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おまけ 129
しおりを挟む「ぐ っ……こ、のっ……」
ぐぐっと魔人の口の中へ差し込んだ長剣でこじ開けるように力を込めた。
「剣が抜けたら退避する者達の援護をお願いします! その剣でなら薙ぎ払えるでしょう!」
「お前は⁉︎」
剣を引き抜きながらこちらを見るダンクルの首に下がっている笛を奪い取り、さっと口に咥える。
「何をするっ⁉︎」
「見つけました」
「なに……」
「ここです、口の中は柔らかい」
そう言った俺に、ダンクルは正気か? と言う表情を向けた。
剣が引き抜かれた後、ダンクルは退避するものだとばかり思っていたのに……
どぉん と派手な音を立てて触手がぶつかってきても、ルキゲ=ニアを盾にすれば難なく防ぐことができる。
「下がってください! 刺したらすぐに逃げないといけない!」
「じゃあ刺すまで援護がいるだろう?」
泥とかすり傷だらけではあるがダンクルは元気そうに言って走り出す、仕方なく後ろから追い越し、短剣を構えて魔人の正面へと踊り出た。
まるで怒り狂った牛のようにこちらへと突進してくる魔人の顔に……ダンクルがルキゲ=ニアを炸裂させ……
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ! ぇ゛ず でぇ゛ー……っ」
重量のある剣で殴られたためか魔人の声が甲高く上がり、小さな子供がぐずるようにエステスの名前らしきものを呼びながら叫び出す。
大きく開けられたそこに向けて……
渾身の力を込めて短剣を投げつけた。
「 ────!」
わずかに歯にはかすったものの、大きく開けられていた口の中へ飛び込んでいった短剣は喉の奥に消える。
刺さることはなかっただろうが体内に入っていってくれた……とダンクルとアイコンタクトをとる、この巨木のようなサイズになってくれないとできない事柄だっただけに、これならば抜けることはないだろうと達成感を胸に走り出す。
ミロクの力が落ちてきても大丈夫な距離を取って、後は笛を吹くだけだ……と思った時だった。
ぼとん
またあの音だ と、心の隅に引っ掛かった。
「ダンクル! 待て!」
退避の列に駆け寄ろうとしたダンクルを呼び止め、ざっと空を見上げた。
ぼとんと音がするのだから空から落ちてきているのだろうと……けれど実際は下げた視線、地面を見つめる目の前での出来事だった。
黒く細いイトミミズのようなものが絡みあいながら這い出し、それが勢いよく飛び出して地面に転がるとそれがぼとん と音を立てる。
産まれている。
ぼとんぼとん ぼとんぼとんぼとんぼとん ぼ…………
魔物と瘴気に覆われていると言うのに、更にまだ瘴気が増えている?
退却をしようとしていた者達の足が止まり、じりじりと押されるようにこちらへと押し戻される。なぜなら行く先には大量の瘴気でびっしりと覆いつくされていたからだった。
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