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雪虫 2
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しおりを挟むオレの鼻でも分からなかったくらいだったんだから、次回もわからない可能性も高くって。
そうなったらオレの本能が更に暴走するかもしれない、そうなったら雪虫と番うとか夢のまた夢になってしまい……
オレの魔法使い化決定だ。
「で、も、 ……あんたオメガだろ!一緒に風呂なんか入れるわけないって!」
「風呂やなくて温泉」
「おんなじだよ!何考えてんだよ!」
「ここ混浴やけ、それに露天やでぇ?ほらおいでぇ ルールルルル」
ちっちっちって招く手に威嚇してみても良かったんだけど、正直、雪虫と番いたいと叫び出したいくらいなので……
「変なことしませんか?」
「せん、せん。ちょっと仲良ぅ風呂に入ってお互いの背中流そって言うてるだけやんか?親交を深めるだけの話やろ?」
「ホントにそれだけですよね?」
念押しに頷いてみせるのを信用した────
────のが悪かった。
「よよよよよよ寄んなよ!」
「いやそんな、幅とったら他の人らに迷惑やん?」
なんて、どこ吹く風っぽく言ってくれるけど、平日の昼間ってこともあるし、混浴ってこともあるからかがらーんとしていて……
「だだだだ、第一、こう言うとこって刺青してる人はお断りなんじゃ……」
勢いよく服を脱ぐみなわの腹部に赤い花の刺青を見つけたので、逃げ道とばかりに指摘すると、きょとん とした後にけらけらと笑い出す。
「これはな?タトゥー言うんよ」
「一緒だよ!」
「うちのはカバースカータトゥーって言うんやけどね」
幸い辛うじてある良心からか巻いてあるタオルの上から腹部を撫でる姿に、ちょっと気まずい思いで視線を逸らす。
カバースカー……傷口を隠す為の……
「あ……えと、 」
「ここは、それならOKが出とんのよ」
なんの なんて込み入ったことを聞く立場にもないオレは、気まずいままもじもじとするしかない。
「気にせんでもええよ。そんな珍しいもんでもないしなぁ」
珍しいかどうかで言うなら、大神の背中に背負った小鬼たちの方がワンポイントのタトゥーなんかよりよっぽど珍しい。
みなわのように綺麗な花ではない、頚椎に沿って立つ一本の剣とそれに巻き付く龍、それからそれを取り巻く背中一面の小鬼が……
思い出したせいでぶる と悪寒がして肩まで浸かると、みなわも倣うように腰を落ち着ける。
これくらいの距離感なら、まぁ許せるかなってくらいの微妙な位置なんだけど、じんわりと温もる体が気持ち良くてもう暴れる気分ではなかった。
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