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雪虫 2
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しおりを挟む「 ────説明しろ」
直江を払ったとしても、どれだけ凄んで見せたとしても、大神の表情は変わらない。
袖を通したスーツを整えて、一言「なんだ」とだけ返してくる。
「どうして、雪虫を囮に使った!」
シンプルなオレの言葉にも、大神は表情を変えなかった。
「何の話だ」
「ふざけんなよ、誤魔化せると思ってんのかよ!」
切れ長な黒い瞳はいつにも増して鋭利だ。
「あんたらはブギーマンとやらを掴まえるためにあの家を用意して、そいつをおびき出すために雪虫を餌にしたんだ」
睨みつけたところで大神はやはり何も言わない。
「あんな大事故があったのに警察も来なければ、近所の野次馬も来なかった。ってことはあの周り全部あんたの息がかかってるってことだ。あんた、最初からみなわがあいつらの仲間だって知ってたから、スケジュールをぽろぽろ目の前で喋ってたんだろ!オレ達のためだとか言っていた発情誘発実験ってのもみなわを呼んでくる口実なんだろうがっ!」
「だから?」
「オレが一番頭に来てんのは、あんたらが雪虫に何かあるってわかって、あえて攫わせたってことだ!」
こちらを見る双眸が一度瞬く。
「でないとあの家に監禁されてる雪虫がタグなんかつけてるわけねぇんだよっ!あんた、分かってて雪虫を危険に晒したなっ⁉」
そう怒鳴って大神に飛び掛かる。
一対一で向かい合うと恐怖で足が竦んでいたのに、今は不思議と怖さは感じなかった。
ただただ腹の底から湧き上がるような嫌悪と怒りとに急かされて、反射的にオレを止めようと伸ばされた手を避ける。大柄な大神の懐に入ってしまえば、勝つことは難しくとも一矢報いるくらいはできるはずで……
「 ────あ゛っ」
顔面にどっと感じた固い皮の感触、それから遅れて感じた掌がオレを押し返す感覚、最後に衝撃を感じて、痛みは一切なかった。
掌底打ちを食らったんだってわかったのは、鼻の奥から血が流れ出してからで、その時になってやっと鼻の奥に差すような痛みが襲ってくる。
「ゆ゛ぎ、むしおっぎ、危険っに、 晒じや゛がってっ!」
血が舌に絡んでうまく回らない。
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