658 / 801
黒鳥の湖
28
しおりを挟む「だってお前ら、犬みたいにはぁはぁ言いながら圧し掛かって、アナに突っ込むことだけ考えてナニをいきり勃たせたアルファなんか見たことないだろ?目の色変えて涎垂らしながら、先走りでビシャビシャにした犬チンポをズポズポさせるためにへこへこ腰を振る、ホントに間抜けで哀れなのをさ」
はは と乾いた笑いが漏れる。
「どんなにエラそうにしててもヒートにあてられた途端、俺達に縋りついてオネガイするしかできないアルファのくせに」
目の前のオレに言っているはずなのにその言葉はやけに遠くの人間に言っているように聞こえて、言葉に詰まってぐっと奥歯を噛み締めた。
「お前もいっぺん、アルファチンポに犯されりゃわかるよ」
ぽんと肩を叩かれ、反射的にそれを払って薄墨を睨みつける。
「…………自分はオキレイなつもりか?」
「自分は……そんなつもりはない」
いつか薄墨が言っていたように、ここに居る以上オレもいつかは誰か客に買われてその子供を産むんだろう。
時宝ではない、誰かの……
「……ここにいるのだから、そんなことを言うつもりはない」
「へぇー、夢見たりはしないわけ?」
望んだ誰かと添い遂げることができるなんて、ここで生まれ育った以上は思ってはいけないことだ。
夢だとしても……
「思わないのか?」
薄い唇が吊り上がる。
「────好きな相手と番たいって」
耳に注ぎこまれる言葉は、ここで生きている者ならば暗黙の了解のように考えないようにしている事柄で、こうやって生きている以上考えても仕方がない事柄でもある。
時宝の頭を撫でる手が、
こちらを見下ろして満足そうにしている目が、
「…………」
「どうせなら好きな相手とヤリたいだろう?」
唆すその言葉は毒だ。
オレの心に差した魔は言葉を押し止めて……
その一瞬は薄墨に心の中を悟らせる位は十分だったようで、深くなる笑みに羞恥心を感じて俯いた。
「 退いてくれ、蛤貝に用事があるんだ」
薄い体を押し退けるようにして中に入ると、消毒したばかりの臭いのする部屋の中で蛤貝が立ち尽くし、オレを認めて大袈裟に飛び上がった。
「蛤貝⁉︎薄墨に何か言われたのか?」
強張った青い顔に思わず駆け寄ると、こちらを見ずに蛤貝は緩く首を振る。
その態度は相方のオレじゃなくても何かあったのは一目瞭然で……
慌てて後ろの扉を振り返るも、薄墨はとっくに姿を消した後だった。
津布楽先生に診察を受ける蛤貝を見守り、白く細い背中を眺める。
自身もだけれど、黒手達も気を付けて育ててきたお陰で傷一つないその肌は、薄く透明感があり美しい。
今にも妖精の羽でも生えるんじゃないかって思わせる肌に視線を滑らせると、俯く項に目が行った。今はそこに噛み傷はないけれど、時宝はいつか蛤貝の項を噛みたいと言い出すのかもしれないと思うと、そわりと落ち着かない気分になってくる。
0
お気に入りに追加
83
あなたにおすすめの小説
目が覚めたら囲まれてました
るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。
燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。
そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。
チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。
不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で!
独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる