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おまけ 148

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 それがはるひの緊張の糸を切らないための方法だとわかってはいただけに、苦しい思いをさせてしまったことは否めない。

「おかえり、はるひ」
「  っ、か、帰りましたっ……か、えって……これた……」

 そう言うとはるひはほとほとと泣きながら何かを言いそうになっては口ごもる。
 まるでそれを口に出してしまうと、また恐ろしいことが起きてしまうのではないかと心配しているようで、俺は宥めるために優しく背中を擦った。
 
 俺がゴトゥス山脈に着くまで何があったのかは推測するしかないことだ。
 はるひの身に何が起こったのか、すべてを知りたいと思いもするがそれは俺の勝手でしかない、辛い記憶を喋れと言われることがどれほど苦行かを知っているのは俺自身で、共有して和らぐものは共有すればいいし、時間をかけて柔らかに包み込まねばならない記憶はそうするべきだと思う。

 はるひが話せるようになるまでは、こうして抱きしめてやればいい。

「よく頑張った」
「 っ……追いかけてきてくれて、ありがとうございます」

 ぼろぼろと零れる涙を舐めとってやると、びっくりした顔をしてふにゃりと笑い崩れる。
 それでもやはり涙は止まらなくて、俺ははるひの気の済むまで宥め続けた。




 ヒロに会いに行こうと言う俺に、はるひは怯えるような目を向けた。
 はるひがヒロに向ける愛情を知っているだけに、一番に会いに行きたがると思っていた俺は肩透かしを食らった気分だ。
 
 俺を見て更にはるひに会いたがったヒロを知っているだけに、少しでも早く顔を見せてやりたかったが……

「オレ、あの時にヒロの手を離してるんです」

 怯えるように小さくなって立ちすくむ姿は、こちらの世界に来てすぐのはるひを思わせる。
 突然の異世界に、知らない言葉に、頼る兄もいっぱいいっぱいなのを感じ取ってかじっと石のように固まっていたあの姿は、幾らコリン=ボサのお召しとは言え小さな子に無体を強いたものだと考えさせられた。

「ヒロが、オレが捨てたみたいに思われてたらどうしたら……」
「そんなわけないだろう? はるひはあの時正しい選択をした、子供を守るためならば俺だってミロク様にヒロを託したはずだ」

 母が敗れた段階でヒロを守る手段は本来ならばなかったはずだ。
 あの魔人がはるひに固執してくれたからこそヒロは無事で……それを叶えたのははるひがヒロをミロクに預ける選択をとっさにとってくれたからだった。

 もし、あのままヒロを抱えた状態だったなら、あの魔人はヒロを生かしておいたのか……?

 ぞっとする考えを振り払うために俺ははるひの前にひざまずいた。


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