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しおりを挟む巫女は王に嫁ぐ義務がある。
王は巫女を娶る義務がある。
故に今のオレの立場を言葉にすると、神に呼ばれた異界の男巫女兼この国の王であるクルオス・ケヴィア・リ・ミロク・シルルの王配……つまりは奥さんだ。
向こうでは男と結婚できるのは女だけだったから、なんの違和感もなく男である自分が王様の伴侶にって言われた時は腰を抜かしそうになった。男だから子供が産めないし、跡継ぎ問題を起こしてしまうから、王様と結婚なんて辞退しますって大騒ぎしたら、この世界では巫女は男でも孕むものだから問題ないって一瞬で反論されて……
他に何とかして王の嫁なんて重責から逃げられないか試してみたけれど、どうしようもなくて。
「あーあ、あいつ。顔だけはいいんだけどなぁ」
当代の王だと名乗ったクルオスは、王の象徴である銀色の髪が良く似合うイケメンで……オレよりもはるかに高い身長に涼やかで迫力のある碧い瞳と、がっしりとした筋肉を持つ虎の獣人だった。
荒々しくはあったけれど芸術的な配置で形作られた顔は美しく、すべてのバランスが整っていると言えるほど欠点のない姿をしていた。
なのに、そんな容姿にプラスされた白と黒の虎耳と虎尻尾は……これ以上属性を盛らないでくれ! と叫ばせるほどオレの好みのど真ん中を射た。
……とはいえ、初対面で、
『巫女は黙ってても転がり込んでくるんだから構う必要なんかないだろう』
と、白い衣を翻しながら背を向けられたのを、オレは一生忘れない。
ちょっとドキリとした、ちょっとカッコイイと思った、ちょっと……この人が俺の結婚相手で嬉しい と思ってしまった。
わずかに浮き立った心に突き立つ言葉の棘は存外深く抜けないものだ。
この世界に来て、弟を守りながら弟の代打としてやっていけるのかと不安を抱えていた時に、どきりと胸が高鳴るような瞬間を経験したからか、言われた一言で落とされた気分は爪痕を残したまままだ癒えていない。
「この世界で、好みの奴を見つけて、ちょっと浮かれてたのにな」
長身と筋肉、整った顔にケモ耳としっぽ、そしてオレの大好きが銀色の髪と美しい宝石のような碧い瞳。
……そして、男。
オレの好み過ぎて、もしやクルオスは間違えて連れてこられたオレへの、神様からの褒美だったんじゃ って思ったこともあった。
元雄の世界では許されなかった同性愛が、こちらでは大手を振って認められるんだから、本当にあの時は舞い上がって……
「でもまぁ、中身があれじゃあね~」
はは! と鼻で笑ってから、広い寝台の上で仰向けになる。
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