OMEGA-TUKATARU

Kokonuca.

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黒鳥の湖

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「遊んでいる場合か?もうすぐ挨拶だろう」
「威兄ぃ!やっと会えた!」

 耳を放されると、ぱぁっと顔を輝かせて時宝の方へと向き直り、幼さを感じさせる動きでぱっと弾けるように飛びついて行く。

「やっとって……同じ会場だろ」
「だって、なんでこんなオオゴトになってるんだよっ!親族に紹介するだけって言ってたのに!」
「ついでにお前の人脈作りもできたら一石二鳥じゃないか。顔が広い方がいろいろ便利だろう?」
「う  そうだけど……七光り的なのは……」
「養わないとならん家族ができるのに何甘ったれてるんだ」

 ピシャリ と言い放つと、尊臣は萎れるように肩をすくめて項垂れてしまった。

「まどかさん、疲れる前に休むようにするといい。一人の体じゃないんだから大事にしなさい」

 萎れてしまった尊臣を置いてまどかにそう言うと、今度はオレの方へとちらりと視線を向ける。

 沢山のαに囲まれて不安に思っていただけに番である時宝に見つめられてほっとしたけれど、その腕に掴まっている蛤貝にじろりと睨まれてぐっと肩をすくめた。

 奏朝の背中にしがみついて出てこないオレに向けて、不愉快そうに眉間に皺を寄せた後に「楽しめているのか?」とぶっきらぼうに訊ねてくる。

「はい。お陰様で、よい思い出ができました」

 ねめつける視線にいたたまれなくなって奏朝のスーツを掴む手に力を込めてそう言うと、は と鼻で笑われてしまい訳が分からず思わず奏朝に助けを求めて視線を送る。

「あー……お腹空かない?何か摘まみに行く?」
「は  「お前だけで行ってこい」

 オレの返事は割り込んできた時宝にかき消されて、せっかく助け舟を出してくれた奏朝がパクパクと口を震わせている。

「まどかさんも食べておいでよ!最近お腹空くって言ってたでしょ?」
「それじゃあ、お言葉に甘えようかな」
「威臣様もいかがですか?」

 腕を組んでいた蛤貝がねだるように言うと、時宝は何の躊躇もなく首を振って蛤貝を奏朝の方へと押し出す。

「蛤貝も連れて行ってやってくれ」
「や でも、  」

 険を含んだ目に睨まれて、奏朝はその迫力に飲まれるように肩を落とすと蛤貝を促す。けれどそれが不満だったのか、蛤貝は少し拗ねたふうを装って時宝を見上げると、「一緒に行きましょう」と繰り返した。
 一瞬、奏朝が息を飲んだのは、時宝が煩わされて怒り出すんじゃないかって心配したせいかもしれない。

「  ……俺はこの後のことを尊臣と話さなくてはいなけない、悪いが奏朝と行ってきてくれ」
「でもっ じゃあ、那智黒も連れて行きます、一緒に行くよね?」

 ちらりとこちらを見る蛤貝の目は……

 まるで敵でも見るようなその目は、オレと時宝を傍にいさせたくないと言う感情がはっきりと読み取れるものだった。

「…………じゃあ、私も何かいただきに行きます」

 時宝の番はオレなのに と叫び出したい気持ちをぐっと堪えて、奏朝の方へと進もうとすると時宝の手が伸びて来て遮る。



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