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雪虫 2
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しおりを挟むちょっと羨ましいなって思いもするけど、お陰で寂しい思いをさせないで済んでいるから、セキには感謝してもしきれない。
いつかなんかでお礼を って思うんだけど、やりすぎたら大神が睨んでくるだろうし、難しい所だ。
あんなに独占欲むき出しにするんだったら素直に番になってやりゃいいのに って、そっか。
「おっさんはベータなんだっけ」
「なんだ」
「 っ!」
独り言に返事が返るなんて思わなくて、思わず飛び上がったオレをひやりとした切れ長な目が見下ろす。
硬質で、冷ややかで、ナイフのようだ。
「ななな なんでもないっ」
慌てて首を振ると、不機嫌そうに眉を歪ませてこちらを睨みつけてくる。
それだけで股がひゅっと縮み上がりそうになるんだから、寿命に優しくない。
「大神さんが帰られるから、君も一緒にどうかって」
「えっあ、 」
オレの護身術と言うか、運動を見てくれている水谷から体力作りのために、ここからアパートまで走って帰るようにって言われてるんだけど、ちょっと聞きたいこともあったから素直にコクリと頷いた。
「いつもは嫌がる癖に、どう言った風の吹き回しだ?」
本当なら、出来るなら、いや、本音を言うなら大神と至近距離で密室とか嫌なんだけど、どうしても聞いておきたいことがあった。
「や あの、ちょっと聞きたいことがあって」
「なんだ」
聞き返してはくれるけれど、その目は新しい煙草を見ているし、気もそちらに行っているようで真剣に聞いているようには思えない。
ちょっと、聞く相手を間違えたかなって思ったけど、周りにはこの人以外に聞けそうな人がいないから……
「セ セキ と、その、する 時、気を付けてることって何?」
他人の布団の中事情をアレやコレや詮索するのは罪悪感が半端ないけれど、どうしても聞きたかった。
大神はそんなことを聞かれるとは思っていなかったのか、咥えかけた煙草を下ろして怪訝な表情だ。
「デバガメ的な話じゃなくて、そっちの体格差ってオレと雪虫の比じゃないだろ?」
雪虫は小さくて可愛いけど、オレ自身がそこまで大きくない。
だからって、雪虫からしてみたらオレが大きいことには変わらないし、どこもかしこも柔らかい雪虫をどう扱えばいいのか……
「大したことはしてない」
そう言うと煙草を吸い始めるから、思わず顔をしかめたくなるような馴染まないきつい香りが鼻先を横切る。
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