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お可愛いΩ お可哀想なα
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しおりを挟む見る方向によっては何となくハート型にも見えなくもないそれは、端の方が少し欠けて透明と白のストライプが見える。
つかたる市の浜辺で瑪瑙が拾えるって聞いたことがあるから、きっとこれはそうなんだろう。
オレを救ってくれた小石って思うとちょっと愛着が湧いてしまって、それに手の中にしっくりくるサイズと形のせいかなかなか手放せずに、くるくるくると手の中で転がすのが止められない。
────コンコン
控えめなノックは、病室がうるさかったら聞き逃していたかもしれない。
開けられたままになっていた病室の扉から、ひょこ と黒い髪が見えている。
「どうぞ」
そう言うと、少し迷った風を見せてからおずおずとシュンが顔を覗かせて……
「六華くん、今……いいかな?」
その胸元には小さな花束が握られていて、お見舞いなんだなってわかる。
「シュン!来てくれたんだ!ありがとう!」
そんな心配するような入院じゃなかったのに、わざわざ来てくれるなんてなんて優しいんだろう!
入り口でもじもじしているシュンを手招いて、ベッド傍の椅子を勧めると物凄く遠慮がちにちょこちょこと寄ってきて、少し悩んだような間を置いてから腰かけた。
「よかった、怪我したって聞いてたから……」
「怪我って言っても、かすり傷で入院なんて大袈裟なんだよ!」
ははは と笑って見せるけれど、シュンの顔は浮かない。
いつものようににっこり笑ってくれたらな って思うけど、それはずいぶんとデリカシーのないことなんだと思い至って頭を掻いた。
オレにとってはそれで済んでも、シュンにとってはそうじゃないってのはわかる。
「あー……海の学校は?」
「ん 僕も、途中で帰って来たから……でも、千鶴達から帰ったよって連絡があったから」
「そ か 」
シュンは椅子に座ったまま手の中の花束に視線を落として……
「 ────あの、六華くん、 」
シュンの言葉はすらすらとは出ず、途切れがちで聞き取りづらい。
でも、オレは言葉を挟むことなくじっとそれに耳を傾けた。
「 意地悪……して っしたし、酷いこと言ったし、こんなことに巻き込んじゃって……」
ぎゅっと握り締めているせいか手の中の花束が小さく震えて、シュンの心細さを表しているようだ。
「なのに、僕を 助けてくれて、庇ってくれて 」
ぽとぽと とピンクの花びらの上に雫が落ちて、小さな花がきらきらと光る。
「救ってくれて……ありがとう」
しゃくり上げる姿は頼りなくて可愛らしくて……
「 それから、ごめんね」
そう言って突き出された花束を受け取らないなんて、そんな選択はない。
震える手を覆うようにして花束を受け取ると、シュンがほっとしたのがオレにまで伝わってくる。
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