609 / 801
お可愛いΩ お可哀想なα
57
しおりを挟む「オレの靴履いて!それからこれを持って寮まで走って!先生が探しに来てくれてるから!」
「だって!六華くんは⁉︎」
「シュンを抱えてじゃ、追いつかれちゃうから、ほら行って!助けを呼んできて!」
ぐっと背中を押し出す。
悪態を吐く声はもうそこまで迫っていて……
「オレが三人を引き付けるから!」
なんて……これ、フラグだよと思わなかったわけじゃないんだけど、精一杯にっこり笑って「走ってっ!」ってもう一度叫んだ。
一瞬躊躇したように見えたけど、シュンは弾かれたように走り出して……
それと三人が追いついたのはほぼ同時だった。
オレが護身術の師匠から教わったのは、自分と同じように体が小さくて軽い人間は押さえ込まれないようにしろってこと、それから……力を入れなくても昏倒させることのできる箇所を狙うってこと。
「 がっ‼︎」
「よしっ」
くるん と一回転して地面に着地すると同時にどさりと重い音がする。
うまく顎を蹴り上げることのできたαはぐらりと体を傾げて倒れてくれて……ほっとしながら二人にも気を配る。仲間が倒れたのを見て引き上げてくれないかな?なんて淡い期待を抱いたけれど、αの特性なのか個人の性格なのか、二人は怯むどころかむしろ躍起になったようだった。
「ふっざけんな!オメガはオメガらしく大人しくしろよっ!」
「アルファ様が抱いてやろうって言ってんだろ!」
やけに響く舌打ちの音と、二人同時にこちらに向かって突っ込んでられてさっと飛び退く。
「『サラの子供』は大人しく股開いてろよっ‼︎」
「!」
こちらに伸ばされた手を蹴り飛ばし、その不愉快さにきゅっと眉間に皺が寄った。
「そんな古臭い差別用語使うなんて、もしかしておじーちゃんなのかな⁉︎」
「はぁ⁉︎うるせぇ」
『サラの子供』は、かつて大事件を引き起こした原因となったΩが元になった蔑称だ。
オレ達の世代では使う人もほとんどいないし、蔑称だって言われて育ってきたからそれを口にするのを嫌がる人も多くて、授業くらいでしか聞くことはないけど……
聞いた相手が鼻白む程度には育ちの悪さを感じさせる言葉だった。
「ヤられるしか能がないくせに!アルファに媚びて、タネを貰ってありがとうございますだろ!」
「何勝手なことばっか言ってるんだ!アルファがそんなだから!オメガがのびのび生きて行けないんだろ!アルファなら、オメガを守ってやれよ!」
幸い、二人の目的はオレを押さえつけることだからか攻撃的なことはされていないけれど、多分……この片方の人は武術とかなんかそう言ったことをやっているような感じがする身のこなしだ。
0
お気に入りに追加
83
あなたにおすすめの小説
目が覚めたら囲まれてました
るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。
燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。
そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。
チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。
不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で!
独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。
【完結】別れ……ますよね?
325号室の住人
BL
☆全3話、完結済
僕の恋人は、テレビドラマに数多く出演する俳優を生業としている。
ある朝、テレビから流れてきたニュースに、僕は恋人との別れを決意した。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる