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しおりを挟むかすが兄さんやクラドはそう思わないらしいのだけれど、背が高いだけじゃなくて体すべてが大きいせいなのか、それともやはり虎と言う猛獣のせいかオレはこの人が実は苦手で……
傍に来られるとそわそわと落ち着かない気分になるのは、被捕食者の立場だからかな?
「テリオドスははるひが療養に行った先であったな」
ちょいちょい と返事を促すように長い尻尾が動く。
療養?と返したくなるのを堪え、「はい、その通りでございます」と返した。
長期に渡るオレの不在をそう言うことにしようと言われたのは先日のことだ、巫女の弟が行方をくらませていたなどと言うのは外聞が悪い と宰相であるエルが説明をしてくれたのだけれど、嘘を吐く居心地の悪さに良心が痛む。
一年も城に居なかった理由が療養ではあまりにも嘘っぽいのではと反論もしたけれど、貴族の間ではよくある理由らしく、そう言うふうに言ってしまえば暗黙の了解で詮索はしてはいけない と言う意味なのだと、後からこっそりと教えられた。
巫女の弟ではあるけれど公の場には出たことのない自分ですら、こんな面倒なことをしなければならない王城でのやり取りに溜息が出そうになる。
「なるほど、ラフィオと同じ見事な赤毛だな」
そう言ってロカシを見下ろす碧い目がちらりと一瞬だけこちらを見て弧を描く。それはまるでヒロの赤毛と同じだな?と確認されているようで、気まずい思いに視線を逸らして俯いた。
ロカシの燃えるような赤い毛がヒロのものと同じだと言うのは、見たら誰だってわかるほどはっきりした特徴で……
仮にも義弟の騒動をこの王が知らないと言うことはないだろうし、気まずい思いをしながら二人の会話に割り込むこともできずに唇を引き結んだ。
「ラフィオを知って下さっているとは、感激です。盛りの時期の一面炎のように咲き乱れる様はパンクラの詩曲に謳われるほどですので、一度ご覧いただけたらきっと終生忘れ得ぬ思い出になることと存じます」
「ああ、あの詩か なるほど、壮観なのだろう」
「はい!」
首が痛くなるほど見上げなければならない王を前に、ロカシは自領のことが話題に上って嬉しいのか、青かった顔を赤くして嬉し気に笑う。
キラキラとした瞳はどれだけ誇りに思っているかを言外に表していて、その様子は釣られて笑みが浮かぶほど微笑ましい。
「ふ 自領を誇り想う者が跡取りだとテリオドスも安泰と言うものだな」
「ありがとうございます!」
紅潮した顔をはっとさせてオレを振り返ると、ロカシは何かを決意した顔をしてオレを振り返る。
何か言いたげな表情を作ったけれど言葉は出ず、その代わりに小さく頷く動きだけが見えた。
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