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雪虫 2
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しおりを挟む「……オレ、足捻った」
「ひね ?」
「足を怪我した。もう走れないから、ここから明るい方に向けて逃げるんだ。タグの電波が拾えるところまで行けばセキが何とかしてくれる」
あ と言い返そうとした雪虫だったが、結局言葉が見つからなかったのかふるふると首を懸命に振って見せた。
「早く!ヒートの匂いがどんどん濃くなってるから……っあいつらに見つかる前に……」
頼りなげにこちらに縋るように見る雪虫を突き放すのは、発情期の匂いにあてられ始めたオレには苦行でしかない。
守ってやらなきゃって、
助けてあげなきゃって、
言うことを聞いて、
甘やかして、
自分の手の内だけで存在していて欲しいって……
体中の細胞が訴える。
「 っ ────っ 」
ぐらぐらと目が回り始めたように感じて、強く首を振って雪虫を押し出すために手を伸ばした。
「ヒートが本格的になる前に……」
発情期が始まった雪虫を手放すなんて正気じゃない って訴える本能と、こんな状態では一緒にいたって守り切れないって言う理性と……
お互いが殴り合っているような感覚だった。
「ヒート?ヒートなの?」
「ん 匂い、凄くて……頼むから……」
強く強く香る匂いに目を回しながら頷き、辛うじて残っている正気で雪虫から距離を取ろうとする。
「 じゃあ、しずるが噛めば治まる?」
オレの手を握り、小さな頭をこてん……と倒して尋ねかけてくる姿は、まさに雪の中の花のようだった。
辛うじてそうできたのは、雪虫のそんな姿を人目に晒すことに対してαの独占欲が働いたからだ。
酷い痛みを訴える足で雪虫を抱えて茂みの中に入り、自分をクッションにするようにして草の上に倒れ込む。
今度は雪虫も声を上げなかったけれど、驚いたのか怯えているようにも見える。
それがさながら、食われるのを待つ小さな被捕食者のようで……
「 ゆき 」
「 っ ぁ」
乱暴にしちゃいけない と理解はしているのに体が言うことを聞かず、小さく開いた唇に噛み付くようにむしゃぶりつくと、腕の中で跳ねる感触がした。
犯したい
ぐるぐると一つの言葉が頭を巡る。
「っ くっ」
「しずる 噛んで 」
期待に瞳を潤ませて、必死にオレを求めようとする姿が堪らなく愛おしい。
「待って……準備 準備しなきゃ」
準備?と呟いて雪虫は伸び上がるようにしてオレに口付けてくる。
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