上 下
2 / 5
就任するのは甘くない

まずはギルドに行こう

しおりを挟む
 またまた目を覚ますとそこは日本とは全く違う見知らぬ土地で俺は立っていた。
「ここが……異世界なのか」
 自分が本当に異世界にいるのか実感がまだ持てていないが、目の前の木やレンガの家、道脇に八百屋のような店があり、まるで中世にきたかのような雰囲気だった。
 しかし、賑わう雰囲気の中、明らかに服ではなく装備と呼ぶにはふさわしい人もいる。
 ……どうやら本当に異世界にきたようだ。

「そうだ!たしかイリアさんから何か紙をもらったような……」
 と服のポケットを弄って中にはさっきもらった紙とお金を取り出す。
「なになに?『イリアの初心者異世界ライフについて』だと?ええーと」
 
 その中に書いてあることをまとめると、どうやら俺はアーリアという町にいるらしい。
 まず俺はギルドというところで自分の戸籍のようなもの、ギルドカードというものを作り、自分のステータスを確認する。基本はそのステータスにあった職に就くらしい。
 冒険者なんかは筋力や走力が高い、また知力とMP(マジックポイント)が高いと剣士や魔法使いになりやすいそうだ。
 教師に向いている人のステータスは知力と……筋力?冒険者向けの教師……ってことなのかな?
「まっ、とりあえずギルドに行ってみるか」
 ご丁寧にイリアさんから貰った紙に地図が書いてあったので迷うことはなかった。



「おーーーーすごいな……」
 ギルドの前に来るとかなりでかい建物だとわかった。この中でギルドカードを手に入れるんだよな。
「う、結構緊張するなーー」
 この緊張は受験の時の面接に入る前に似ている気がする……
 深呼吸して落ち着いてーー
「何かお困りですか?」
「うおっ!?」
 突然背後から声をかけられて変な声を上げてしまった。
「い、いいえ!あ、怪しいものじゃなくてですね!その、ここの……」
「クス、敬語じゃなくて大丈夫ですよ。新しく登録される方ですよね?あ、私はマリンというものです。」
 どうやら俺のことを不審者とは思ってないらしい。見たところマリンは10歳くらいの女の子に見える。黒髪が似合うとても可愛い子だ。
「あ、うん、そうなんだよ。ここに登録しないと生きていけないぞーーで言われてね。でもなんか変に緊張しちゃって……あ、俺の名前はユウマっていうんだ」
「ユウマさんですか!いい名前ですね!」
「そうかな?ありがとう、マリンもとっても可愛くていい名前だと思うよ」
「そ、そうですか?そんなこと言われたの初めてですよ」
 マリンは顔を赤くして照れてもじもじしている。でもすぐにはっとして俺の顔を見る。
「ユウマさんはここにくるのは初めてなんですよね?どこか遠いとこからきたのですか?」
「ああ、かなり遠くの遠くの場所からね」
 まさか日本なんて言ってもわかるわけないし、これからも田舎ということにしておこう。
「そうなんですかーーまま、立ち話もなんですしギルドに入りましょう!!」
「おっ、おう」
 マリンに手を引っ張られてようやく俺はギルドに入ることができた。
 ……ちょっと情けないな




「おーーすっげぇなーー」
 ギルドの中にはたくさんの人がいてみんなお酒を飲んだり、クエストの話をしているようだった。なんかこういう雰囲気は新鮮で楽しい。
「ここが登録所なんだけど……ユウマさんメルト持ってる?」
「メルト?ああ、お金のことか?」
 イリアさんから貰った紙に書いてあったな。このメルトっていうお金はだいたい日本と同じくらいの価値を持つと思っていいらしい。
「ええっと、だいたい1万メルトぐらいかな?」
「あっ!それなら大丈夫です。手数料がかかるんですが3千メルトだから足りますね!じゃあいきましょーー!!」
 良かった。ここで足りなくて詰むとかなくて……


「初めまして、初めて登録される方ですか?」
「はい、ダテ ユウマと申します」
「では、ユウマさん。まずは手数料として3千メルト必要なのですがありますか?」
「はい、ここに」
 とお金を渡す。どうやらちゃんとたりたようだ。
「はい、確かにいただきました。では早速ギルドカードを作りましょう!」
「わかりました、お願いします!」
 そういうと俺の下に魔法陣が現れる。
 数分待つと
「はい!お疲れ様です。出来上がりました!見てみてください」
「はや!?どれどれ?」
「私にも見せてよーー」
「ほれ、基準がわからないからどんなもんか見てくれよ」
 マリンと一緒にギルドカードを見ると知力の数字が3桁で高そうだがそれ以外はどうなんだ?
「マリン?これどう思う?」
 マリンの方を見るとなんか笑いをこらえているように見える。
「……おい、どうした?」
「い、いえ!ただ、そのーー頑張ってください!」
「えーー!?なんだよその感じ?もっとはっきりしてくれよ」
「……いいんですか?怒らないでくださいよ?」
「うん、大丈夫大丈夫」
「では私からの評価ですが……まず、筋力や走力なんかの冒険者の基本ステータスが平均値どころか12歳の私の半分以下で相当やばいってことと、なぜか知力がカンストするくらい高いのにMPがこれまた低いっていうのがおもしろ……いや不思議で、はい。はっきり言ってゴミですね」
「ご、ゴミーーーー?!」
 想像以上に馬鹿にされた!
「くそ!お前のも見せてみろ!」
「ど、どうぞ」
 どれどれ、俺のと比較すると…………
「知力以外まけてんじゃねーーーーーーーーーかーーーーー!!!!」
 ここまで差が出るとは……
「言っておきますけど私はこれでもかなり低い方ですよ?ユウマさん相当ひ弱ですね……」
「もうやめて、引きこもって勉強とゲームしかしてこなかったんです……」
 くそーー、もう少し筋トレとかやってれば良かったな……
「ま、まぁでも?俺はこの町で教師になることが夢だし?筋力とかどーーーーーーでもいいし?むしろ知力が高くて、マジ感謝って感じだわーー!!」
「えっ?教師ですか?あれ?でも確か教師になるためには……」
「とりあえずありがと!教えてくれて、少ないがお礼だ。じゃ、またどこかで会えたらなーー!!」
 そう言って俺は逃げるようにギルドを出た。
「あっユウマさん!ギルドカード忘れてますよーーーー!!」
 そして、戻ってきた。
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転生しても山あり谷あり!

