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第三章

やっぱり家族会議①

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〈父親:フリッツィSide〉



コンコンコンッ

「入りたまえ」

「失礼致します。部長、資料をお持ちしました」

「ああ、ありがとう。机の上のボックスに入れておいてくれ」

「かしこまりました」

部下が資料を置いて下がっていく。
山のように積まれた資料を見てため息が出る。
騎士団や魔術塔などの各部署から上がってくる予算申請だ。それらを精査して、然るべき予算をおろす。それが私の仕事だ。

しかし、各部署から上がってくる予算申請書はヒドいのもだ。計算が間違っていたり、指定の項目が抜けていたり…。
間違っている箇所を指摘し、ひとつずつ丁寧に説明をするが、一度として完璧な書類を見たことが無い。
何なんだろう。アイツらの頭の中は何で出来ているんだろうか?筋肉か??お花畑か??いや…、両方なんだろうな…。

あぁ…、癒やしが欲しい。今すぐ家に帰って息子や娘達に会いたい。特にエルシーア。あの子はいろいろやらかしはするが、我が家の天使だ。
思い出したら帰りたくなってきた。もう帰ってやろうか?

城全体が、明日に迫ったお披露目の儀式の準備に向けてざわめいているが、財政部には関係ない。明日の準備に必要な予算はとっくにおろしたのだから。
椅子の背もたれにもたれかかり、小休憩のコーヒーを飲みながら、そんな事をつらつらと考える。

──ホー、ホー ホッホッ

1匹の白い梟が窓ガラスを通り抜けて入ってくる。
我が家の緊急連絡用の魔法でできた梟だ。
私の頭上を旋回し、机の上へと舞い降りる。
梟が口を開け、

「ピーーーッ。一件のメッセージを再生します。

旦那様。セバスにございます。至急、我が家へとお戻りください。“家族会議”でございます。

ピーーーーッ。メッセージを再生を終了しました」

必要なメッセージを告げると消えた。
セバスからの緊急連絡を受けて、急いで帰る支度をする。
バンッ!!!!自分に与えられた執務室の扉を開ける。

「すまない。私は緊急の用事ができたので、今日はもう帰る。後はよろしく頼む」

「か…かしこまりました」

部下にひと言告げると、城の地下にある転移ゲートへと急ぐ。
城にある転移ゲートは限られた者しか使えないが、王の許可を受け、領地にある我が家の地下とタウンハウスの地下に繋がっている。

移動しながら考える。
家族会議…。エルシーア、君はまたやらかしたんだね。
魔力操作に精霊との意思疎通。ペルル殿との従魔契約に、クリスタルできた神像。マンドラゴラに精霊樹。最近では裏庭にとんでもない庭池を造っていたな…。
後はウィルとバル、ルイーザになんかスゴい効果を持ってそうなアクセサリーを錬金術で造っていたな。私にはなかったけど…。

王都にあるタウンハウスには明日移動するのにいったい何をやらかしたのやら。
まったく…。毎日が新鮮だよ。

『ヴァイマル領へと移動』

さぁ、我が家に着いたら今日は何が待っているのだろう。


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