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第三章
異世界オネエとクマと猫
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「シロガネ殿、気がつかれましたか。どうですか?食事はできそうですか?」
シロガネが目を覚ましたので、食事を勧めるおとしゃま。
「うむ。では頂くとしよう」
「わかりました。では準備致しますね。
セバス、シロガネ殿に食事を。そしてバメイを呼んでくれ」
「かしこまりました」
セバスが一礼して食堂を出ていく。
すると、しばらくして、シロガネの食事を乗せたワゴンを押すバメイと、食後のお茶を乗せたワゴンを押すセバスが戻ってきた。
セバスがシロガネの食事を配膳する。出てきたのは鹿の骨付き背ロース肉のソテーだった。
「シロガネちゃん、骨が刺さると危ないから、あたくしが食べさせてあげるわんっ♪」
そう言うと、エミリーちゃんはナイフとフォークできれいに切り分け、シロガネに食事介助する。
「はい、あ~んっ♡」
「う…うむ」
ハムっと切り分けられた鹿肉を口に入れ、もぐもぐするシロガネ。鹿肉が気に入ったのか、その瞳がキラキラと輝く。
「うむっ!!美味いっ!!この食事を作った者は誰だ?褒めてつかわすっ!!」
よっぽど気に入ったのだろう。しっぽをピーンと立てて、喜びを表現するシロガネ。
「シロガネ殿、紹介します。先程、後に紹介したいと言っていたひとりがエミリー、そしてもうひとりはこちらにいるバメイです」
「はじめまして、シロガネ殿。あっしはこの家の料理長を任されております、バメイ申しやす。シロガネ殿にお会いできて光栄です。以後お見知りおきを」
バメイはコック帽を取って、胸に手を当ててシロガネに挨拶をする。
そしてピョコっと揺れるクマ耳。
「あいわかった」
なんだろう。こういうやり取りを見てると、さすがは聖獣なんだなぁ~って感じ。
「して、お主は熊の獣人か?何故このような場所で料理人をしておる?」
「はい、あっしは昔の旦那様の冒険者仲間なのです。旦那様があっしの作る料理を気に入ってくださり、その関係で今は料理長を勤めさせていただいておりやす」
「なるほどのう。理解した。我はお主の作る料理が気に入った。今後も期待しておるぞ。励むがよい」
「はっ、ありがたき幸せ」
バメイは改めて一礼すると、食べ終わった食器をワゴンに乗せて下がっていった。
「さて、明日からいよいよ王都だね」
バメイが下り、シロガネの食事が終わるのを待ってから、おとしゃまが切り出す。
「社交シーズン真っ只中になるからね、最低でも1週間、長くて半月は王都で過ごす事になるからね。
王都についたらまずはウィルのお披露目の儀式だね。その後はバルとルイーザのお茶会デビューだ。
ウィルフリード、バルドリック、ルイーザ、それぞれマナーや作法はちゃんと学んでいるな?なぁに、何事も初めての経験だ。失敗してもいい、のびのびと楽しみなさい」
「はい、かしこまりました」
「おうよ、任せとけっ!!」
「かしこまりましたわ、お父様」
おとしゃまの言葉に、それぞれ返事を返すお兄ちゃんズとお姉ちゃん。
何やらお兄ちゃんズとお姉ちゃんは大変そうだ。頑張って欲しい。
「さて、エルシーア」
「う?」
「お母様も社交界に復帰するし、ウィルやバル、ルイーザもそれぞれの用事でいない事が多くなるだろう。
常にペルル殿とシロガネ殿、専属メイドのふたりには側に居てもらうが、くれぐれも問題を起こさないように、大人しくしていて欲しいんだ。
元気に遊ぶのが好きなエルには酷なことを言ってるのは分かっている。だか、大人しくしていて欲しいんだ」
おとしゃま、今ワザとくれぐれもを強調したな…っ!!しかも大人しくを2回も言いましたよっ!!
ぐぬぬっ!!わたしが一体何をしたというのだっ!!
