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落ち穂拾い的な スティオンの立場
しおりを挟む「ああもう、鬱陶しい、寄るな!」
「そんなこと言わず、英雄様なんだから愛想よくしてくださいよ?」
そう言って白衣の前をたゆんと揺らすスティオンは、ゴトゥス山脈での時のような真剣な雰囲気は消え去っていて、いつもののらりくらりとした様子に戻っていた。
「それを言うならお前だって、二次ゴトゥス戦の英雄だろう?」
「私は医師として参加しただけですのでねぇ」
「騎士団の服を着ていたくせに」
そう言われるとばつが悪いのか、スティオンは肩を竦めて「あーあ」と言って椅子に腰かける。
一部は驚くほど大きいけれど、それ以外はほっそりとして華奢とも思えるスティオンに抱えて走られたのを思い出して、オレは不思議でたまらない顔をした。
「どうかれました?」
「あ、その スティオン様は医師ですのに、どうして騎士団の制服を?」
「どうでもいい話だ!」
そう珍しくクラドが大きな声を上げた。
こう言った会話には積極的に絡んでは来ないけれど、無口なりに返事はするだけだったのに……
「それは私が騎士団に所属していたからですよ?」
「騎士見習いは騎士団じゃない」
またもきつい物言いだったせいで、オレはびっくりしてしまって目を瞬いた。
クラドがこんな態度を取るのはスティオン以外にはいないから、それで余計に驚いているんだと思う。
何か原因があるのかとそろりとクラドを窺ってはみるけれど、こちらはすっかり頭に血が上っているのかきちんとした答えは貰えなさそうだ。
仕方なくスティオンに視線をやると、きらきらとした金色の目と視線が合った。
「あ! クラド様! ヒロ様のおやつをもらってきてもらえませんか? そろそろその時間でしょう?」
「ああ、ここを出て温室で食べる予定だ」
「もう少しはるひ様のお腹の音が気になるので、先にヒロ様を連れてアイスなど食べてらしてください」
そう言うスティオンの言葉にクラドは難色を示そうとしたが、さっと腕の中にいたヒロが手を上げて「あいちゅ」と大きな声で宣言した。
スティオンの言葉の中に、最近のお気に入りのおやつの名前を聞いてしまったヒロはもう止まらない。
全力で「あいちゅ!」と叫んでは、クラドの腕から抜け出そうとして暴れ始める。
「 ちょ、ヒロ、おちつきなさ「あいちゅ!」から、ほ「あいちゅ!」なんだ、な?わかるだ「あいちゅ!」」
繰り返される「あいちゅ!」攻撃にクラドはどうやら折れたらしい。
ヒロを下ろすと手を引いて扉の方へと歩いて行くが、その前にクラドがさっと振り返った。
「いいか! おかしなことを「あいちゅ!」はるひに言うな「あいちゅ!」よ!」
そう締まらない言葉を残して出ていく。
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