OMEGA-TUKATARU

Kokonuca.

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雪虫 2

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 いい笑顔でこちらをチラチラと見られて……逃げよう!って意見がセキと一致したのが視線で分かった。
 バタバタっと走り出そうとしたオレとセキが廊下への扉の前を横切ろうとした瞬間、それが開いて直江が入ってくるからぶつかりそうになる。

「わっ と、と、ごめん!直江さんっ」
「どうしたの?元気いいね」

 怒るわけじゃないけれど呆れたふうに言われて、セキと気まずげに目線を合わして肩をすくめて小さくなった。

「こんにちはやで。なんや、昼間っから何して怒られてん?」

 直江の後ろからひょっこりと顔を見せたみなわはそう言うと、面白そうにくすくすと笑ってからオレにずしりと重い箱を手渡してくる。
 ここ数日で何回かみなわが差し入れてくれたその箱は、中にチーズケーキが入っていて……

「わ  」

 思わず箱の大きさから中身の数を考えて嬉しくなっていると、みなわの細い手が頭をぐしゃぐしゃと掻き混ぜていく。

「年相応の顔してまぁ!かぁわいいなぁ」

 犬にでもするように乱雑に髪を混ぜられて……

 もうそんな年じゃないって言うのになんだか小さな子供にするようにされたのが気恥ずかしくて、遠慮容赦のないその腕から首を振って逃げる。

「ナニ恥ずかしがってんの?ええやんちょっと撫でさせてや」
「ちょ やめ  やめてっもうそんな子供にするみたいのはっちょ ちょっ もーっやめろよ!」

 あんまり乱暴にするとみなわの細い腕は折れてしまうんじゃないかって心配になるんだけど、それよりも子供扱いされる不愉快さが先に立った。
 乱暴に腕を払い除けて、ばたばた っと逃げるように台所への入り口の方へ駆け出すと、空を切った腕を眺めてみなわはとても残念そうな表情だ。

 最初からオレをからかってくる人だったけれど、近頃は趣向を変えたからかい方をしてくるようになったのは、いいことなのか悪いことなのか。

「そう言うのやめてあげてください」

 ずい とオレとみなわの間に入ったセキはつっけんどんにそう言って、つんとそっぽを向いてしまう。
 オレを助けたかったってことよりは、昔に大神と関係のあった相手だから敵視してるって感じだった。

 そう思うと、庇われたのになんだか複雑な気分で……

「そんなカリカリせんでも!今日もコレからあの部屋で仲良ぅせないかんのに。あの子もおるんやろ?うちも入れて楽しくおしゃべりでもしょーや?」

 邪険にされたと言うのに、そこはさすがに大人の余裕なのか、みなわはさらりと流してニコニコとしている。

「う゛……」

 その笑顔に気圧されたのか、セキはもじもじと怯んでオレを見るけれど……

 正直、修羅場に巻き込まれたくなくてさっと目を逸らした。

「!」

 ヒドイ!と目が訴えかけてくるけど知るか。

 他人の色恋の騒動に巻き込まれるのを楽しめるほど、こっちは経験豊富じゃないんだ!



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