〔やらかししかしてないっきゅね〕ボソッ
「あらぁん、大丈夫よん♪フリッツィ、あたくしも常に側に居るわんっ☆
あたくしの強さ、あなただって知ってるてしょんっ♪
エルちゃん、明日からいっぱいお洋服作り楽しみましょうねんっ♡」
「うん わきゃる したっ!!」
「エル…それはどっちに対しての“わかった”だい?」
「りょーほー(ちゃぶん ぼそっ)」
「「「「「エル…」」」」」
家族全員の疑いの目が痛い…。
なんだいなんだいっ!!!!エルちゃんはオコですよっ!!
「むぅぅ~~っ!!」
「わちゃし ぽんぽん いっぱー」
「もう ねむねむ なもっ!!」
「あらあら、エルちゃん。お母様ってば気がつかずにごめんなさい。そうね、エルちゃんはおネムの時間よね。じゃあ、お昼寝部屋に行きましょうね」
グズり出したわたしをかぁしゃまが抱き上げ、背中をぽんぽんと優しく叩きあやしてくれる。
「かーしゃ…」
「エルちゃん、いい夢を。おやすみなさい」
ちゅっとかぁしゃまがおでこにおやすみのキスを贈ってくれる。
かぁしゃまのおやすみのキスはある意味魔法だ。それだけで安心してぐっすりと眠ることができるのだから。
「「「「おやすみ、エル。いい夢を」」」」
「おやちゅみ なの…」
────────────────────
「あらあら、よっぽど眠かったのね。もう眠ってしまったわ」
クスクスと優しくほほ笑みながら、眠る愛娘を見守る妻。
先程の言葉はエルにはキツかっただろうか…。
「はぁ…」
「あなた、大丈夫ですわ。エルはちゃんとあなたの想いを理解しています。だからどうか落ち込まないで」
「あぁ、すまない。私は情けないな。王都では何が起こるかわからない。ただ、エルの事が心配なだけなのだ…」
「あなた…」
「「「お父様…」」」
私は本当に情けないな。こんなにも家族に心配をかけてしまっている。
「そのことについて我から話がある。先程のサロンとらやで話そう。奥方よ、先にエルを寝かてせくるがよい。
あと、先程のメンバーと、料理長のバメイを呼べ。全員が揃ってから話をはじめる。
エミリーよ、我を抱えてサロンへ連れて行け」
「わかったわん…」
四聖獣が一体である白虎様からの話…。
いったい何が待ち受けているのだろうか…。
シロガネが目を覚ましたので、食事を勧めるおとしゃま。
「うむ。では頂くとしよう」
「わかりました。では準備致しますね。
セバス、シロガネ殿に食事を。そしてバメイを呼んでくれ」
「かしこまりました」
セバスが一礼して食堂を出ていく。
すると、しばらくして、シロガネの食事を乗せたワゴンを押すバメイと、食後のお茶を乗せたワゴンを押すセバスが戻ってきた。
セバスがシロガネの食事を配膳する。出てきたのは鹿の骨付き背ロース肉のソテーだった。
「シロガネちゃん、骨が刺さると危ないから、あたくしが食べさせてあげるわんっ♪」
そう言うと、エミリーちゃんはナイフとフォークできれいに切り分け、シロガネに食事介助する。
「はい、あ~んっ♡」
「う…うむ」
ハムっと切り分けられた鹿肉を口に入れ、もぐもぐするシロガネ。鹿肉が気に入ったのか、その瞳がキラキラと輝く。
「うむっ!!美味いっ!!この食事を作った者は誰だ?褒めてつかわすっ!!」
よっぽど気に入ったのだろう。しっぽをピーンと立てて、喜びを表現するシロガネ。
「シロガネ殿、紹介します。先程、後に紹介したいと言っていたひとりがエミリー、そしてもうひとりはこちらにいるバメイです」
「はじめまして、シロガネ殿。あっしはこの家の料理長を任されております、バメイ申しやす。シロガネ殿にお会いできて光栄です。以後お見知りおきを」
バメイはコック帽を取って、胸に手を当ててシロガネに挨拶をする。
そしてピョコっと揺れるクマ耳。
「あいわかった」
なんだろう。こういうやり取りを見てると、さすがは聖獣なんだなぁ~って感じ。
「して、お主は熊の獣人か?何故このような場所で料理人をしておる?」
「はい、あっしは昔の旦那様の冒険者仲間なのです。旦那様があっしの作る料理を気に入ってくださり、その関係で今は料理長を勤めさせていただいておりやす」
