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雪虫 2
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しおりを挟む「しずる?しずる? どうしたの?」
カシ カシ と爪が滑って気持ちの悪い音がする。
「……ちょっと ボーッとしてた」
「 びっくりした」
「ごめん、でも ぎゅっとしたくて 」
扉のに額をつけるとひんやりとした感触に、少しは頭の中がスッキリするかと思ったけれど、逆に雑念がなくなって、ただただ雪虫のことだけが頭に残った。
みなわと言う人物に、どうしてこうも警戒心を抱くのか、オレ自身がよくわからない。
独特な喋り方のせいか、
薄幸そうな出立のせいか、
やけに人の懐に入ってこようとするせいか、
考えても答えが出ない。
……そして答えが出ないまま、その人はオレの膝の上に乗っているわけだけども!
「 降りてもらえませんか」
押し除けてソファーから立ち上がろうとするも、するりと手足のどこかが絡みついて離れない。
「なんでなん?重い?」
重いか重くないかで言われたら吹けば折れそうなこの人は軽い、でもオレの比較対象は雪虫だけなせいか、十分重かった。
「ですね、重いんで退いてください」
「つれないん?なんで?」
「興味がないからじゃないですかね」
首に回された腕を取っている間に足が絡まってくる。
太腿に尻が乗っかっているが、なんとも思わないと鬱陶しいとしか思えない。
「イケズやな?」
「意地悪ってことですか?」
「せやね」
こうやり取りしている間も懸命に手足を剥がすのに、一向に離せる気がしない。
鼻の周りでふわふわとフェロモンが舞って、苛々と顔を背けて逃げる。
「フェロモン引っ込めてくださいよ!ホント、いけずでもなんでもいいんで降りてくれ。迷惑」
ほっそりとした顔立ちの端正な顔が悲しそうに歪んで、目の縁に光るものが盛り上がる。
唇が引き結ばれて、その光るものがつぅ と頬を伝って落ちた。目の前で泣かれるとさすがにどきりと罪悪感が湧いて、押し除ける手の力を緩めてしまって……
しなだれかかられ、緩くうねる髪が肌をくすぐってくるが、ゾワゾワとした悪寒しか感じない。
「なんで駄目なん?なんでそんなに冷たいん?」
細い指先がシャツ越しに胸の上に置かれて、ひやりとした体温と、汗をかいているのかしっとりとした感触を伝えてくる。
「嘘泣きだからじゃないかな?」
オレとみなわの間に割り込んできた瀬能がさらりとそう言い、穏やかな手付きで引き剥がしてくれた。
「イケズー!」
「はいはい。若者に手を出すのは厳禁だよー」
「じゃあ先生しょうや」
「ぼくヘテロだし妻帯者なんで」
左手の薬指に嵌った指輪を見せて躱すと、瀬能は腕時計を見て上を指した。
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