言えない言葉

Kokonuca.

文字の大きさ
5 / 169
言えない言葉

4

しおりを挟む




「寝入り端だったのですが」 

 責める調子に罪悪感も沸いたが、無表情で非難された事にかちんときた。 

「別に騒ぎ立てた訳じゃなし!嘉納先生は繊細なことですねっ 忘れ物を取りに来ただけですし、もう帰りますから!」 

 離して下さいと言う前に、オレが腕を引く力を上回る力強さで引っ張られ、踏ん張る事が出来ずに嘉納の上に倒れ込んだ。 

 どっとした衝撃と、人体と言う柔らかな感触を感じて暴れるも、携帯電話を持つ手も掴まれて封じられてしまう。 

「な、な、な…なに……」 

 オレを胸の上に乗せたまま、深い呼吸が繰り返される。 
 嘉納が息を吐く度にミント系の香りがし、こめかみの辺りの毛がそよぐでくすぐったい。 

「あ、あの…先生…?寝惚けて らっしゃるんですか?」 

 両腕を掴む力は強く、到底寝惚けているとは思えなかったが念の為に訊ねてみた。 

 …が、相も変わらない無表情でこちらを見下ろすだけだ。 
 居心地悪さに体を起こそうとするがそれも叶わない。 

「あのっ────!?」 

 怒鳴ろうとした瞬間、ぐぃと力を加えられ、嘉納は体を捻るようにした。 
 結果…嘉納に見下ろされる形になって目を瞬いた。 

 ぎゅうっと、お世辞にも寝心地がいいとは言えない仮眠ベッドに押さえつけられ… 
 はっきり言って何がなんだか分からない。 


 寝入り端を邪魔したから… 

 殴られるんだろうか? 


 仏頂面はそう思わせるには十分で… 

 ごくっと喉が鳴った。 



.
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

さっちゃんと僕

BL
今でも、思い出せる、僕の小学生、中学生の時の体験談を小説風にしてみました。 内容は、多少の脚色が入っていますが、ほぼ実話です。

隣の親父

むちむちボディ
BL
隣に住んでいる中年親父との出来事です。

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

薔薇摘む人

Kokonuca.
BL
おじさんに引き取られた男の子のお話。全部で短編三部作になります

男の娘と暮らす

守 秀斗
BL
ある日、会社から帰ると男の娘がアパートの前に寝てた。そして、そのまま、一緒に暮らすことになってしまう。でも、俺はその趣味はないし、あっても関係ないんだよなあ。

処理中です...