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おまけ 151
しおりを挟む銀縁の奥の冷やかな目を向けられて、本能的にさっと視線をそらして膝にやってしまった。
これは、兄の話が終わってから聞くべき案件だ と思い、できるだけ気配を消すようにしようと肩を竦める。
「はるひ ……様は一緒では?」
「体調がすぐれないと言っていてな、先に医局に寄ってからかすがと一緒に来るそうだ」
「ゴトゥスから帰られて……ひと月ですか、よほどショックだったのでしょう」
冷ややかそうだったエルの視線が少し和らいだことにほっと胸を撫で下ろす。
「秘匿された巫女だったと知らされて、その心労は我々には図ることのできないものでしょうから」
「ああ……」
今回、最終的にはるひを隠し続けるのは無理と判断した王家とコリン=ボサを祭る教会で話し合った結果、はるひはそう呼ばれることになった。
はるひが巫女であることをどうして隠していたのかと言うことで会議は紛糾したらしいが、最終的にかすがが「弟を守るためだった」の一言で落ち着いた、これには普段からのかすがのはるひへの過干渉が効いていたのか、反論らしい反論も出ないままそう言うことか と解決したので大した問題にはならなかった。
残された問題で解決しなかったのは、その巫女の今後についてだ。
「 さて、クラドが来たのは秘匿の巫女の身柄についてだろう?」
スティオンからの報告書に目を通し終えたのか兄が顔をしかめたままで姿勢を変える。
大柄な虎獣人のせいかそうすると椅子が悲鳴を上げるようにギィギィと鳴って、エルが茶を飲む音をかき消すように響く。
すでに既婚者である巫女を巡っては話し合いでも決着がつかないままで……
「兄上っ」
腹から出した声に二人ともぴくりと反応を見せる。
今にも寝てしまいそうになる耳をしっかりと立て、真っ直ぐに兄に向って顔を向けた。
「私ははるひを愛しています、今後これ以上深く愛することはあっても手放すつまりは毛頭ありません。例えそれが兄上の命であってもっ全力で抗います! はるひは私の命も同然のすべてです! はるひも、はるひと愛し合ってできたヒロについても、何一つ、王である兄上にも……例えコリン=ボサにも譲る気はありません!」
「それで? お前はどうすると?」
優雅に顎を上げて問いかけてくる姿は上に立つものらしい圧を含んでいて、冷え冷えとした目に見下ろされただけですくんでしまいそうになる。
味方につけばこれ以上ない頼もしい人物だったが、敵対されれば睨まれただけで委縮してしまう、なんとも厄介な相手だ。
「はるひを譲れと言うのなら、私は戦います」
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