tukisirokou
ファンタジー
「転生前も山あり谷ありの人生だったのに転生しても山あり谷ありの人生なんて!!」 兎にも角にも今世は “おばあちゃんになったら縁側で日向ぼっこしながら猫とたわむる!” を最終目標に主人公が行く先々の困難を負けずに頑張る物語・・・?

神に同情された転生者物語

チャチャ
ファンタジー
ブラック企業に勤めていた安田悠翔(やすだ はると)は、電車を待っていると後から背中を押されて電車に轢かれて死んでしまう。 すると、神様と名乗った青年にこれまでの人生を同情された異世界に転生してのんびりと過ごしてと言われる。 悠翔は、チート能力をもらって異世界を旅する。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

スマートシステムで異世界革命

小川悟
ファンタジー
/// 毎日19時に投稿する予定です。 /// ★☆★ システム開発の天才!異世界転移して魔法陣構築で生産チート! ★☆★ 新道亘《シンドウアタル》は、自分でも気が付かないうちにボッチ人生を歩み始めていた。 それならボッチ卒業の為に、現実世界のしがらみを全て捨て、新たな人生を歩もうとしたら、異世界女神と事故で現実世界のすべてを捨て、やり直すことになってしまった。 異世界に行くために、新たなスキルを神々と作ったら、とんでもなく生産チートなスキルが出来上がる。 スマフォのような便利なスキルで異世界に生産革命を起こします! 序章(全5話)異世界転移までの神々とのお話しです 第1章(全12話+1話)転生した場所での検証と訓練 第2章(全13話+1話)滞在先の街と出会い 第3章(全44話+4話)遺産活用と結婚 第4章(全17話)ダンジョン探索 第5章(執筆中)公的ギルド? ※第3章以降は少し内容が過激になってきます。 上記はあくまで予定です。 カクヨムでも投稿しています。

神様のお楽しみ!

ファンタジー
 気がつくと星が輝く宇宙空間にいた。目の前には頭くらいの大きさだろうか、綺麗な星が一つ。    「君は神様の仲間入りをした。だから、この星を君に任せる」  これは、新米神様に転生した少年が創造した世界で神様として見守り、下界に降りて少年として冒険したりする物語。  第一章 神編は、三十三話あります!  第二章 婚約破棄編は、二十話しかありません!(6/18(土)投稿)  第三章 転生編は、三十三話です!(6/28(火)投稿)  第四章 水の楽園編(8/1(月)投稿)  全六章にしようと思っているので、まだまだ先は長いです!    更新は、夜の六時過ぎを目安にしています!  第一章の冒険者活動、学園、飲食店の詳細を書いてないのは、単純に書き忘れと文章力のなさです。書き終えて「あっ」ってなりました。第二章の話数が少ないのも大体同じ理由です。  今書いている第四章は、なるべく細かく書いているつもりです。  ストック切れでしばらくの間、お休みします。第五章が書き終え次第投稿を再開します。  よろしくお願いしますm(_ _)m

異世界に飛ばされたおっさんは何処へ行く?

シ・ガレット
ファンタジー
おっさんが異世界を満喫する、ほのぼの冒険ファンタジー、開幕! 気づくと、異世界に飛ばされていたおっさん・タクマ(35歳)。その世界を管理する女神によると、もう地球には帰れないとのこと……。しかし、諦めのいい彼は運命を受け入れ、異世界で生きることを決意。女神により付与された、地球の商品を購入できる能力「異世界商店」で、バイクを買ったり、キャンプ道具を揃えたり、気ままな異世界ライフを謳歌する! 懐いてくれた子狼のヴァイス、愛くるしい孤児たち、そんな可愛い存在たちに囲まれて、おっさんは今日も何処へ行く? 2017/12/14 コミカライズ公開となりました!作画のひらぶき先生はしっかりとした描写力に定評のある方なので、また違った世界を見せてくれるものと信じております。 2021年1月 小説10巻&漫画6巻発売 皆様のお陰で、累計(電子込み)55万部突破!! 是非、小説、コミカライズ共々「異世界おっさん」をよろしくお願い致します。 ※感想はいつでも受付ていますが、初めて読む方は感想は見ない方が良いと思います。ネタバレを隠していないので^^;

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

おばさん、異世界転生して無双する(꜆꜄꜆˙꒳˙)꜆꜄꜆オラオラオラオラ

Crosis
ファンタジー
新たな世界で新たな人生を_(:3 」∠)_ 【残酷な描写タグ等は一応保険の為です】 後悔ばかりの人生だった高柳美里(40歳)は、ある日突然唯一の趣味と言って良いVRMMOのゲームデータを引き継いだ状態で異世界へと転移する。 目の前には心血とお金と時間を捧げて作り育てたCPUキャラクター達。 そして若返った自分の身体。 美男美女、様々な種族の|子供達《CPUキャラクター》とアイテムに天空城。 これでワクワクしない方が嘘である。 そして転移した世界が異世界であると気付いた高柳美里は今度こそ後悔しない人生を謳歌すると決意するのであった。

処理中です...