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第三章
裏庭で①
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「着いたぞ」
おとしゃまにシロガネの背中に乗せられたと思ったら、裏庭に居た。
ペルルと一緒にシロガネの背中から降りる。
「さぁ、エル。まずは腹ごしらえからだ。
目覚めてから殆ど何も口にしていない状態であろう?精霊樹の実を食べるがよい」
そう言うと、シロガネは尻尾を振り風を起こす。すると風が精霊樹の実のへたに当たり、落ちてくる。それを器用に風で受け止め、わたしに渡してくる。
「さぁ、食べるがよい」
「あーと…」
シロガネが精霊樹の根本に寝転がったので、ペルルと一緒にお腹をソファー代わりにして、もたれかかる様に座る。
しゃくり。
ひと口かじれば、ギュッと蜜が詰まっており、爽やかな甘みと酸味、瑞々しい果汁が口いっぱいに広がる。
「おいちぃ…」
しゃくっ、しゃくっ。
瑞々しい精霊樹の実を夢中で食べる。
「あっ… ないない なの…」
「安心するがよい。精霊樹の実はまだいくらでもある」
大樹となり、たくさんの実を付ける精霊樹を見上げる。
いつの間にこんなにも大きくなったんだろ?
シロガネがまた尻尾で風を起こし、精霊樹の実を渡してくれる。
今度は味わって食べよう。
しゃくり、しゃくり…。
「エルシーアよ、今日は何がそんなに悲しかった?」
しゃく…っ。
精霊樹の実を食べていた手が止まる。
わたしと一緒に精霊樹の実を食べていたペルルも、手を止めてわたしを見つめてくる。
「わきゃりゃにゃい…」
「エルシーアよ。ここには我とペルル、そしてマンドラゴラ達しかおらん。
念話でよい、思ったこと、感じたことをそのまま話してみよ」
しゃくっ…。
[本当は…本当は王都になんか行きたくない…っ!!
だけど、わたしはまだまだ小さな子どもだし、一人じゃ生きていけないのもわかってるの…。
でも理屈じゃないの、何かイヤなの…っ!!
王都に行くのも、そのせいでわたしの周りが、生活がどんどん変わっていくのも…。
今日だって本当はお昼寝の時、かぁしゃまが起こしに来るはずだったっ!!だけど、かぁしゃまは王都行きの事で話し込んで、起こしに来なかった…っ!!]
精霊樹の実を見つめながら、思ったこと、感じたことをありのまま吐き出す。
[何で?何でみんな変わっていくの…?
わたしに王都行きは関係ないっ!!王都に行きたい何てひと言も言ってないっ!!
ヤダよ…、行きたくないよ…。
だって王都は何だか嫌な予感がする。怖い事が起きる気がするもん…]
「そうか…。
そうだな。確かに自分が望まぬ変化はなかなか受け入れられぬものよな」
涙を流しながら、ありのままの感情を全て吐き出すと、シロガネが静かに同意してくれる。
「エルよ、では家族は誰も残らぬが、我とペルルと共に屋敷に残るか?」
《エルぅ、ぼく達もいるよぉ~》
[ドラちゃん?]
いつの間にかシロガネの周りに集まっていた、ドラちゃんとマンドラゴラちゃん達が自分達の存在をアピールする。
「そうだな。お主たちもおったわ。
して、どうする?屋敷に残るか?」
[………行く]
「ふっ。そうか。ならば良いのだ。
エルシーアよ、其方は決してひとりではない。其方の家族然り、其方に仕えるメイド達然り。それにな我とペルル、マンドラゴラ達も居る。
今回の変化はエルシーアにとっては望まぬ変化だったかもしれぬ。
だが、それは全て“エルシーアのため”なのだ。フリッツィが厳しく言うのも、ハリエットが其方の為にエミリーと話し込んだのも全て、エルシーア、其方を愛し、慈しみ、護りたいと心から願うが故の言動じゃ。
それにの、ウィルフリードにバルドリック、ルイーザも其方を護らんと必死に勉強や稽古に打ち込んでおる。
決してその事を忘れてはならぬぞ?」
[うん…、うん…。
本当はね、ずっとわかってたんだよ。だけど、家族と過ごす時間がどんどん減って寂しかったんだ…。
それに王都行きの不安が重なって、自分でもどうしたらいいかわからなくなってたんだと思う…]
「エルシーアよ。其方も忘れておるようだから言うがな、其方はまだ2歳にも満たない幼子なのだぞ?
