137 / 303
おまけ 13
しおりを挟む「只人は子を成せない」
「 ですが、はるひは私の伴侶ですっ」
「ヒロがお前の子であることは間違いないだろう、白い狼なのだから」
そう言うと陛下はまるで玩具に飽きた子供のようにふぃ とはるひから手を離し、やはり物憂げな瞳で頭を垂れたままの母に視線を移す。
「喜べ、ロニフ。お前の子が王族だと認められたぞ」
「はい、この身に余る栄誉でございます」
「だが、あの子がはるひの子だと証明されたわけではない」
ひどく平坦な声がそう告げて、驚きで固まってしまったはるひを見た後に、物言いたげに俺の方へと視線を投げかけてくる。
けれど、問いたいのは俺の方で……
「はるひの子でなければ誰の子だと言うんですか!」
「それを尋ねている」
そう返す陛下の纏う雰囲気は、俺やはるひがここへ足を運んだ際の穏やかさは消えており、ひりつくような毛が逆立つような嫌な雰囲気だった。
陛下が言うことを鵜呑みにするならば、俺ははるひ以外に子供を産ませたことになるし、はるひはそれを取り上げて自分の子だと言い張っていると言うことになる。
「ゴトゥスに連れて行った隊に女がいたようだが、あれは『種の揺籠』ではないのか?」
「彼女は立派な騎士であり戦士です、そのような目的で連れて行ったのではありません!」
「そうか、では、もう一人、孕める者がいたな?」
「馬鹿な!」
目の前の人物が陛下の皮を被った未知の生き物に思えてくる程、その質問は想像を超えたものだった。
「巫女様ははるひの兄であり、クルオス陛下の番です!」
驚いたせいで声がひっくり返りそうなほど甲高く、みっともないほど掠れてしまう。
「随分と長い戦いだったな?お前の特性が強く出れば子は二月ほどで産まれるのだろう?そもそも出征前にはるひに子が出来たと証明できる者がいるのか?」
「 です が、抱いたのは出征前です」
胎に子が宿ったのだと、王宮医ではなくともせめて誰がしかの医者がそれを確認していたなら言い返すこともできたのだろうが、はるひは誰にも診せることなくテリオドス領へと行ってしまっていた。
「私ははるひがヒロに乳を含ませるのを見ています、小細工でどうとなるものではありません!それに っ」
ぱしん と尾が鳴る。
兄とそっくりの牽制の仕方に思わず怯むと、力仕事を知らないかのような細い指先が俺を指す。
「お前が、かすがに恋慕していたと報告を受けている」
「で、でたらめですっ!」
「庭での逢引の件、ゴトゥスでの護衛に名乗りを上げた件、二人で同じ部屋に入って行くそうだな?それに体にも触れさせていたそうじゃないか?」
「な、な 何を言ってらっしゃるんですかっ!」
5
お気に入りに追加
491
あなたにおすすめの小説
馬鹿犬は高嶺の花を諦めない
phyr
BL
死にかけで放り出されていたところを拾ってくれたのが、俺の師匠。今まで出会ったどんな人間よりも強くて格好良くて、綺麗で優しい人だ。だからどんなに犬扱いされても、例え師匠にその気がなくても、絶対に俺がこの人を手に入れる。
家も名前もなかった弟子が、血筋も名声も一級品の師匠に焦がれて求めて、手に入れるお話。
※このお話はムーンライトノベルズ様にも掲載しています。
第9回BL小説大賞にもエントリー済み。

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?
名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。
そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________
※
・非王道気味
・固定カプ予定は無い
・悲しい過去🐜のたまにシリアス
・話の流れが遅い

異世界転移してΩになった俺(アラフォーリーマン)、庇護欲高めα騎士に身も心も溶かされる
ヨドミ
BL
もし生まれ変わったら、俺は思う存分甘やかされたい――。
アラフォーリーマン(社畜)である福沢裕介は、通勤途中、事故により異世界へ転移してしまう。
異世界ローリア王国皇太子の花嫁として召喚されたが、転移して早々、【災厄のΩ】と告げられ殺されそうになる。
【災厄のΩ】、それは複数のαを番にすることができるΩのことだった――。
αがハーレムを築くのが常識とされる異世界では、【災厄のΩ】は忌むべき存在。
負の烙印を押された裕介は、間一髪、銀髪のα騎士ジェイドに助けられ、彼の庇護のもと、騎士団施設で居候することに。
「αがΩを守るのは当然だ」とジェイドは裕介の世話を焼くようになって――。
庇護欲高め騎士(α)と甘やかされたいけどプライドが邪魔をして素直になれない中年リーマン(Ω)のすれ違いラブファンタジー。
※Rシーンには♡マークをつけます。

転生したら魔王の息子だった。しかも出来損ないの方の…
月乃
BL
あぁ、やっとあの地獄から抜け出せた…
転生したと気づいてそう思った。
今世は周りの人も優しく友達もできた。
それもこれも弟があの日動いてくれたからだ。
前世と違ってとても優しく、俺のことを大切にしてくれる弟。
前世と違って…?いいや、前世はひとりぼっちだった。仲良くなれたと思ったらいつの間にかいなくなってしまった。俺に近づいたら消える、そんな噂がたって近づいてくる人は誰もいなかった。
しかも、両親は高校生の頃に亡くなっていた。
俺はこの幸せをなくならせたくない。
そう思っていた…
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

転生したらオメガだったんだけど!?
灰路 ゆうひ
BL
異世界転生って、ちょっとあこがれるよね~、なんて思ってたら、俺、転生しちゃったみたい。
しかも、小学校のころの自分に若返っただけかな~って思ってたら、オメガやベータやアルファっていう性別がある世界に転生したらしく、しかも俺は、オメガっていう希少種の性別に生まれたみたいで、は?俺がママになれるってどういうこと?しかも、親友の雅孝をはじめ、俺を見る目がなんだか妙な感じなんですけど。どうなってるの?
※本作はオメガバースの設定をお借りして制作しております。一部独自の解釈やアレンジが入ってしまう可能性があります。ご自衛下さいませ。

オメガ転生。
桜
BL
残業三昧でヘトヘトになりながらの帰宅途中。乗り合わせたバスがまさかのトンネル内の火災事故に遭ってしまう。
そして…………
気がつけば、男児の姿に…
双子の妹は、まさかの悪役令嬢?それって一家破滅フラグだよね!
破滅回避の奮闘劇の幕開けだ!!
逃げる銀狐に追う白竜~いいなずけ竜のアレがあんなに大きいなんて聞いてません!~
結城星乃
BL
【執着年下攻め🐲×逃げる年上受け🦊】
愚者の森に住む銀狐の一族には、ある掟がある。
──群れの長となる者は必ず真竜を娶って子を成し、真竜の加護を得ること──
長となる証である紋様を持って生まれてきた皓(こう)は、成竜となった番(つがい)の真竜と、婚儀の相談の為に顔合わせをすることになった。
番の真竜とは、幼竜の時に幾度か会っている。丸い目が綺羅綺羅していて、とても愛らしい白竜だった。この子が将来自分のお嫁さんになるんだと、胸が高鳴ったことを思い出す。
どんな美人になっているんだろう。
だが相談の場に現れたのは、冷たい灰銀の目した、自分よりも体格の良い雄竜で……。
──あ、これ、俺が……抱かれる方だ。
──あんな体格いいやつのあれ、挿入したら絶対壊れる!
──ごめんみんな、俺逃げる!
逃げる銀狐の行く末は……。
そして逃げる銀狐に竜は……。
白竜×銀狐の和風系異世界ファンタジー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる