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雪虫 2
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しおりを挟む敵わないまでもせめて一発殴ってやろうと体に力を入れた時、ため息交じりの声が続いた。
「 同情か?それとも自分を見ているようで居た堪れないか?」
「 後者ですかね。結局、アレもコレも道楽のオモチャにしか過ぎないんですから」
コレ と言いつつも、それを指すのは言葉のニュアンスから考えて自分自身だ。
……道楽の、オモチャ?
「 可哀想に」
なんの感情も籠らないその声は平坦で、先程雪虫をアレ扱いした償いにはならないものだったけれど、それでもその声の男が雪虫に向けて何らかの嫌悪ではない感情を思っていることにほっとした。
「 もうじき、時間ですが、ソレはどうしますか?」
「 ソレ?」
『アレ』『コレ』と来たのだからそれが指すのはオレだろう。
どっと心臓が跳ね上がって呼吸が乱れそうになる。
「 ああ、ソレか」
「 あのまま縊り殺した方が手間がなかったんですけど」
「 あー、そう」
「 今からでも可能です、それとも連れて行きますか?」
「 アルファが群れないのは知ってるだろ?」
「 そうですね、ソレを連れて行くよりはあそこにいたオメガの方が利用価値は高そうだ ────ああ、もちろん若い方ですよ?」
一瞬二人の間に落ちた沈黙に何があったのかはわからないけれど、男が慌てて繕うように言葉を紡ぐ。
……若い方の、Ω は、セキだろう。
利用価値 と聞いて、以前に大神がその体自体が役に立つ……と言っていたことを思い出した。
AVや風俗、それからαの子供を産ませたり……それに、その体自体って言っていたっけ?それから……卵細胞も。
そんなものを一体何に使うんだって思うけれど、そう言われるだけの使い道があるんだろう。
セキに利用価値があると言うことは、同じ年代で同じΩである雪虫もそうと言うことだ。
「 そんなに気になるのに、置いて来て良かったんですか?」
「 …………」
瀬能に取り押さえられていたのが最後に見た姿だったけれど、あの黒服達を抜けてみなわが逃げられたとは考えにくい。
掴まって……?
雪虫のことで頭がいっぱいでみなわのことまで頭が回らなかった。
「 大神はオメガに甘いことで有名だからな。死にはしないだろう」
「 ……」
何か言いたげな気配だけが伝わってくるが、それ以上言葉が募ることはなかった。
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