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第一章
プロローグ①
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トゥルル…トゥルル ピッ
「あっ、もしもし、紗代姉、元気か?」
田舎の実家に住む、弟の大和からの電話に出る。
「大和ぉ…全然元気じゃない…もうダメだ…わたしはもうダメ…」
これでもう何連勤中だ??
自分しか残っていないオフィスのフロアを見渡しながらぼんやりと思う。
雪深い東北の田舎では就職活動ができないからって大都市に来たのはいいけど、仕事仕事で休みが無い…。
年齢はもうアラフォーになり、中間管理職になったものの、下からはつき上げられ、上からは押さえつけられ、毎日栄養ドリンクと胃薬にお世話になる日々…。
仕事の日は職場と家の往復、休みの日には泥のように眠って、気がつけば年齢=おひとり様歴となってしまった…。
「おいおい、紗代姉、しっかりしてくれよ。去年のGWもお盆も、今年の正月だって実家に帰って来なかっただろ。湊(大和の息子)通じてさぁ、いつきとみつきが”紗代はいつになったら帰ってくるんだ”って騒いでてうるさいらしいんだよ…」
「あぁぁ~っ…湊くんは、いつきちゃんとみつきちゃんがちゃんと見えるんだねぇ~」
突然だが、みなさんは座敷わらしをご存知だろうか?
そう、座敷童子(ざしきわらし)は、主に岩手県に伝わる妖怪。 座敷または蔵に住む神と言われ、家人に悪戯を働く、見た者には幸運が訪れる、家に富をもたらすなどの伝承があるアレだ。
わたしの実家は、東北の雪深い田舎で由緒正しい(?)代々続く家である。
そしていつきちゃんは男の子の、みつきちゃんは女の子の座敷わらしで、大体5歳位の姿をしている。
物心つく頃からずっと一緒にいて、兄妹のように育ってきたが、伝承どおり大人には見えない。だが、ウチの家をずっと見守ってくれているらしく、見えなくても家族はいつきちゃんとみつきちゃんを大事にしている。
ちなみに「いつきちゃん」「みつきちゃん」と名前をつけたのは、わたしだ。それまでは「お座敷さま」と呼ばれていたらしい。
「ンで、紗代姉はいつ帰ってくるんだよ?今もいつきとみつきがギャアギャア騒いでるみたいだぞ」
「そっかぁ~、いつきちゃんもみつきちゃんもちゃんとわたしの事を今も覚えていてくれて、見守ってくれてるんだねぇ…懐かしいなぁ~」
「何、しみじみババ臭いこと言ってんだよ。ンで、いつ帰って来るんだ?今、何時いつ帰るってちゃんと決めて教えろって、いつきとみつきが言ってるぞ」
「あぁんっ⁉こちとらアンタと違ってアラフォーの立派なババァ…って、オイこら何言わせて─
ピキッ、ピキッ…ピキッピキッ…、バァァァ~~ン‼‼‼
えっ……………」
グシャッ…ドサ…ッ
「おいっ‼おいっ⁉紗代姉っ‼紗代姉ぇぇ~っ⁉」
「あっ、もしもし、紗代姉、元気か?」
田舎の実家に住む、弟の大和からの電話に出る。
「大和ぉ…全然元気じゃない…もうダメだ…わたしはもうダメ…」
これでもう何連勤中だ??
自分しか残っていないオフィスのフロアを見渡しながらぼんやりと思う。
雪深い東北の田舎では就職活動ができないからって大都市に来たのはいいけど、仕事仕事で休みが無い…。
年齢はもうアラフォーになり、中間管理職になったものの、下からはつき上げられ、上からは押さえつけられ、毎日栄養ドリンクと胃薬にお世話になる日々…。
仕事の日は職場と家の往復、休みの日には泥のように眠って、気がつけば年齢=おひとり様歴となってしまった…。
「おいおい、紗代姉、しっかりしてくれよ。去年のGWもお盆も、今年の正月だって実家に帰って来なかっただろ。湊(大和の息子)通じてさぁ、いつきとみつきが”紗代はいつになったら帰ってくるんだ”って騒いでてうるさいらしいんだよ…」
「あぁぁ~っ…湊くんは、いつきちゃんとみつきちゃんがちゃんと見えるんだねぇ~」
突然だが、みなさんは座敷わらしをご存知だろうか?
そう、座敷童子(ざしきわらし)は、主に岩手県に伝わる妖怪。 座敷または蔵に住む神と言われ、家人に悪戯を働く、見た者には幸運が訪れる、家に富をもたらすなどの伝承があるアレだ。
わたしの実家は、東北の雪深い田舎で由緒正しい(?)代々続く家である。
そしていつきちゃんは男の子の、みつきちゃんは女の子の座敷わらしで、大体5歳位の姿をしている。
物心つく頃からずっと一緒にいて、兄妹のように育ってきたが、伝承どおり大人には見えない。だが、ウチの家をずっと見守ってくれているらしく、見えなくても家族はいつきちゃんとみつきちゃんを大事にしている。
ちなみに「いつきちゃん」「みつきちゃん」と名前をつけたのは、わたしだ。それまでは「お座敷さま」と呼ばれていたらしい。
「ンで、紗代姉はいつ帰ってくるんだよ?今もいつきとみつきがギャアギャア騒いでるみたいだぞ」
「そっかぁ~、いつきちゃんもみつきちゃんもちゃんとわたしの事を今も覚えていてくれて、見守ってくれてるんだねぇ…懐かしいなぁ~」
「何、しみじみババ臭いこと言ってんだよ。ンで、いつ帰って来るんだ?今、何時いつ帰るってちゃんと決めて教えろって、いつきとみつきが言ってるぞ」
「あぁんっ⁉こちとらアンタと違ってアラフォーの立派なババァ…って、オイこら何言わせて─
ピキッ、ピキッ…ピキッピキッ…、バァァァ~~ン‼‼‼
えっ……………」
グシャッ…ドサ…ッ
「おいっ‼おいっ⁉紗代姉っ‼紗代姉ぇぇ~っ⁉」
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