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おまけ 74
しおりを挟む左手は急に縛りから解放されたせいか一気に熱を持ったようで、じくじくとした痛みと共に金臭い臭いが鼻をついた。
後右腕……だけれども片腕だけが自由になればそれでよかった。
血は流れてはいたけれど動かす分には支障のない左手を後ろにやって、そこに差し込んでいたナイフを取り出す。大ぶりなものではなくて、華美な装飾をされた明らかに普段使いに使うようなものではなかったけれど、刃物だった。
襲撃の際、ランプの芯を整えなければ……と手に取っていたのが幸いしたらしい、とっさに腰に隠すように差し込んでいたこれは、エステスに見つからなかったみたいでほっと胸を撫で下ろす。
値段なんて考えてもどうしようもないことを思いながら、銀色のナイフで残りの縄を切る。
見た目通りの切れ味は、左手の苦労が何だったんだと問いたくなるほどあっさりとオレを解放してくれた。
拘束されていたのは手だけで……
「……っ」
オレは音を立てないようにそろりと立ち上がり、うずくまったままの魔人から目をそらさないように視界に入れながらゆっくりと距離を取る。
ここで目覚めた当初、ただ真っ暗な空間なんだとばかり思っていたここがどうやら洞窟のようだとわかったのは、エステスが歩いてどこかに消えてしまった時だ。
思わず名前を呼んだ声が、わんわんと小さく長く反響して……それに気づいてから、できるだけ周りを観察するようにした。
岩はあるのか、
風は吹いているのか、
何か聞こえないか、
魔人とエステスの声以外聞こえてきたことがなかったから、もし二人に仲間がいるとしても会話ができるほど近くにはいないようだった。
そしてエステスは必ず決まった方向に明かりも灯さずに行くから……きっと向こうが外界と繋がっていて、しかも明かりがいらないほど地面が安全で、すぐに外に出られると言うことだ。
ずきずきと痛みを訴えるのは怪我をした左手だけで、そこから滴った血がぽたりと地面に落ちたのに気付いて慌てて服の裾で傷を押さえる。
長く感じる一秒、二秒……魔人に異変がないのを確認して足取りを早めた。
解放されるんだと言う歓喜をぐっと飲み込みながら、前から誰も来ないのかを確認しながら慎重に進んでいく。
案の定と言うか、この洞窟に床は奇妙なほど綺麗に舗装されていて、足を取られて倒れるなんてことは起こらなかった。
追いかけられるんじゃないかって恐怖と、逃げ出すことへの嬉しさに息を弾ませながら赤い光の零れるそこへと臆せずに進み続けた。
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