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手当騒動

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「播磨谷っ!」

 胸に感じた嫌な予感に促されるままに叫ぶと、ぼくに覆いかぶさるようにしていた播磨谷の体が跳ねた。
 まるで転寝しているところを起こされたみたいな、そんな反応ではっとぼくの方を見ると血の滲んだ唇で「あまい」と言葉を零す。

 ────あまい

 それが何を指して言った言葉なのかさすがのぼくでもわかる。
 播磨谷は何を言い出したんだって怯えるぼくを置いて、播磨谷の舌がぬるりと動き始めた。

 傷の部分を啜り、そこから溢れて伝う血の筋にそって這わされている舌は真っ赤で、いつものダウナーな播磨谷の雰囲気に全然似合わないものだった。
 それがぼくの肌を丹念に舐めながら、溢れて零れた血の道を辿って動いていく。

 ぼくは……動けなかった。

 言い訳をするなら播磨谷がマウントを取る形で押さえつけていたから……言い訳をしないなら、播磨谷の舌が気持ちよかったから。

「ぁ  っ」
「 みちる……お前、甘い」

 じゅるじゅる と皮膚を吸われた瞬間、全身に鳥肌が立ったようにぞわぞわとして、これ以上ないってくらい骨が軋むくらい体が仰け反った。

「  あ ま 」

 うなされたように呻く言葉はやまないまま、播磨谷はぼくの方にぐぐっと身を乗り出してくる。
 ぼくよりもめちゃくちゃ大きい播磨谷がそんなことをすると、ぼくはその影にすっぽりと入ってしまう。

 なのに……初めて至近距離で見た播磨谷の顔に…………ぼくは動けなかった。

 



 ねとぉ と糸が引くほど濃い先走りが播磨谷の唇を汚すのが、襲い掛かられていることよりも嫌だった。
 ちょっと皮肉気に笑いを漏らして、ぶっきらぼうなことを言いながらもぼくの名前を呼ぶ口を穢してしまう気がして、必死になって拳を振り下ろす。

 でも元々体も小さいし、抑え込まれた状態のぼくの殴打なんてぽこぽこと音がする程度のもので、播磨谷の動きを全然けん制してくれない。

 必死に「ダメ!」って叫んでいるのに、播磨谷はそんなことには意を介さない様子で喉の奥までぼくのちん〇んをぐっと飲み込む。
 人の体内に突き入れたことなんて未経験だし、播磨谷の喉は気持ちがいいし、でも汚しちゃうしって言うわけのわからない状態に泣きわめきながら射精は嫌だって身を捩ったけれど、そこは童貞の悲しさ……

 呆気なく播磨谷の口の中にザー〇ンを出しちゃって……

 それを播磨谷が口の中で堪能するように転がして、垂れたものは分厚い舌で舐めとって……酷く幸せそうにはぁと感嘆の息を吐いてみせる。
 播磨谷のフェラで出しちゃったことにショックを受けるぼくの前で、彼はかき上げた前髪の下で男っぽく笑った。


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