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落ち穂拾い的な クラドの謝罪
しおりを挟む「あ……ロニフさ……お義母様」
いまだに慣れない呼び方で呼ぶと、ロニフも慣れないと言いたげにわずかに首を傾げる。
「閣下の御戻りがないのが気にかかりますか?」
ここは私的な場所だし、孫と遊んでいるのだから少しは砕けてもいいのに と思いながら素直に頷いてみせた。
「それなら御心配には及びません」
そう言ってさっと顎を上げて耳を澄ます姿勢をとったロニフは、さっとオレに向き直ると「閣下が戻られたようです」と教えてくれた。
それからずいぶんと経って、ヒロが遊び疲れて寝てしまった頃になって足音が聞こえ来た。
足音は二人分で……だから最初はクラドじゃないのかなって思ったけど、話し声も聞こえて思わず扉に駆け寄って部屋から飛び出す。
「クラド様っ!」
「っ⁉︎ 走ったら駄目だろう⁉︎」
思わず抱き留めようとしたのか手を出したクラドがそう怒鳴る。
「あっすみません ……だって、やっとおかえりになったか 」
オレの言葉はクラドの背後から聞こえた「ふふふ」と言う柔らかな笑い声に止まってしまった。
「落ち着かないと、お腹の赤ちゃんがびっくりするわよ」
そう言ってクラドの後ろからひょっこりと顔を出した女性に、オレは思わずあんぐりと口を開けた。
だってその人はここになんていないはずの人で、巫女になっちゃったオレは勝手に出歩けないからもう会うことはできなくて、手紙でしかやり取りできないんだろうなって思っていた人だったからだ。
「 ……マテル?」
記憶にあるよりも少し小さくなったような気がするけれど、それでも元気そうににっこりと笑って手を広げてくれるから、オレは泣きつくようにその腕に飛び込んだ。
ヒロの寝顔を見ながらマテルは感極まったように鼻声で「大きくなりましたね」と嬉し気に繰り返す。
「新しい御子様も……おめでとうございます」
そう深々と頭を下げるマテルに慌てて下げないでくれと頼み込む。
マテルはオレがテリオドス領でヒロを産んだ時、本当にきめ細やかに気を使ってくれたし、一緒に暮らして世間知らずだったオレにいろいろなことを教えてくれた人で、恩人と言ってもいい人だったからだ。
「いいえ、巫女様と知らなかったとは言え、数々の御無礼を……」
「だ、だから そんなこと言わないで……」
マテルに距離を取られてしまうと悲しくて……
鼻の奥がツンと痛んで泣き出してしまいそうになる。
「けれど……」
「マテル、私は謝罪のために連れてきたのではない」
今にも二人でおいおいと泣き出しそうな雰囲気に、クラドが割って入ってくれた。
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