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お可愛いΩ お可哀想なα
落ち穂拾い的な 届いた手紙
しおりを挟むついさっき雪がちらりとした空に目を遣ってから、かじかんだ指先にはぁっと息を吹きかけて、ポストを開けて中を覗く。
新聞と、幾つかのチラシとDMと……それから…………
「 手紙」
寒さだけじゃない震えで手紙が揺れる。
DMとかではない、明らかに個人が個人に向けて書いた手紙に、どっと心臓が大きくなって送り主を確認した瞬間、つんと鼻が痛んで視界がじわりとぼやけた。
薫らしい丁寧な文字で『阿川六華様』と書かれているのを見て、その場にへたり込んでしまった。
「あ 」
よかった とか、嬉しい とか、もしも返事が来たらどうしようかなって思っていたのに、いざとなったらどう言う言葉を出したらいいのかわからなくて、ほとほと と涙が頬を転がり落ちる。
マンションのエントランスの床は冷え切っていて、冷たくて、すぐに立ち上がって温かい部屋でその手紙を読みたかったのに、上手く立ち上がれる気がしない。
「 りっか!?どうしたの!?」
髪についた雪を振り払いながらマンションに入って来た銀花が、へたり込むオレを見て慌てて駆け寄ってくる。
「なんだよ?」
「どしたー?」
銀花の後ろから安定の二人組も登場して、オレを見て慌てた表情で何事かと尋ねてきた。
「かお、薫から、手紙きた」
三人にずいっと突き出すようにして見せると、一瞬目を丸くした後にぱあっと目を輝かせて「よかったな!」って次々に祝ってくれる。
手紙一つでへたり込んでいたオレを、笑うかなってちょっと思ってたから恥ずかしくなって、赤い顔のまま頷く。
「ありがと」
立ち上がろうとしないオレを、結局三人が担ぎ上げて部屋まで運んでくれて……
オレの部屋でどきどきしながら鋏を構える。
できるだけ綺麗に開けたくて、端の方を薄ーく切ってそろそろと中身を取り出すと、丁寧な字で『六華へ』と書かれたのが見えた。
ちょっと、読むのは、怖い。
もう手紙を寄越さないで とか書いてたら?
喜蝶との間を、邪魔しないで とか書いてたら?
噂されていた言葉を思い出して、ちょっと「う 」ってなりかけたけど意を決して視線を便箋の上へと戻した。
ノック音に返事をしなきゃ と思うんだけど、言葉が出なくて黙ってたら勝手に扉が開いた。
「りっか?」
「りーっか!」
「おい、六華!」
ひょこひょこ と開いたドアから覗いてるんだろうなって三人の方に振り返らずに、「なに」ってぶっきら棒に返事をすると、ちょっと戸惑った雰囲気がして……
おどおどとした声が上がる。
「ホットミルク作ったよ」
「べちゃってなってないぞ」
「カリカリにもなってないぞ」
ほっといてよって言うのは簡単だけど、でもそれを押し退けてコクンと頷いてのそのそとドアの方に向かうと、オレを心配する三人が眉を八の字にして困ったようにおろおろしている。
「りっか?」
こてん と首を傾げて問いかけるような銀花の呼びかけに耐えられなくなって……
オレを心配してくれるその瞳に、堪えていたものが突き崩された。
「ぅ ぇ えぇ……」
堪えようとしたのに勝手に口がひん曲がって、ちっさい子供かなってくらい情けない泣き声が漏れ出す。
そんなオレを三人がぎゅっと抱き締めて来る。
オレよりも大きな三人にそうされると押し潰されるようなそんな感覚もするけれど、今はそのぎゅうぎゅうと押し潰されるようなその感覚が逆に嬉しくて……
三人はどうしたんだって問いかけたりはしてこなかったけど、オレが泣き止むまでずっとそうやって抱き締めてくれていた。
END.
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