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初めてクッキング!
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しおりを挟む「つまりそれくらい美味しかったと⁉」
「うん!」
「オレの分は?」
もう一度ぼくに向かって差し出された手をぺしりと叩く。
「おいしかったです!」
「なんっ……だと⁉」
「二個買ったんだけどさぁ気づいたら全部なくなってたんだよね……はっ! もしかしたらお化けが⁉ 怖いよーどうしよう~」
わざとらしくあわわわわわと慌て始めたぼくに、播磨谷の視線は冷たい。
こんな茶番なんてしなくていいからって視線で言われて、しかたなくすごすごと身を小さくして座り直した。
「 ごめんなさい」
そう言ってポケットからカレーパンを包んでいた白い紙を二枚出して、皺を綺麗に伸ばしてからテーブルに並べてみせる。
「食べちゃいました」
「……んで?」
「おいしかったですっ」
その感想を繰り返すぼくに呆れ返ったのか、播磨谷は祈るように天を仰いで「そうかよ」って返事をしてくれた。
「あー……まぁ、うまかった? 美味かった! 美味かった! 生地はさっくりしてるけれど脂っぽさが一切ないし、中のカレーは野菜の旨味を引き出した優しい甘口カレーで美味しいのにヘルシーだってわかるんだもん!」
「甘口なんだ」
ぼくの言葉に播磨谷は急に興味を無くしてしまったかのようだ。
説明はそんなにまずそうだったのかな? カレー好きな播磨谷なのにどうでもいいよーって感じの態度を取られてしまうと、せっかく縮まった二人の距離がまた離れて行ってしまいそうな気分になる。
「オレは辛口一択だっての」
「ちがっ 辛いだけじゃだめだよ! そのスパイスの奥に感じる甘みとが、肉を引き立てるようでいて手綱を手放していない野菜の存在感とかっご飯なのかパンなのか麺なのかっそれだってカレーとの相性を考えたらいっぱい……」
縁の分厚い野暮ったい印象を受ける眼鏡の奥から、播磨谷の目がきらりと光った。
「カレーはっ辛さだ!」
「何、その男は金だ! みたいな偏見」
甘いのでもいいし、辛いのでもいいと思う。
それぞれに違ってるのが美味しいんだし、全部同じで辛さだけでカレーを語り始めると香辛料や辛みを足したものだけが美味しいってことになってしまう。
そんなことになったら、辛いのが苦手な子はカレーを食べちゃダメになってくる。
「ダメだ! それは違う! それぞれのカレーに合った辛さがあるんだもんっ! だから、辛くなくても美味しいカレーはあるよっ」
どーんと叫んだぼくに、播磨谷はちょっと馬鹿にするように目を眇めてきてから鼻で笑った。
「な、なんだよ!」
「んじゃあオレの分のパンも食べたみたいだし、責任とってみつるが美味しいカレー作ってくれるんだよな?その辛くなくてもうまいカレーを食わしてくれるんだよな?」
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