寂しい時は“寂しい”と、不安な時は“抱きしめてくれ”と言えばよいのだ。
そうすればあ奴等は喜んで相手をしてくれるであろうよ」
うん。そうだね。ウチの家族はわたしに甘々だもんね。特にウィルにぃは逆に涙を流して喜びそうな気がする。
[ありがとう、シロガネ。思いっきり自分の気持ちを吐き出したら、何だかスッキリしたよ]
「ふっ。これぐらいは何でもない。気にするな」
シロガネが優しい気持ち笑顔で笑う。
《エルぅ~っ、歌おぉ~っ!!》
ドラちゃんの掛け声でマンドラゴラちゃん達が一斉に歌い出す。
それはわたしが生前大好きだったアイドルグループが歌っていた曲だ。
『怯えて立ち竦み、逃げ出しそうな時は
この曲を信じて愛し、歌って欲しい』
『そしてどんなどん底の時だって、周りの仲間を信じ、何度でも立ち上がり、強く“生きろっ!!”』というメッセージが込められている。
そんな歌をドラちゃん達が歌ってくれている。
わたしはポロポロ涙を流しながら、ドラちゃん達と歌った。
おとしゃまにシロガネの背中に乗せられたと思ったら、裏庭に居た。
ペルルと一緒にシロガネの背中から降りる。
「さぁ、エル。まずは腹ごしらえからだ。
目覚めてから殆ど何も口にしていない状態であろう?精霊樹の実を食べるがよい」
そう言うと、シロガネは尻尾を振り風を起こす。すると風が精霊樹の実のへたに当たり、落ちてくる。それを器用に風で受け止め、わたしに渡してくる。
「さぁ、食べるがよい」
「あーと…」
シロガネが精霊樹の根本に寝転がったので、ペルルと一緒にお腹をソファー代わりにして、もたれかかる様に座る。
しゃくり。
ひと口かじれば、ギュッと蜜が詰まっており、爽やかな甘みと酸味、瑞々しい果汁が口いっぱいに広がる。
「おいちぃ…」
しゃくっ、しゃくっ。
瑞々しい精霊樹の実を夢中で食べる。
「あっ… ないない なの…」
「安心するがよい。精霊樹の実はまだいくらでもある」
大樹となり、たくさんの実を付ける精霊樹を見上げる。
いつの間にこんなにも大きくなったんだろ?
シロガネがまた尻尾で風を起こし、精霊樹の実を渡してくれる。
今度は味わって食べよう。
しゃくり、しゃくり…。
「エルシーアよ、今日は何がそんなに悲しかった?」
しゃく…っ。
精霊樹の実を食べていた手が止まる。
わたしと一緒に精霊樹の実を食べていたペルルも、手を止めてわたしを見つめてくる。
「わきゃりゃにゃい…」
「エルシーアよ。ここには我とペルル、そしてマンドラゴラ達しかおらん。
念話でよい、思ったこと、感じたことをそのまま話してみよ」
しゃくっ…。
[本当は…本当は王都になんか行きたくない…っ!!
だけど、わたしはまだまだ小さな子どもだし、一人じゃ生きていけないのもわかってるの…。
でも理屈じゃないの、何かイヤなの…っ!!
王都に行くのも、そのせいでわたしの周りが、生活がどんどん変わっていくのも…。
今日だって本当はお昼寝の時、かぁしゃまが起こしに来るはずだったっ!!だけど、かぁしゃまは王都行きの事で話し込んで、起こしに来なかった…っ!!]
精霊樹の実を見つめながら、思ったこと、感じたことをありのまま吐き出す。
[何で?何でみんな変わっていくの…?
わたしに王都行きは関係ないっ!!王都に行きたい何てひと言も言ってないっ!!
ヤダよ…、行きたくないよ…。
だって王都は何だか嫌な予感がする。怖い事が起きる気がするもん…]
「そうか…。
そうだな。確かに自分が望まぬ変化はなかなか受け入れられぬものよな」
涙を流しながら、ありのままの感情を全て吐き出すと、シロガネが静かに同意してくれる。
「エルよ、では家族は誰も残らぬが、我とペルルと共に屋敷に残るか?」
《エルぅ、ぼく達もいるよぉ~》
[ドラちゃん?]
いつの間にかシロガネの周りに集まっていた、ドラちゃんとマンドラゴラちゃん達が自分達の存在をアピールする。
「そうだな。お主たちもおったわ。
して、どうする?屋敷に残るか?」
[………行く]
「ふっ。そうか。ならば良いのだ。
エルシーアよ、其方は決してひとりではない。其方の家族然り、其方に仕えるメイド達然り。それにな我とペルル、マンドラゴラ達も居る。
今回の変化はエルシーアにとっては望まぬ変化だったかもしれぬ。
だが、それは全て“エルシーアのため”なのだ。フリッツィが厳しく言うのも、ハリエットが其方の為にエミリーと話し込んだのも全て、エルシーア、其方を愛し、慈しみ、護りたいと心から願うが故の言動じゃ。
それにの、ウィルフリードにバルドリック、ルイーザも其方を護らんと必死に勉強や稽古に打ち込んでおる。
決してその事を忘れてはならぬぞ?」
[うん…、うん…。
本当はね、ずっとわかってたんだよ。だけど、家族と過ごす時間がどんどん減って寂しかったんだ…。
それに王都行きの不安が重なって、自分でもどうしたらいいかわからなくなってたんだと思う…]
「エルシーアよ。其方も忘れておるようだから言うがな、其方はまだ2歳にも満たない幼子なのだぞ?
寂しい時は“寂しい”と、不安な時は“抱きしめてくれ”と言えばよいのだ。
そうすればあ奴等は喜んで相手をしてくれるであろうよ」
うん。そうだね。ウチの家族はわたしに甘々だもんね。特にウィルにぃは逆に涙を流して喜びそうな気がする。
[ありがとう、シロガネ。思いっきり自分の気持ちを吐き出したら、何だかスッキリしたよ]
「ふっ。これぐらいは何でもない。気にするな」
シロガネが優しい気持ち笑顔で笑う。
《エルぅ~っ、歌おぉ~っ!!》
ドラちゃんの掛け声でマンドラゴラちゃん達が一斉に歌い出す。
それはわたしが生前大好きだったアイドルグループが歌っていた曲だ。
『怯えて立ち竦み、逃げ出しそうな時は
この曲を信じて愛し、歌って欲しい』
『そしてどんなどん底の時だって、周りの仲間を信じ、何度でも立ち上がり、強く“生きろっ!!”』というメッセージが込められている。
そんな歌をドラちゃん達が歌ってくれている。
わたしはポロポロ涙を流しながら、ドラちゃん達と歌った。
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