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しおりを挟む連れ去られたと考えて、まずは犯罪奴隷の中や、伝手を辿って隣国の奴隷商や娼館まで調べつくして……
移動記録のある者から商人、旅人、それから消えた時期がゴトゥスへの出陣式の直後でもあったから、訪れた貴族を虱潰しに探し回った。
その痕跡の無さに、兄からははっきりとではないが諦めて戻ってくるようにと幾度も通達があり、それを蹴りながら……やっと見つけた結果がこれだ。
「…………」
馬車と並走していると、時折馬車の中からラムスとディアの声が聞こえてくる。
その度に気にせずにおこうと素知らぬふりをするのだが、耳がピクリと動くのを止められなかった。
「閣下、どうされたんですかぁ?」
ふふふ と笑い声が聞こえてきそうな呑気な声が後ろから迫り、俺と並走してにやにやとした顔を見せる。
俺の物よりも幾分丸みを感じる耳をピクピクと動かし、ハンネスは「楽しそうですねぇ」と言外にいろいろと含ませた声音で喋りかけてきた。
「うるさい、舌を噛むぞ」
「いやまぁ舌の大事よりも閣下をからかう機会の方が大事なんで」
部下らしからぬ台詞に思わず眉間に皺が寄る。
ラムスもそうだがこのハンネスも俺のことを上司として認識していないのではと思わせる言動が目立つ。一度部隊を締め直すか……と考えたところで、こいつらもゴトゥス山脈から生きて帰った足で俺に付き従ってここに居るのだから と思い直した。
ゆっくり休ませもせず、凱旋の祝賀会にも参加させてやれなかったのは申し訳なかったと感じてはいる。
「閣下も中でお休みになられたらよろしいのに」
「俺はこっちでいい」
「私共を置いて追いかけた割にはお冷たいことですね」
当てこすりのように言われる言葉は、昨夜合流できた時から隊員達から言われ続けている言葉だ。
今までよりもはるかにはっきりとした、はるひらしい人間を見たと言う証言に矢も楯もたまらず飛び出したのは確かに俺の落ち度だ。
隊で動くよりも単騎で駆けた方がはるかに速いためにそうしたが……
「城に帰れば休暇をやろう」
「当然ですよ!他の奴らは今ごろ褒章も貰って家で寛いでますよ!あーあ、酒が飲みたいですね」
「そう言うな。これでも感謝をしているんだ」
「ほんっと、感謝してくださいよ。少しでも遅れていたらと思うとぞっとします」
「…………」
ハンネスの言葉に手綱を握り直しながらぐっと唇を引き結んだ。
ゴトゥス山脈での戦いが終わったからと言って、この国の瘴気や魔物がすべて一掃されたわけではないことは十分承知していたけれど、それ以前と以後では瘴気や魔物の数も段違いに減っていた。
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