OMEGA-TUKATARU

Kokonuca.

文字の大きさ
上 下
790 / 801
雪虫 2

52

しおりを挟む


「カルシウムもっと摂るようにしないとダメだよ?怒りっぽくなるからね。骨にもいいし、料理にとりい   」

 へらへらといつもの調子ではぐらかそうとした言葉を無視して、低い声を出す。

「  ────あいつら、『体さえ持ち帰れば十分』って言ったんだ」

 さすがにへらっとした表情が消えて、続きを促すような視線がオレを見る。

「それはつまり、さっき先生が言ったような目的で攫ったんじゃないってことだろ」

 Ωの発情期の体を楽しむのも、いたぶって楽しむのも、子供を産ませるのだって、すべては生きていなくちゃいけない。

 なのに、体の弱い雪虫をあんなふうに無理矢理攫って……


 あいつらは、死体でも構わないって言ったんだ。


「『オモチャ』ってなんのこと?」
「玩具?」

 つい問い返したような言葉を思うと、瀬能はそのことに関しては知らないんだろう。

「…………」
「君は、雪虫を攫った男の顔に見覚えはなかったかな?」
「……いえ」

 左目の上の傷に引っ掛かりがないわけじゃなかったけど、心当たりにある男とあの雪虫を攫った男とでは顔が……

 顔が?

「……ない と、思うんですけど」
「思う?」

 記憶を手繰るために視線を動かしてみても、引っかかるものがない。

「傷……は、気に掛かるんだけど。初めて見る顔……だったと思う」

 そうなのに、どうしてだか引っ掛かりが拭えない。

「どんな男だったか覚えてる?」
「当たり前だろっ!   」

 そう怒鳴って瀬能にどんな顔か言おうとして言葉が喉につっかえた。
 オレがどんな反応をするかわかっていたのか、瀬能は苦そうな顔をしてデスクの上をトントンと指先で叩く。

「その様子じゃあモンタージュも難しそうだね」
「……」

 オレが?

 覚えてない?

「先生は?」
「言い訳はさせてくれるのかい?」
「年だからって言うのなら受け付けます」

 そう言うと瀬能はちょっとオレを睨みつけてから椅子の背もたれに体を預ける。

「まぁ、アレだ。君が魔法のようだ と言っただろう」

 観念したような喋り方だから、本当はオレに話す気のなかった話なのかもしれない。

「『止まれ』ですか?」
「うん、リリーサーフェロモンってのがあるんだけどね、まぁそこら辺の応用じゃないのかって話だよ」

 バース性の話をしていると言うのに瀬能の言葉は歯切れが悪く、中身が誰か違う人間に乗っ取られているんじゃないのかって不安が首をもたげてくる。

「あの男の顔が分からないのも、そうじゃないのかって話なんだけど……」

 そこであっと声を上げてしまった。
 促すような、世間を斜に見たような目がオレをひたと見つめる。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

営業活動

むちむちボディ
BL
取引先の社長と秘密の関係になる話です。

組長と俺の話

性癖詰め込みおばけ
BL
その名の通り、組長と主人公の話 え、主人公のキャラ変が激しい?誤字がある? ( ᵒ̴̶̷᷄꒳ᵒ̴̶̷᷅ )それはホントにごめんなさい 1日1話かけたらいいな〜(他人事) 面白かったら、是非コメントをお願いします!

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

目が覚めたら囲まれてました

るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。 燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。 そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。 チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。 不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で! 独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

隣の親父

むちむちボディ
BL
隣に住んでいる中年親父との出来事です。

処理中です...