OMEGA-TUKATARU

Kokonuca.

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黒鳥の湖

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「だってお前ら、犬みたいにはぁはぁ言いながら圧し掛かって、アナに突っ込むことだけ考えてナニをいきり勃たせたアルファなんか見たことないだろ?目の色変えて涎垂らしながら、先走りでビシャビシャにした犬チンポをズポズポさせるためにへこへこ腰を振る、ホントに間抜けで哀れなのをさ」

 はは と乾いた笑いが漏れる。

「どんなにエラそうにしててもヒートにあてられた途端、俺達に縋りついてオネガイするしかできないアルファのくせに」

 目の前のオレに言っているはずなのにその言葉はやけに遠くの人間に言っているように聞こえて、言葉に詰まってぐっと奥歯を噛み締めた。

「お前もいっぺん、アルファチンポに犯されりゃわかるよ」

 ぽんと肩を叩かれ、反射的にそれを払って薄墨を睨みつける。

「…………自分はオキレイなつもりか?」
「自分は……そんなつもりはない」

 いつか薄墨が言っていたように、ここに居る以上オレもいつかは誰か客に買われてその子供を産むんだろう。

 時宝ではない、誰かの……

「……ここにいるのだから、そんなことを言うつもりはない」
「へぇー、夢見たりはしないわけ?」

 望んだ誰かと添い遂げることができるなんて、ここで生まれ育った以上は思ってはいけないことだ。

 夢だとしても……

「思わないのか?」

 薄い唇が吊り上がる。


「────好きな相手と番たいって」


 耳に注ぎこまれる言葉は、ここで生きている者ならば暗黙の了解のように考えないようにしている事柄で、こうやって生きている以上考えても仕方がない事柄でもある。

 時宝の頭を撫でる手が、
 こちらを見下ろして満足そうにしている目が、

「…………」
「どうせなら好きな相手とヤリたいだろう?」

 唆すその言葉は毒だ。

 オレの心に差した魔は言葉を押し止めて……

 その一瞬は薄墨に心の中を悟らせる位は十分だったようで、深くなる笑みに羞恥心を感じて俯いた。

「   退いてくれ、蛤貝に用事があるんだ」

 薄い体を押し退けるようにして中に入ると、消毒したばかりの臭いのする部屋の中で蛤貝が立ち尽くし、オレを認めて大袈裟に飛び上がった。

「蛤貝⁉︎薄墨に何か言われたのか?」

 強張った青い顔に思わず駆け寄ると、こちらを見ずに蛤貝は緩く首を振る。

 その態度は相方のオレじゃなくても何かあったのは一目瞭然で……

 慌てて後ろの扉を振り返るも、薄墨はとっくに姿を消した後だった。



 
 津布楽先生に診察を受ける蛤貝を見守り、白く細い背中を眺める。

 自身もだけれど、黒手達も気を付けて育ててきたお陰で傷一つないその肌は、薄く透明感があり美しい。
 今にも妖精の羽でも生えるんじゃないかって思わせる肌に視線を滑らせると、俯く項に目が行った。今はそこに噛み傷はないけれど、時宝はいつか蛤貝の項を噛みたいと言い出すのかもしれないと思うと、そわりと落ち着かない気分になってくる。



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