「なるほどのう。理解した。我はお主の作る料理が気に入った。今後も期待しておるぞ。励むがよい」
「はっ、ありがたき幸せ」
バメイは改めて一礼すると、食べ終わった食器をワゴンに乗せて下がっていった。
「さて、明日からいよいよ王都だね」
バメイが下り、シロガネの食事が終わるのを待ってから、おとしゃまが切り出す。
「社交シーズン真っ只中になるからね、最低でも1週間、長くて半月は王都で過ごす事になるからね。
王都についたらまずはウィルのお披露目の儀式だね。その後はバルとルイーザのお茶会デビューだ。
ウィルフリード、バルドリック、ルイーザ、それぞれマナーや作法はちゃんと学んでいるな?なぁに、何事も初めての経験だ。失敗してもいい、のびのびと楽しみなさい」
「はい、かしこまりました」
「おうよ、任せとけっ!!」
「かしこまりましたわ、お父様」
おとしゃまの言葉に、それぞれ返事を返すお兄ちゃんズとお姉ちゃん。
何やらお兄ちゃんズとお姉ちゃんは大変そうだ。頑張って欲しい。
「さて、エルシーア」
「う?」
「お母様も社交界に復帰するし、ウィルやバル、ルイーザもそれぞれの用事でいない事が多くなるだろう。
常にペルル殿とシロガネ殿、専属メイドのふたりには側に居てもらうが、くれぐれも問題を起こさないように、大人しくしていて欲しいんだ。
元気に遊ぶのが好きなエルには酷なことを言ってるのは分かっている。だか、大人しくしていて欲しいんだ」
おとしゃま、今ワザとくれぐれもを強調したな…っ!!しかも大人しくを2回も言いましたよっ!!
ぐぬぬっ!!わたしが一体何をしたというのだっ!!
〔やらかししかしてないっきゅね〕ボソッ
「あらぁん、大丈夫よん♪フリッツィ、あたくしも常に側に居るわんっ☆
あたくしの強さ、あなただって知ってるてしょんっ♪
エルちゃん、明日からいっぱいお洋服作り楽しみましょうねんっ♡」
「うん わきゃる したっ!!」
「エル…それはどっちに対しての“わかった”だい?」
「りょーほー(ちゃぶん ぼそっ)」
「「「「「エル…」」」」」
家族全員の疑いの目が痛い…。
なんだいなんだいっ!!!!エルちゃんはオコですよっ!!
「むぅぅ~~っ!!」
「わちゃし ぽんぽん いっぱー」
「もう ねむねむ なもっ!!」
「あらあら、エルちゃん。お母様ってば気がつかずにごめんなさい。そうね、エルちゃんはおネムの時間よね。じゃあ、お昼寝部屋に行きましょうね」
グズり出したわたしをかぁしゃまが抱き上げ、背中をぽんぽんと優しく叩きあやしてくれる。
「かーしゃ…」
「エルちゃん、いい夢を。おやすみなさい」
ちゅっとかぁしゃまがおでこにおやすみのキスを贈ってくれる。
かぁしゃまのおやすみのキスはある意味魔法だ。それだけで安心してぐっすりと眠ることができるのだから。
「「「「おやすみ、エル。いい夢を」」」」
「おやちゅみ なの…」
────────────────────
「あらあら、よっぽど眠かったのね。もう眠ってしまったわ」
クスクスと優しくほほ笑みながら、眠る愛娘を見守る妻。
先程の言葉はエルにはキツかっただろうか…。
「はぁ…」
「あなた、大丈夫ですわ。エルはちゃんとあなたの想いを理解しています。だからどうか落ち込まないで」
「あぁ、すまない。私は情けないな。王都では何が起こるかわからない。ただ、エルの事が心配なだけなのだ…」
「あなた…」
「「「お父様…」」」
私は本当に情けないな。こんなにも家族に心配をかけてしまっている。
「そのことについて我から話がある。先程のサロンとらやで話そう。奥方よ、先にエルを寝かてせくるがよい。
あと、先程のメンバーと、料理長のバメイを呼べ。全員が揃ってから話をはじめる。
エミリーよ、我を抱えてサロンへ連れて行け」
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いったい何が待ち受けているのだろうか…。
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