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 かすが兄さんと手を繋ぎながら、凄く明るいお店に食べ物を買いに行ったっけ?
 そこで食べたあったかい食べ物は……なんて名前だったかな?

 もう一度食べたいと思っても、こちらの世界で似たような物を見かけたことはなかったから、もう二度と食べることはないんだろう。そう思えば、次々と幼い頃に食べたお菓子が思い起こされてきて、ヒロにも食べさせてあげたかったなぁ って。

 チョコのケーキとか、誕生日のケーキにしてもらうくらい大好きだった。
 それから、テレビ!名前は思い出せないけど、赤や青の人たちが戦う話は……途中までだったはず。

 突然かすが兄さんが家から出ることになって、オレは夢中で追いかけて……追いかけて…………

 それから、どうだったんだっけ?

「  うー 」

 小さな呻き声にはっとなり、もぞりと動いたヒロにせっつかれるように再び歩調を早める。

 そうだった、あの時に神様から「おまけ」って言われたんだった。

 その時のオレはおまけって言われたらお菓子についてくる小さなオモチャのイメージしかなくて、初対面の人にそう言われたのがすごくショックで……
 今思い出しても泣きそうな気分になる。

「…………この道、どこに続くんだろ」

 なんとか辿り着いた村の門は固く閉ざされていたけれど、その傍らに小さな勝手口のような扉があってそこから外に出ることができた。

 吐き出した息が雨の湿気に吸われて重く頬を撫でる。

 目の前の道はそのまままっすぐ森の中に続いていてその先は見えず、どこに繋がっているのかも良くわからない。
 ここに着くまで馬車の窓の外を見て道を覚えようとしたけれど、夜になったからか、それともこの町に来る時に通った道じゃないのか、まったく見覚えのない道だった。

 繰り返し馬車の通った轍跡があるから、この先に何もないと言うことは無いはず……

「  っ、いや、こっちの方がいい!」

 クラドから逃げてもテリオドス領に戻ればあっと言う間に見つかってしまうだろうし、そうなればどんな迷惑をかけるかわからない、それに今度こそ……クラドはロカシ達に何かをするかもしれない。

 剣を抜いて脅したのが、オレを連れ戻すための演技だってわかってても……

 もうこれ以上、護衛騎士と言うことを誇りにしていたクラドにあんな脅し文句を言わせたくなかった。

 だからできるだけ遠くに行かなきゃいけない。
 できればテリオドス領のように過ごしやすい場所がいいけれど、ヒロが健やかに育つことのできる場所であればどこでもいい。

 クラドから離れることができるのなら!



 木の根に足を取られそうになりながらも、転ぶのだけは避けるために慎重に足を進める。



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