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おまけ 6

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「『お前だな、かすがの弟ってのは』」

 その言葉はクラドが時々話してくれるものとは比べ物にならないほど流暢な向こうの言葉で、かすが兄さん以外にここまで喋れる相手は初めてだった。

 ぽかん とした顔がすべてを物語ったのか、「ははは!」と外見通りの豪快な笑いを零してぐいっと陛下を押し退ける。

「『なんだ、こいつから何も聞いてないのか?』」
「『おにぃちゃんが、ミロク様?』」
「『おぅ。お前らとおんなじとこから来たんだ』」

 陛下の隣に立つと、陛下がますます小さく見えて……

 巫女 と言われるとかすが兄さんのことしか知らないオレは、あまりのそのイメージの違いにますますぽかんとその豪快そうな顔を見上げた。

 個人差はあれど、巫女と言うのは銀糸を編んだような人物だと勝手に思い描いていたようで、その勝手な思い込みに恥ずかしくなってきゅっと唇を引き結ぶ。

「『清十郎っつーんだ、よろしくな』」
「?」
「『せーじゅーろーは呼びにくいそうでな、ミロクだ』」

 そうにやりと悪そうに笑うと、ミロクはさっと背中を向けた。

 そこには汗で貼り付いたタンクトップを空かすように色鮮やかな絵が浮かびあがっていて……

「えっと、『タトゥー?』」
「『まぁそんなものだ』」

 後でその背中に彫られているのは弥勒菩薩なのだと教えられたのだけれど、仏像とかそう言った記憶があまりないオレにはそう言うものなんだ……くらいしか感想が出てこなかった。




 王宮から比べたらこじんまりとした屋敷のせいか、応接室に全員が入ると少し窮屈な風に思えるのは、それだけ贅沢な空間の使い方に慣れてしまっているせいだ。
 そう思うと、手を伸ばせばすべてが届くような、テリオドス領での生活が懐かしく思えてくる。

「はー。もう子供までいるのか!ネクト!お前、じいちゃんなんだな!」

 汗を流してさっぱりしたミロクは、それなりの服装をしてもやはりどう見ても巫女らしくはない。

 強いて挙げるなら、そのごま塩頭が実はかすが兄さんと同じく、神の力に触れすぎたために銀色に変わっている と言う部分くらいだ。

「そりゃあ子供達も全員成人しているからね、年も取るよ」
「そっか!そうだな!」

 ミロクの膝の上であやされるヒロは、人見知りもなくきゃあきゃあと声を上げて嬉しそうにしている。

「それで、孫の顔を見せに来ただけではないんだろう?」

 陛下にそう切り出されて、クラドはぴりっとした雰囲気のままそちらへと向き直り、深く頭を下げた。

「この度は、陛下にお願いがあって参りました」
「ほぅ?」

 そう言って足を組むと、優男風に見えた陛下が急に大きく感じられて、たしん と振られた尾が音を立てた際には飛び上がりたい気分になった。



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