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しおりを挟む茶色い三角耳のラムスと、黒い垂れ耳のディアは見た目も性格も対照的だったけれど、意外とそれでバランスが取れて仲がいいのかもしれなくて、気心の知れた者同士の軽いやり取りに見える。
「あ!じゃあ陛下にお願いしてみるのはどうかな?」
「ばっかっ あっ失礼いたしました。そんな無礼できるわけないだろう」
「陛下からの命令なら、もう私達を置いていかないでしょ?」
「陛下からの命令は絶対だからな」
「だから、いい考えな気がするわけさ」
「良くない」
二人の掛け合いはテンポが良くて聞いていて楽しい。それでも、そう言う相手がいることへの一抹の羨望はあって、羨ましいな と心の中で呟いた。向こうでは友達がいた記憶もあったけれど、こちらに来てからは巫女の弟と言う立場のせいか、皆が優しくはしてくれるけれど友人と言う立場の知り合いを持つことはできなかった。
だから、ロカシが初めての友人 かな。
こちらに好意を伝える素直な赤い尻尾を思い出しながら、同じ髪色をしたヒロに視線を移すと、ふっくらとした頬にえくぼを浮かべて笑い返してくれる。
「あの、王様からの命令って……」
ポケットを押さえると中のメモ書きが小さくくしゃりと音を立てた。
あまり質のいいとは言い難い紙切れは宿から逃げる時に置いて出たメモで、今朝クラドから突き返されてしまったものだ。
────はるひは見つからなかったか、亡くなったと伝えてください
これをオレの手に握らせたクラドから感じた怒気は、何だったのか……
「そう言うのって、絶対ですよね?破ったりとか……」
「そうですね、まぁこの国のトップなので。懲罰を覚悟すればー……出来ないこともないですよ」
「そうですか」とやっぱりそうなのかと言う納得をしながら返す。
王からの命令と言う形で出た婚姻許可をクラドが断ることはできなかったんだろう。
オレが森番小屋でクラドに迫ったのを見た誰かか……もしくは、かすが兄さんとクラドのことに気付いた王がわざとそうしたか……
オレには判断できなかったけれど、どちらにせよ「相手が見つからない」「相手が死亡していた」となれば幾ら王からの命令とは言え、遂行するのは難しい。そうなれば大義名分もできるだろうに。
ぎゅっと力を込めるとポケットの中でメモが潰れる音がする。
どうしてオレを追いかけてきたりなんかしたのか……幾ら考えてもその答えは出なかった。
◆ ◆ ◆
王宮への帰路を急ぐ中で、体力的には限界が近いのを感じてはいた。
ゴトゥス山脈での戦いを終えて王都へ戻り、はるひが姿を消したのだとエルから告げられてたその足で王宮を飛び出して以来、ただただ足元が崩れそうな恐ろしさと戦いながらはるひを捜し歩いた。
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