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しおりを挟む「こうやって呼んでくれるってことは、僕がずっと言っていたお願い、聞いてくれるのかな?」
銀の睫毛に縁どられた目が嬉しそうに細められ……
細い指先が毛の中を探りながら地肌に触れると、無意識に体が硬直して汗が背中を伝う。
体温の乏しい皮膚はそれだけで肌を粟立てるけれど、それが気ままに動いて好き勝手に触れてくるものだから、ぞわぞわとした悪寒のようなものを感じずにはいられなかった。
歯を食いしばらないと嫌な声が漏れ出しそうで、力を込めて拳を作る。
「……で?ほら、早く」
「 っ」
「じゃないと終わってしまうよ?質問に答えるのはコレの間だけだって言っただろう?」
白い手が長い筋を辿るように毛並みに沿ってツツ……と滑らかに動く。
「クルオスのものじゃ、満足できないんだ。君のじゃないと」
「巫女様、それは 」
交換条件がそれだった とは言え、早まったのではないかと言う思いは拭えなかった。
兄よりも上と言われて普通の兄弟ならば喜ぶこともあるかもしれないが、如何せん兄は王でかすがは兄の妻だ。そんな安易な言葉が出るのは流石にいいことではない。
「ふふふ 」
悪戯っ子のように微笑むと、かすがは俺の尾に頬をつけて「はぁー 」と満足げな声を零す。
「クルオスのは毛が足りないんだ、このふわふわ感がないと」
「あの、匂いを嗅ぐのはご容赦ください……」
そう言うと、さすがに悪いと思ったのかしぶしぶと頬から離して、また再びゆっくりと俺の尾を梳き始める。
「君のは、本当に太くて黒くて立派だね」
「巫女様⁉︎」
不穏なセリフを言わないで欲しいと言う願いを声に滲ませながら声を上げると、やはり小さな笑い声が返ってきた。それでも手を休める気配がないのだから、かすがは余程この俺の尾に触れたかったらしい。
尾は……非常にデリケートな部分だ。
感情が出てしまう部分でもあるし、それを擦り付けて縄張りを主張したり、パートナーだと主張したりするために使う。付け根の部分は性感帯にもなっているので、それに安易に触れることができるのは余程近しい相手に限られる。
「ほら、僕に質問できるのは尾を梳いている間だけだよ」
「え ええ」
俺の尾を梳いてご機嫌のかすがにちらりとだけ視線を遣って、俺はエルの言葉を思い出していた。
「ちゃんと避妊はしたんでしょうね?」
その懸念が念頭になかった話ではなかったが、そもそもはるひに対して避妊が必要なのかわからなかったし、事が急すぎた。渋い思いが顔に出ていたのだろう、エルは俺よりも物思うような苦い顔になって言いにくそうに言葉を続ける。
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