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しおりを挟む動かしてしまった視線に続けて「しまった」と言う表情を作った途端、ロカシの体が横薙ぎに吹っ飛び、扉の前に立ち塞がろうとしたオレの体が舞い上がった。
「ロカシ!」
『オモチャみたいだな』なんて言われながら、昔クラドにあやすために抱き上げられた時のことを思い出したのは一瞬で、オレは必死にその腕から逃れようと身を捩ったが抵抗なんてあって無いようなものだ。フードに覆われた背を精一杯の力で叩いてはみるも、クラドにダメージを与えられているようには見えない。
なんの抑止力にもなれないまま、古い扉を蹴り破るクラドに「止めてくれ」と叫び続けた。
少し建付けが怪しいね なんてマテルと話していた扉が、壊れるんじゃないかって乱暴さで開かれて……
なんの躊躇もなく飛び込んだクラドの動きが止まって、ほんの少しだけ手の力が緩んだ。
「ぁ、ああー んっ ぉあ、ぁ っ」
オレの叫び声のせいか、扉が破られる音のせいか、真っ青な顔をしたマテルが抱き締めた布の中から激しい泣き声が響いている。
緩んだ腕の力と、その泣き声に竦んだように動かなくなったクラドから逃げ出し、事情がわからずに今にも気を失いそうに見えるマテルに駆け寄って彼女を抱き締めた。
「………… それは、赤ん坊か ?」
声は先程までの暴挙を行った人物だとは思わせないほど弱弱しい問いかけだったけれど、オレはやっぱり怖くてそちらを見ることはできない。
オレとマテルに挟まれて、腕の中で小さな体がむずがるように動いて泣き声が一際大きく響いて……
それに突き動かされるようにクラドの無遠慮な腕が伸びてくる。
「触らないでっ!」
重い長剣を易々と振り回すその腕をオレがどうにかできるなんて微塵も思わなかったけれど、敵わなくてもそれでも立ち向かわなきゃならない。
だってこの子は、オレの子なんだからっ!
マテルの腕からおくるみを受け取ると、少しでもクラドから距離を取るために家の奥へと逃げようとした。けれど壁と壁まで数歩程度で辿り着いてしまう小さな部屋なために、あっと言う間に壁際へと追い詰められてしまって、それでも逃げられないかと左右の壁に目を遣る。
味があって気に入っていた木の壁を邪魔と思う日が来るなんて思わず、縋るようにしてその角で蹲った。
「っ 来ないで!」
腕の中の小さな体は今まで体験したこともなかった事態にびっくりしたのか、ますます激しく大声で泣いて、主張するように手足を振り回し始める。
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