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お可愛いΩ お可哀想なα
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しおりを挟む見ているオレの方が襲いかかられたんじゃないかってくらい、さっと血の気の引く感覚がした。
「お オレ、追いかけてくる!」
「おいっ!」
「あんなこと言われて怒ってないわけじゃないし、仁がオレのことを大切に思ってくれてるのはわかるけど、でも危ないってわかってるのに放り出すのは違うと思う!」
虎徹先生が、Ωを狙って質の悪いαが出てくるって言ってたから、万が一があったら大変だ。
「りっかのお人よし!」
んんんっ⁉︎ここでその話がぶり返すのかって思ったけど、そうやって言われても後悔しない方がいい。
だって、要らない意地を張ったために、何もわからないまま友人二人と連絡が取れなくなっちゃったんだから……
あの時、オレが一緒に行っていたら?
あの時、オレがもうちょっと気にしてあげていたら?
薫と喜蝶は今ここに居て、皆でトランプしてたり怪談話して盛り上がったりしてたかもしれない。
最後に見たのが不安そうな表情だったって言うのを思い出す度に、二人が来なくなったのは自分のせいじゃないのかなって思ってしまうから。
誰かに何かがあった時、オレが助けられるなら って。
「虎徹先生が見回りに出てるから、他の先生に頼んで連絡取ってもらって!」
それだけ言い置いてシュンの後を追いかける。
海の傍なせいか、一瞬温い風が来た後に湿気を含んだひやりとした風が来る。交互に体を舐られるようなその感触は、気味の悪いものに体を触られているような、そんな気分になってしまう。
オレが飛び出した時にはもうシュンの姿はなくて、寮の前から真っ直ぐに続く道はグリーンベルトの公園の方へと続いている。
左右に折れて寮の周りを回った可能性もあるけど……玄関から見たシュンの背中は真っ直ぐ進んでいたように思う。
足元にぽっかり別世界のように灯る懐中電灯の明かりを見て、それから鬱蒼と茂った黒い林に向かって駆けだした。
足元のレンガ作りの歩道は、昔は平だったんだろうけど今は生い茂った木の根に押されたせいか、ボコボコと角が出て気をつけないとつまずいてしまいそうだった。
中に入ると木が阻んだせいか良く聞こえていた海の音が遠のいて、静まり返った闇の底のようで、縋るように懐中電灯を握り締めて辺りを見回す。
「 っ、シュン?ここ、は 危ないから、帰ろ?」
気分的には大きな声で呼びかけたつもりだったけれど、実際に出たのはつっかえつっかえの呟くような声だけで、夜の静寂に消えてしまってオレの耳以外は誰の元にも届いてないだろう。
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