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雪虫 2
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しおりを挟むその視線の先には雲が少しだけある青空が広がっていて……
綺麗な青色が映っているはずなのにみなわの瞳は手の影のせいかどこか暗い。
「男娼しよる人間にそんなこと言う?」
「あっ」
覚えていることと気に掛けるってことは別で……オレは遠回しに、みなわが就いている仕事を非難してしまったってことだ。
「なぁ……こんな仕事してるん、汚い思う?」
「なん、なんでそんなこと言うんだよ。自分の仕事だろ」
暗い瞳はこちらを見ず、どこか懺悔めいた口調はますますオレを怯ませる。
「オレは……番が自分以外と親しくしてたら嫌だけど、でも、その。そう言う場所が必要な場合があるって言うのもわかってるよ。だから汚い仕事だとは思わない」
「…………」
「大変な仕事だろうなっては、思うけど」
自分自身の言葉がみなわを傷つけていないかどうか、気の利いた言葉かどうか、正しい答えだったのかどうか、オレには判断が出来ないけど、ぽつりぽつりと答えるオレの言葉は遮られることはなかった。
「あんたが生きて行くために就いた職なんだろ」
ジジィとババァなんか金のために息子の精子売りさばいたんだから。
それに比べたら自分の身一つで、体を張って稼いでいるみなわはすごいと思う。
「ふふふ」
突然そう笑われて、思わず肩がびくりと跳ねた。
「若いねぇ」
「そ、そりゃ 」
「必死になってやってた仕事やけ、そう言って貰えて嬉しいわ」
血の巡りが良くなったのか、目の下が赤くなったみなわはいつもの人をからかうような時の表情ではなく、少し幼く見える。
「うち、この仕事が終わったら辞めるんよ、大神さんが纏まった額の報酬くれるし、それでパートナーとゆっくり過ごそうかなって」
「いいんじゃないの。アルファって独占欲強いから、きっとやきもきしてたと思うし」
αは共有を嫌う って言うのは、散々聞いた言葉だ。
仕事のために首も噛めてなかったようだし、みなわのパートナーはオレと同じでずっとお預け食らって歯ぎしりしているはずだ。
そう言うとこは共感できる。
「いやいや、オメガやねん」
「え⁉︎」
「オメガの子と、パートナーなんよ」
あっけらかんと言ってはくれるけれど、オレからしてみれば同性同士で付き合っていると言うのはなんとも、奇妙に思えてしまって……
だから番じゃなくて、パートナーって言う言葉を使っていたのか と、納得すると同時に居心地の悪い感じがしてもぞもぞと座り直した。
「やっぱ、同性は気持ち悪いか?」
先程の職業のことといい、みなわはやけに答えに困るようなことを聞いて来る。
つい数日前に会った人間がどう思うかなんて気にもしないように思えるのに、こちらを見て答えを窺うみなわはどこか迷子のように見える。
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