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おまけ 132
しおりを挟むもう少し腹の探り合いや手回しを覚えていたならば、はるひの捜索の段階で騎士団を引き連れて行くこともできたかもしれない。
そんなできなかったことに対する反省ばかりを胸中で繰り返しながら、振り下ろされる触手を躱して魔人の正面へと駆け寄った。
口が柔らかかったのならば、目もそうだろう。
睨みつけた先には一抱えほどもありそうな金属でできたかのような目が二つ並んでいた。こんな状況だと言うのに、その魔人にはやはり元となった鹿獣人の顔の特徴が残っていて、彼を知っている人間が見たらはっとするだろう容貌をしている。
「目をっ潰す!」
ルキゲ=ニアのように重量もなければ頑丈さもない俺の長剣では、幾ら大きいサイズの剣だと言ってもあの触手を受けるのは無理だった。
母からの教えを脳裏に幾度も浮かべながら、逸らし、流し、相手の力の向きを変えながら一気に金属色の目に向かって切りかかる。
この攻撃が通らなければ、
いや、
通らなくともこれが最後だろう、
手応えを感じながら振り抜きつつそんなことを思っていた。
目を切られた魔人の怒りは俺に向き、触手の一斉攻撃が来るだろう、けれどその間に隊の者が逃げてくれれば……せめて、一人だけでも帰り着いてくれれば……
「あああああああっ!」
「ぃ゛ ぃ゛い゛い゛い゛! ぁ゛っや゛ や゛や゛や゛ !!!!!!!!!!」
真っ二つに割れた虹彩がずるりとずれて俺を映した瞬間、絶叫が響いて耳がその音以外を拾わなくなった。
極まりすぎた大音声は逆に俺から音と言う音を奪い去って……
三半規管が狂ったのか目が回るような感覚に思わず天を仰いだ。
──────── ぽつん
耳が聞こえないからか、それが肌に触れた瞬間の衝撃が凄まじすぎて飛び上がりそうになった。
雫 だ。
雨が降り始めたのだ と、凪いだ心の部分で雪じゃなくてよかった……と馬鹿なことを考える。
ぽた ぽた とほんのわずかずつ降り始めたそれが、ざぁっと軍団で天から落ちてくるのはあっと言う間のことで、顔を濡らされて頭が冷えたのかはっと視線を隊の者へと向けた。
幾度も瘴気に絡められたからか隊の者の手足だけに留まらず、全身に黒いシミが浮き上がっており、まるで元からそう言う肌だったんだと言われても信じてしまいそうなほどだった。
雨はそんな隊員達の頭上にも降り注ぎ始め、皆の顔を曇らせる。
濡れて体温の低下を招き、足元を緩ませて歩行を困難にしてしまうだろう。
けれど俺には、その雨がどうしてだか染み入るように感じ取れたから……
「……はは、温かいな 」
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