かに自分が望まぬ変化はなかなか受け入れられぬものよな」
涙を流しながら、ありのままの感情を全て吐き出すと、シロガネが静かに同意してくれる。
「エルよ、では家族は誰も残らぬが、我とペルルと共に屋敷に残るか?」
《エルぅ、ぼく達もいるよぉ~》
[ドラちゃん?]
いつの間にかシロガネの周りに集まっていた、ドラちゃんとマンドラゴラちゃん達が自分達の存在をアピールする。
「そうだな。お主たちもおったわ。
して、どうする?屋敷に残るか?」
[………行く]
「ふっ。そうか。ならば良いのだ。
エルシーアよ、其方は決してひとりではない。其方の家族然り、其方に仕えるメイド達然り。それにな我とペルル、マンドラゴラ達も居る。
今回の変化はエルシーアにとっては望まぬ変化だったかもしれぬ。
だが、それは全て“エルシーアのため”なのだ。フリッツィが厳しく言うのも、ハリエットが其方の為にエミリーと話し込んだのも全て、エルシーア、其方を愛し、慈しみ、護りたいと心から願うが故の言動じゃ。
それにの、ウィルフリードにバルドリック、ルイーザも其方を護らんと必死に勉強や稽古に打ち込んでおる。
決してその事を忘れてはならぬぞ?」
[うん…、うん…。
本当はね、ずっとわかってたんだよ。だけど、家族と過ごす時間がどんどん減って寂しかったんだ…。
それに王都行きの不安が重なって、自分でもどうしたらいいかわからなくなってたんだと思う…]
「エルシーアよ。其方も忘れておるようだから言うがな、其方はまだ2歳にも満たない幼子なのだぞ?
寂しい時は“寂しい”と、不安な時は“抱きしめてくれ”と言えばよいのだ。
そうすればあ奴等は喜んで相手をしてくれるであろうよ」
うん。そうだね。ウチの家族はわたしに甘々だもんね。特にウィルにぃは逆に涙を流して喜びそうな気がする。
[ありがとう、シロガネ。思いっきり自分の気持ちを吐き出したら、何だかスッキリしたよ]
「ふっ。これぐらいは何でもない。気にするな」
シロガネが優しい気持ち笑顔で笑う。
《エルぅ~っ、歌おぉ~っ!!》
ドラちゃんの掛け声でマンドラゴラちゃん達が一斉に歌い出す。
それはわたしが生前大好きだったアイドルグループが歌っていた曲だ。
『怯えて立ち竦み、逃げ出しそうな時は
この曲を信じて愛し、歌って欲しい』
『そしてどんなどん底の時だって、周りの仲間を信じ、何度でも立ち上がり、強く“生きろっ!!”』というメッセージが込められている。
そんな歌をドラちゃん達が歌ってくれている。
わたしはポロポロ涙を流しながら、ドラちゃん達と歌った。
130
お気に入りに追加
3,712
あなたにおすすめの小説

(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅
あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり?
異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました!
完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。

裏の林にダンジョンが出来ました。~異世界からの転生幼女、もふもふペットと共に~
あかる
ファンタジー
私、異世界から転生してきたみたい?
とある田舎町にダンジョンが出来、そこに入った美優は、かつて魔法学校で教師をしていた自分を思い出した。
犬と猫、それと鶏のペットと一緒にダンジョンと、世界の謎に挑みます!

転生テイマー、異世界生活を楽しむ
さっちさん
ファンタジー
題名変更しました。
内容がどんどんかけ離れていくので…
↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓
ありきたりな転生ものの予定です。
主人公は30代後半で病死した、天涯孤独の女性が幼女になって冒険する。
一応、転生特典でスキルは貰ったけど、大丈夫か。私。
まっ、なんとかなるっしょ。

婚約破棄されたので森の奥でカフェを開いてスローライフ
あげは
ファンタジー
「私は、ユミエラとの婚約を破棄する!」
学院卒業記念パーティーで、婚約者である王太子アルフリードに突然婚約破棄された、ユミエラ・フォン・アマリリス公爵令嬢。
家族にも愛されていなかったユミエラは、王太子に婚約破棄されたことで利用価値がなくなったとされ家を勘当されてしまう。
しかし、ユミエラに特に気にした様子はなく、むしろ喜んでいた。
これまでの生活に嫌気が差していたユミエラは、元孤児で転生者の侍女ミシェルだけを連れ、その日のうちに家を出て人のいない森の奥に向かい、森の中でカフェを開くらしい。
「さあ、ミシェル! 念願のスローライフよ! 張り切っていきましょう!」
王都を出るとなぜか国を守護している神獣が待ち構えていた。
どうやら国を捨てユミエラについてくるらしい。
こうしてユミエラは、転生者と神獣という何とも不思議なお供を連れ、優雅なスローライフを楽しむのであった。
一方、ユミエラを追放し、神獣にも見捨てられた王国は、愚かな王太子のせいで混乱に陥るのだった――。
なろう・カクヨムにも投稿

出来損ないと呼ばれた伯爵令嬢は出来損ないを望む
家具屋ふふみに
ファンタジー
この世界には魔法が存在する。
そして生まれ持つ適性がある属性しか使えない。
その属性は主に6つ。
火・水・風・土・雷・そして……無。
クーリアは伯爵令嬢として生まれた。
貴族は生まれながらに魔力、そして属性の適性が多いとされている。
そんな中で、クーリアは無属性の適性しかなかった。
無属性しか扱えない者は『白』と呼ばれる。
その呼び名は貴族にとって屈辱でしかない。
だからクーリアは出来損ないと呼ばれた。
そして彼女はその通りの出来損ない……ではなかった。
これは彼女の本気を引き出したい彼女の周りの人達と、絶対に本気を出したくない彼女との攻防を描いた、そんな物語。
そしてクーリアは、自身に隠された秘密を知る……そんなお話。
設定揺らぎまくりで安定しないかもしれませんが、そういうものだと納得してくださいm(_ _)m
※←このマークがある話は大体一人称。

異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜
青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ
孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。
そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。
これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。
小説家になろう様からの転載です!
聖女召喚に巻き添え異世界転移~だれもかれもが納得すると思うなよっ!
山田みかん
ファンタジー
「貴方には剣と魔法の異世界へ行ってもらいますぅ~」
────何言ってんのコイツ?
あれ? 私に言ってるんじゃないの?
ていうか、ここはどこ?
ちょっと待てッ!私はこんなところにいる場合じゃないんだよっ!
推しに会いに行かねばならんのだよ!!

美少女に転生して料理して生きてくことになりました。
ゆーぞー
ファンタジー
田中真理子32歳、独身、失業中。
飲めないお酒を飲んでぶったおれた。
気がついたらマリアンヌという12歳の美少女になっていた。
その世界は加護を受けた人間しか料理をすることができない世界だった
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる